第13話、『商人の少女と出会う(少女視点)』
「おや?シーレかい?」
「デリバさん!?」
街に向かう途中の夜森で、焚き火を見つけて近づくと顔見知りに出会った。
大きなリュックに体全体を覆い隠すフード付きコート。
彼女の名前はデリバ。
私と交友がある商人だった。
「すごい偶然だね。外で会えるなんて」
「いつもは街ですからね!いつも色々売ってくれてありがとうございます!」
「相変わらず元気だね。それで?その抱えているのは誰だい?」
「あ、この人はキュージンと言って、ちょっと訳ありで…」
「ほぉ?詳しく聞いても?」
デリバさんは良い人だ。
そして物知りでもある。
私は信用してデリバさんに全て話した。
「それは本当かい!?」
「わ!?急にどうしたんですがデリバさん!?」
「もしその話が本当ならすごい発見だよ!ちょっと待っててくれ、何書けるものを」
デリバさんはリュックから書き道具を取り出して、そこに書いた内容をキュージンに見せた。
それは私の知らない文字だったが、どこかで見覚えがあった。
「──!?──っ──!?」
すっごく驚いてる。
もしかして、
「すまない。文字は書けても、会話はできないんだ。はい。これを」
デリバさんが書き道具をキュージンに渡す。
するとデリバさんが書いた文字と似た文字が書かれていく。
「ほぼ確定だね。キュージン君は古代人だよ」
「こ、古代人?」
「大昔に生きていたこの世界のご先祖というやつだ。運が良いのか、悪いのかは知らないが、シーレが彼を目覚めさせたと思うよ」
「え?もしかして私のせいでキュージンが大変な目に?」
「どうだろうね。それを今、キュージン君に聞いているところだよ」
キュージンが今も書き続けている。すっごい長文だ。それだけ必死に何かを伝えたいということが分かる。
「あ、どうしてデリバさんは古代文字を知っていたんですか?誰も知らないと思ってました」
「私は商人だからね。売れるものを探しに、古代人が作った遺跡によく行くのさ。そこで良い物を見つけるために、『古代文字』のインストールは必須なんだよ」
「す、すごいです。インストールできるのは聞いたことがありましたが、本当に入れている人がいるなんて…」
「容量の問題だね。私は基本戦わないし、機能を減らして容量を空けているんだよ。不足している機能は道具で補っているからね」
と、デリバさんは黒い石と鉄をカチカチ鳴らして火花を散らせる。
私は指先から火を出せるが、デリバさんはそれをしない。
その火を見て、私は思い出した。
「あ!知ってましたか!実は木の棒と板を擦り合わせると火が起こるんですよ!」
「うん。知ってたね。皆んなは知らなくて当然だよ。だって火をつける機能は必須というくらい皆んな入れてるからね」
「うぅ〜そんな〜。歴史的発見も思ったのに〜」
「視野が狭いね。まぁ火の機能は必需だから。普通は気づかない。良い勉強になっただろう」
「…………はい。勉強になりました。なのでアインストールしました」
私は、私の中から火を起こす機能を削除した。
「な!?いきなりだね!?」
「今は容量を削減したいんですよ。これからデリバさんから『古代文字』のインストールをしなきゃですから。それと会話もしたいので、『古代語』をインストールできる場所があれば教えてください」
「痛っ!?ちょっ!いきなり頭を押し付けないでくれ!私は耐久関連の機能もほぼ無いんだ。君みたいに丈夫じゃないんだよ!」
「じゃあそれもアインストールしなきゃですね」
「しない方がいいよ!それは戦う君にとって結構重要だからね!」
必死に止めにくるデリバさん。
そして容量を確認して、デリバさんの中にある『古代文字』の機能を私にインストールする。
「インストールするためとはいえ、本当に捨ててしまったね。『望遠眼』『水上歩行』『無呼吸行動』…他色々と」
「どうせ再インストールできるので大丈夫ですよ。持ってる人、皆んな覚えてますから」
そして私は彼が書いている文字を理解できるようになった。
「どうやら彼はコールドスリープという古代の兵器によって、目的のために眠っていたみたいだね」
「その目的は……え、病気?」
私とデリバさんが理解していると、キュージンが胸を苦しそうにし、突如と血を吐いた。
「キュージン!?」
「これは大変だね!?シーレ!君は治療関連の機能を持っているかい!?」
「自己治癒用しか持ってないです!他者には使えません!」
「くっ!私も持っていない!すぐに街に行くぞ!」




