第3話、『目覚めて最初に見たのは、夕陽色の髪をした少女と、恐竜に似た怪物だった』
『設定プログラム変更……治療プロセス開始』
(なんだ?……)
『経過良好……回復を確認』
(な…ん…だ?……)
『更新無し……緊急プログラム容認……人命保護を最優先』
(……ん……だ?……)
『プラント1…破壊……プラント2…破壊……プラント3…破壊……プラント1〜50の壊滅を確認……残存するプラント数……残り1……プラント51にエネルギー供給を接続……最優先保護を開始』
(…………だ?……)
『施設内に生命反応を確認……エネルギー供給装置に損傷を検知……緊急時につき、覚醒プログラム容認……開始……完了まで──』
(……なんだ?……)
『解凍蘇生完了……全細胞の活性化治療を開始……完了まで──』
「……な…んだ?」
『最終確認完了……異常無し……これよりポッドを解放します……おはようございます』
目の前に隙間が生まれ、暗かった視界に光が入る。
身体を包んでいた熱が外に逃げる中、ゆっくりと起き上がり、フラつきながら足を踏み出す。
そして見たのは、
「……ここは?」
「─!?」
「へ?」
ボロボロになった部屋に、ボロボロの服を着た少女。
その少女は目を大きく開かせて、自分を指差していた。
「誰?」
「─!──!?」
「ん…何語?」
「──?──。────!!」
今までに聞いたことがない言語を少女は喋っていた。
よく分からない。だが、凄く慌てているのだけは分かった。
「とりあえず……どうすれば?」
「──!──!」
少女は自分の背後を指差して、大きく怒鳴りを上げている。
そういえば、さっきから後ろから変な音が鳴り続けているな。
「後ろ?……一体何が……」
ドォンドォン!ドォン』
『GAR!GAR!GARRッ!!』
「なっっ!きょ、きょきょ恐竜ぅうう!?」
「──!──!」
「言いたいことは何となく分かりました!本当にありがとうございます!でもどうするのこの状況ぉお!?」
「──!!」
少女は自分が入っていたと思われるポッドを抱えて、引き抜こうとしている。
そして『お前も引っ張れ』と、瞳で伝えていた。
「いやいや絶体に無理!こんな大きな物が持ち上がるわけない!」
ミシミシ!パキパキ!
「床板にヒビ!?え、なにこの娘!どんな怪力してるの!?」
少女の踏ん張り。
その力の大きさが床板を砕き、その下のコンクリートを徐々に覗かせる。
だがそれよりも、
「でも抜けないだろ!だった別の手段を!」
「─!─!─!」
「意味が伝わってない!?だったら俺が!」
部屋全体を見回して、この状況を打開できる手段を探す。
そして見つけたのは、通気口らしき穴開き壁板だった。
「ここか!」
バンバンと叩くが、壁板はビクともしない。
自分の力では絶体に壊れないと知ったとき、ふと背後で踏ん張っている少女に視線が向いた。
「っ!ちょ、ちょっと!お願いがあるんだけど!」
「─!─!─!」
「ちょっと聞いて!いくら踏ん張っても抜けないから!」
「──!?─!」
「これ!これをドォンと殴って壊してほしいの!そうすれば何とかなるから!」
壁パンチのジェスチャーを見せつけ、少女は踏ん張るのをやめて近づいてきた。
「そう!ここ!ここに1発大きいのを!」
「──?…………─ッッ!!?」
ドォンと、少女の拳が壁にめり込んだ。
そして少女は、この先に空洞があるのが分かったのか、拳を連続で叩き込む。
「す、スゴォぉいけど、怖すぎてヤバイ……」
「ッ!ッ!ッ!」
「でもよし!これで逃げられる!」
豪快に殴りつけて、ようやく人間が通れるくらいの穴が空いた。
それと同時に背後で、
ドォォォン!!と、
『GARRRRRRRRッッ!!』と、
壁を粉砕して入ってきた巨大な怪物。
その血走った眼が映すのは、顔を青くした自分達だった。
「にっ、逃げろぉおお!!」
「──、──────!!」
何も見えない闇のトンネルに、少年と少女は慌てて飛び込んだ。