第14話、『街に到着してシスターとご対面(少女達視点)』
「シーレは本当に脚早いね。たぶん私の知る限りで一番の瞬足だと思うよ」
「ほとんど逃げ系の機能に特化させてますからねぇ〜。あぁ〜もうほんと疲れたぁ〜」
そこには床に這いつくばるシーレがいた。
場所は街の教会。
キュージンとデリバを担いでシーレは走り切り、治療の機能を有した者達がいる施設にキュージンを預けることができた。
「お待たせしました。無事に治療を終えましたよ」
扉から出てきたシスター服の少女。
「チューリちゃん!ありがとう!」
「いつもはシーレが怪我や不具合でくるのに、私びっくりしましたよ」
シスターの名前はチューリ。
シーレとは顔馴染みで、安堵から抱きついてお礼を言う。
「はい!これいつもの代金ね!あ、いつもどおりお釣りはいらないから!へへへ」
と、いつも自分に何かあったときと同様の治療費を出す。
教会が治療行為で提示している料金表。その中で一番高い金額をチューリに渡した。
私は他より稼げている自覚と実績がある。
なのでどんな治療を施したかわからないけど、一番高額な金額を渡せばOKなのである。
「足りませんよ」
「ほえ?」
「足りません。あの古代人の治療は、料金表に記載している治療と異なります」
笑顔で言うチューリに身震いするシーレ。
「あ、あとおいくら?」
「もうお金という次元じゃすまない金額ですね」
「待って待って!?それおかしい!!」
ぼったくりだー!っと叫ぶシーレに、チューリは困ったように扉の奥を見せる。
そこには倒れ込んだシスター達と空瓶、治療に使われたであろう色々が転がされていた。
「私たちが有する機能では治療しきれませんでした。なので薬や道具など、色々と使い込んでようやくです。ここまでで批判はありますか?」
「くっ!?い、いやでも…」
「教会はしばらく営業不可。私以外のシスターが全滅し、しばらく修復モードでお休みすることになりました。街中に注意喚起をする必要もあります。しばらく治療できませんよーって」
「うぅ〜〜」
「唸ってもダメですよ。とにかく助けました。そして失うものも大きかった。そういう結果になったということです」
「わ、わかったよー。じゃあローンで払う。これから借金生活か〜」
「いえ。私も鬼じゃありません。シーレが私の頼みを聞いてくれたら、今回の料金はタダでいいですよ」
「え!?ほんとに!!いいよ何でも言って!依頼するの?何でもやるよ!あ、でも危険なモンスターの退治は遠慮していただけると嬉しいな」
チューリの提案にシーレは歓喜する。
一気に涙が吹き飛び、チューリからのお願いを聞いた。
「ではあの古代人の所有権を私たちにください」
「へ?」
「あの古代人を私にください」
チューリが2度目を言って私は再起動できた。
「いや、いやいやいや!それおかしい!それに所有権って!?あれは人だよ!ペットじゃないよ!」
「そうですね。ではキュージンさんには私が交渉しますので、シーレは私の言う通りに答えてくれれば、あとは何も求めませんよ」
「そっちに置くよう仕向ける気満々でしょ!」
短い間だがキュージンには愛着がある。
それがこんな形でお別れするのは嫌だと拒否した。
「チューリ。君が欲しいのは古代人としての利用価値。そうなんだろう?」
「お久しぶりですデリバさん。ええ。その通りです」
「なら私も同じ気持ちさ。私も欲しい。だが古代人を教会で独占するのは許せないな」
「チューリ?デリバさん?何の話をしてるの?」
「シーレは何も知らないのですね。生きた古代人がどれだけ貴重か」
一般的な常識が抜けていると、シーレを残念そうな目で見つめるチューリ。
それはデリバも同じだった。
「チューリ。ここはシーレにも知ってもらうということで、一度私の提案を飲んでみないかい?」
「提案にも寄りますが、何をするんでしょうか?」
「教会の下にある地下大聖堂。そこにある『開かずの門』に行こうじゃないか」
「結局、それが一番なんでしょうね」
チューリとデリバさんから出た言葉に聞き覚えがあった。
「『開かずの門』って、遺跡によくある絶対開かない扉だよね。そこに行って何するの?」
「「これから開けるんですよ(開くんだよ)」」
二人の声が重なった瞬間、キュージンが目を覚ました。
「──?」
「やはり知らない言葉ですね」
「『古代語』さ。今は筆記でしか応答ができない状況だね」
「ああー。ではデリバさんはそういう目的もあって教会に?」
「やはり住んでいる者なら分かるんだね」
「昔から存在すると教えられていましたから」
「ちょっとストップ!勝手に話が進んでる!私にも状況を教えてよ!それに開かないから『開かずの門』って言うんでしょ!開けられないでしょ!」
自分を置いて話が進んでいくことにシーレが声をあげる。
それにデリバが答えた。
「書物によれば古代人は門を開けられるんだよ。そしてここにある『開かずの門』の奥には、『古代語』をインストールできる場所があるとも書物にあった。つまり会話の問題が一気に片付くのさ」
「…………ぁ……………………」
止まったシーレにチューリが覗き込む。
「フリーズしましたね。最近新しい機能を入れたりしました?」
「『古代文字』をインストールしたばかりだったよ」
「それが原因の一つですね。でも気にすることありません。シーレは私が運びますので、デリバさんはキュージンさんとコミュニケーションを取って、ついてくるように伝えてください」
とにかく完結を目指します。




