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第17話、『意思決定』

街中がお祭りになっていた。

これまで開かれなかった『開かずの扉』が開いたことを知り、住民が教会に殺到した。


当然シスターたちはチューリ以外動けず、素通りで住民達が地下に向かっていく。


その光景を外で見つつ、四人はレストランで食事をとっていた。


「本当に公開させて良かったのでしょうか」


「公開するべきだよ。開かずの扉の中にモンスターはいない。だったら好き勝手に発掘や調査をさせて、街の外に出す機会を減らした方がいいだろう。今の教会の運営状況的にもね」


「…そうですね。確かに怪我をされるよりは、今の方がいいかもしれませんね」


と、デリバとチューリが言葉を交わしている最中。

キュージンが頭を抱えて言葉を漏らす。


「どうして女の子しかいないの?いや、大人もいないし、どういうことなんだ。これは夢なのか?」


「夢じゃないよ。そろそろ受け入れてくれ。今食べているものの味も感じているだろう?どうだい味の方は」


「……美味しいです」


「なら良かった」


そしてデリバが地図を出してキュージンに問う。


「キュージン君。君には選択肢がある。それを決めるためには今の状況を詳しく説明する必要があるんだ。かなりショックを受けると思うが希望もある。最後まで聞いてくれるね?」


「…………はい。お願いします」


葛藤の末、キュージンは知ることを選んだ。

語られたのは今の世界のことだった。自分と同じ人間は絶滅し、世界はモンスターに溢れている。

そしてタイムマシンという希望があることを最後にデリバは聞いた。


「もし君が望むなら、私とシーレは君をサポートしよう。乗り掛かった船でもあるが、こちらへのリターンも大きいんだ」


「遺跡には色々価値があるものがいっぱいあるからね!そして『マザーズヘル』なら絶対に良いものが眠ってる!だから危険と隣り合わせだけど、キュージンが望むなら私たちは全然一緒に行ってもOKなんだよ」


お互いに利益がある。

それを聞いてキュージンは彼女たちに同情心もあるだろうと分かっていながら、自分の願望を吐いた。


「お願いします。過去に戻るのを手伝ってください」


「よし。決まりだ」


「よーし!じゃあこれから行こう!」


三人が立ち上がる中、一人残ったシスターが声を荒げる。


「ちょっと待ちなさい!まだ私は何も言ってないですわよ!」


「いやいや、今チューリはこの街で稼働できる唯一の教会シスターだろう?さすがに連れていくわけには」


「いいえ!そんな事よりもキュージンさんを『マザーズヘル』に連れて行くことに反対です!治療費もいただいていません!私はキュージンさんを引き止められる権利があります!」


「キュージン君は『マザーズヘル』に行くことを自分で決めた。それに反対する権利は君には無い。それと治療費については、あとでシーレがローン返済するから問題ないはずだ。君はローン払いはできないと明言していなかったからね」


「へぇあ?」


シーレの顔が青くなる。

だがすぐに。


「『マザーズヘル』ならお宝いっぱいだよ」


「ローン一括返済するから安心してチューリちゃん!」


シーレがグッと親指を立てると、チューリがその指をボキッとやった。


「私の親指が〜!?」


「『マザーズヘル』は世界で一番危険な場所です。死んでしまったらアナタの負債は誰が補ってくれるんですか?」


「確かにね。それを言われてしまったら君に頭が上がらなくなる。だからもう心からのお願いになってしまうね」


両者の言葉を聞いて、その中心にいるのは自分だと自覚し、キュージンは頭を下げた。


「ごめんなさいチューリさん!でもお願いします!どうしても『マザーズヘル』に行きたいんです!」


「ちょっ!?それは卑怯ですよ!!」


「卑怯じゃないよ。君は心優しいシスターだ。迷える子羊が帰り道に繋がる可能性を見つけたんだよ。なら君は教会のシスターとしてどうあるべきか。君なら知っているだろう?」


「くぅっ!?」


悔しそうに顔を歪ませるチューリ。

自身の立場を逆手にされ、チューリは震わせていた拳をゆっくり解いた。


「……わかりました。認めましょう。ですが私は迷える子羊のために動くシスターです。私が同行しても構いませんね?教会については私を含めた全シスターをお休みさせたことにします」


「うん。計算どおりだよ」


「その計算どおり。やめてくれませんか?今の私には挑発に聞こえます」


「これはすまない。じゃあ行くことは決まったわけだし、あとは準備だけだ」


地図のある場所にフォークを向ける。


「さっそく移動手段と戦力を手に入れよう。ここに両方あるから、シーレ君の足に頑張ってもらおうかな」

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