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第16話、『遺跡調査と現状把握』

今までの経緯をキュージンは説明した。

そして三人は少し距離を置いてコソコソと会議を開く。


「どうしよっ。もう古代人は絶滅したよって言っちゃう?いや言えないよっ!」


「彼は天涯孤独の身になったということだね。じゃあ私の商人ライフのお供にでも」


「させませんよ。確かに彼の過去には同情します。ですがデリバさんと一緒に行かせるのは違います。キュージンさんは教会で面倒を見ます」


「なんで二人共キュージンのことを考えないの!?私だけじゃんまともなの!!」


お互いの思惑がぶつかり合い、今後についての話が難航する。


そしてふと、デリバだけが複雑そうな表情を見せつつ、言いにくそうに口を開いた。


「……かなり勿体ないけど。キュージン君を救うチャンスはあるかもしれない」


「あるんですか!?」


「あるの!?」


「ただ言いたくない。これはキュージン君を手放すことと同じだ。だから勿体無いという気持ちが私を迷わせてしまっている…」


「そんなのいいから!キュージンのことを考えようよ!だって可哀想だよ!いきなり知らない世界に連れて来られたんだよ!」


両肩を強く掴んでシーレは言う。

その必死な声にデリバは観念した。


「過去に戻れる装置。古代人いわく、『タイムマシン』というものが、とある場所の『開かずの門』にあるという情報があるんだ」


「過去に戻れる!?そんな事が本当に可能なのですか!?」


「古代人の兵器だぞ?本当に可能なのかはわからない。だがそういう装置があると、古代人が残した古文書にあったんだ」


「じゃあ今はそこに行ってみようよ!とにかく現物を見つけて、色々確かめればいいじゃん!ちょっとでも可能性はあるってキュージンを安心させようよ!」


「あ、ああー、シーレ。実はタイムマシンがある場所なんだが、とても危険なところなんだ」


デリバがリュックから地図を出す。

そして自分たちが今いる街の場所から、遥か南側まで指でなぞった。


「まさかここは…」


「極寒の地にある大遺跡『マザーズヘル』。古代人が残した世界最大の遺跡だ。知っていると思うが、そこには凶悪なモンスターが常に遺跡へ攻撃を仕掛け続けている」


三人の顔が青くなる。


「……それと、遺跡の警備ゴーレムですね」


「ああ。ヤツらは遺跡に侵入しようとするモンスターと常に戦っている。そして私たちも侵入者と同じ扱いになる。つまりモンスターと警備ゴーレムの二つを相手にしながら、そのタイムマシンを回収しないといけない」


地図をしまってデリバが言い切る。


「絶対無理だね。はい。キュージン君は私が世話を──」


「行こうよ!」


「シーレのそういう怖いもの知らずに突っ込んでいくところ、私はたまに怖くなるよ」


シーレに頭を抱えるデリバ。


「でもチャンスはあるでしょ!だってこっちには古代人のキュージンがいるんだよ!門を開けられるなら、他にできることがあるんじゃないの!」


「……鋭いね。ああ。古代人のキュージン君がいれば、僅かながら可能性はあるよ」


そしてデリバは二人に小さな希望を教えた。


「キュージン君を遺跡の中枢まで連れていき、彼を支配者として認識させるんだ。恐らくできる。いや、これから試さないといけないか」


デリバがキュージンを呼ぶ。


「ちょっと一緒に来てもらっていいかい?この遺跡のもっと奥に向かいたいんだ」


「あ、ああ、大丈夫」


「そんな緊張しなくてもいいよ。私たちは君の味方だ」


そしてデリバが案内図を頼りに遺跡の奥に向かっていく。

深く。深く。進むに連れて恐怖心が強くなる。


やがて辿り着いたのは、一段と頑丈に見える大扉だった。


「ではキュージン君。また『開け』をやってくれるかい?」


「いや、これはできない扉ですよ」


扉隣の壁を見てキュージンが言う。

そこにはいくつかボタンがあった。


「これは扉を開けるための操作盤だと思います。たぶんパスワードと、カメラ?もあるから、たぶん開ける人が限られてくるんだと思います」


「ああー。ソレがそうなのか。ならきっと大丈夫だよ」


「え?」


「とにかくキュージン君の好きなように操作してみてくれ」


デリバに言われ、キュージンが恐る恐る操作盤に触れた。

すると。


『人間の生命反応を感知しました』


「「「「っ!?」」」」


操作盤から声が響いた。

そして声は続く。


『最終アクセスより100年以上の経過を確認。緊急プロセスに乗っ取り、新規登録者を設定致します。これからの案内に従い、パスワードの登録および、網膜スキャン、声紋スキャン、静脈スキャンをお願い致します』


その言葉にキュージンがデリバに振り向く。


「古文書どおり過ぎて怖いね。じゃあキュージン君。色々とやってくれ」


デリバの言うとおり、キュージンは案内に従って操作する。

そして、


『登録が完了しました。これよりシステム中枢区画の扉を開きますか?』


「あ、ああ。お願いします」


『承認します。これより扉が開きます。ご注意ください』


そして大扉から大きな振動音が鳴り響く。

まるでいくつものロックが解除されていくように、鉄のぶつかり合う音が耳を痛くさせた。


「……ほう。ここが中枢と呼ばれる場所なんだね。古文書どおりだ」


扉の奥はホール上の大部屋となっており、その中心にいくつもの小さな光を点滅させる棒状の機械があった。


「これがメインシステムというヤツかな?ならキュージン君、ちょっとコレに手で触れてみてくれ。ちなみに私が今触れてみたが何も起こらない。ちょっとガッカリしているよ」


残念そうに前を譲るデリバ。

彼女の言うとおりに触れてみると、


『人間の生命反応を感知しました』


まだ同じ声だった。

そして同じ言葉が繰り返され、デリバの言うとおりに進めていく。


『承認しました。当施設の最高管理者権限をキュージン様に譲渡完了。何かご要望はございますか?』


「すごいね。うまく進み過ぎて怖くなってくるよ」


いやデリバの方が怖い。

デリバ以外のみんなが心の内でそう思っていた。


「キュージン君。この遺跡にお願いしてみてくれないか?ここにいるデリバの命令を聞いてくれって」


「ああ、わかった。施設のシステムさん、ここにいるデリバという少女の命令を聞いてくれ」


『それはできない命令です。当施設は人間以外への命令件の配布は禁止しております』


……人間以外の配布?


「いや、彼女はどうみても人間だ。少し力が強かったり、色々できるが、俺とそんなに変わらない…」


「もういいよキュージン君。これで理解した」


デリバが静止した。


「みんなは私がどうして古文書に詳しいのか気になってたと思うけど。こういう事が知りたくて調べていたんだよね」


少し悲しげな表情をするデリバ。

だがすぐに、


「上に戻ろうか。キュージン君、この遺跡にお願いしておいてくれ。今後ここの遺跡は開口状態にし、入ってきた者を侵入者として扱わず、放置するようにと」


「あ、ああ。分かった」

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