第18話、『元軍用基地と最強兵士との対面』
「しぬぅううう〜」
「お疲れ様だねシーレ。さすが私が知る限りで一番の瞬足の持ち主だよ」
シーレに荷車を引かせて昼夜問わず走らせ、フェンスに囲われた軍用基地らしき場所に辿り着いた。
「なんと言うか、物々しい方々がいっぱいいますね」
「ああ。ここはモンスターを駆逐することを行動指針にする者たちの集まりなんだ。つまり戦いのスペシャリスト集団ということだね」
デリバの説明を聞きながら門の前までやってくる。
そこには二人の門番がいた。
「商人のデリバだ。いつも通りの依頼で訪れた。入場の許可をいただきたい」
「もう素通りでいいですよ」
「デリバさんはもう顔パスで通して良いと言われてるんで」
軽い口調で門番が扉を開ける。
「見た目と違って、なんか緩いギャルですね」
「ギャルの意味がわからないが、まぁ顔見知りだからね。何度も依頼で来てるから、特別扱いしてくれてるんだろうさ」
デリバに連れられ、巨大な倉庫を眼前する。
「やぁシュリラ。相変わらず元気そうだね」
「ん?デリバか。今日も護衛の依頼か?」
そこにはシーレやチューリよりも頭ひとつ分高い背丈をした女性が、タンクトップ姿でダンベルを持ち上げていた。
「その通りだ」
「なら適当に見繕おう。遠出か?」
「遠出だが、適当じゃあダメなんだ。私は君を連れて行きたい」
瞬間。周囲にいた者たちから殺気が放たれた。
「私はここの長だ。そして一番強いという自覚と証拠もある。そんな私を連れて行きたいということは、それなりの理由があるんだな?」
「その通りだ。そして君の部下たちに今にも殺されそうだからはっきり言うよ。あの『マザーズヘル』を攻略するために君を使わせて欲しい」
それを聞いてシュリラが見開く。
「死ぬ気か?心中に付き合うつもりは無いぞ?」
「死ぬつもりは無いさ。生き残るために君を雇いにきた。そして勝算もある」
「その勝算とはなんだ?」
「古代人を手に入れた」
「っ!?」
シュリラが瞳がキュージンに向く。
当然、今までの会話をキュージンは理解していない。
シュリラを眉頭を抑えて、少し考え込んでからデリバに向き直る。
「移動は?ここから『マザーズヘル』まで砂漠や森、海を越えなければならないぞ?」
「い、行く気ですか隊長!?」
「興味があるだけだ。まだ了承はしていない」
部下の声に応え、シュリラはデリバに問う。
「辿り着くだけでも数ヶ月はかかる。それまでにモンスターと会敵し、装備を消費しきるぞ?」
「それなら当てがあるんだ。簡単に移動できる方法をね。君はこの場所についてどこまで知っている?」
「古代人が作った戦士の施設と聞いた。それだけだ」
「あの大きくて長い道は何のために用意されたか知っているかい?」
「知らんな」
「飛行機のためさ」
「飛行機?」
シュリラが疑問を挙げる。
それはシーレとチューリも同じで、彼女たちの知らない言葉だった。
「古代人の作った移動する乗り物だ。それは空を飛び、遥か遠い場所まで短時間で行ける代物だと古文書に記されていた。信じられないと思うけどね」
「…………案内しよう。大体把握した」
「さすがは長。理解が早くて助かるよ」
シュリラを先頭に倉庫の隅にある地下階段までやってくる。
「『開かず門』にあるんだな?」
「ああ。だが気をつけた方がいいね。ここは古代人の戦士たちがいた場所だ。ならその戦士たちが使う武器があるかもしれない。そして武器は重要なものだ。奪われないために恐らく」
「『マザーズヘル』と同じで警備ロボがいると言うのだろう?それぐらいは予想がつく」
シュリラの服装が変化する。
銀色の鎧に白銀の剣。
「あの鉄玉が厄介だ。目に当たるとしばらく何も見えん」
「ちなみにアレは『マシンガン』と言うらしいよ。ちなみに君だけだからね。アレに当たって軽傷で済んでいるのは」
階段を下って、見覚えるある扉にやってきた。
そしてデリバの指示でキュージンが扉を開ける。
その瞬間。
「ご苦労。それと下がれ」
「っ!?」
シュリラに投げ飛ばされるキュージン。
それをシーレがキャッチすると同時に斬撃が響き渡った。
「なるほど。見えない敵か」
「ああ。だが切れば姿を現すらしい」
シュリラの足元に転がった鉄の残骸。
それにはブレードがあり、姿を見せずに近づいたことから完全に敵だった。
「デリバ。お前を含めて、このメンバーで戦えないヤツは誰だ?」
「全員だ。君の基準で答えるならの話だが」
「そうか。なら全員、私から50メートル以上離れるな。その範囲なら私の剣で守り切れる」
「やはり頼もしいね。だから君を連れて行きたい」




