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1-2.台風、夏、俺、銀髪少女


「おじゃまします」


 誰だよ。


 もはや窓枠しか残ってない窓から、見知らぬ女が侵入してきた。

 あまりにも自然体で不法侵入してきたので、こっちは驚くタイミングを逃したわ。


 自分の家に上がり込むようなふてぶてしさでノラ猫と共に侵入してきたのは、全身ずぶ濡れで薄布一枚の銀髪少女。

 年は俺と同じくらいだが、赤や青、緑や黄色のメッシュが入った短めの銀髪を、濡れ柳のように顔に貼り付かせてはゆらりと立っている。

 ……妹が見たらお化けだって大泣きしそうだな。


 全身ズブ濡れだというのに、雨に逆らうようにして一本の赤いアホ毛がピンッと伸びているが、何かのコスプレだろうか。

 怪訝な目で見ていると、女は糸の切れた人形みたいにカクンと首を傾げ、その細く濡れた指を俺に向けてきた。


「あなたダレですか」


 いやおまえが誰なんだよ。


「それはこっちの台詞なわけだが……」


 女は濡れて柳糸りゅうしのようになった髪を摘まみながら、不思議そうな顔で俺を見つめている。


「……子豚?」


 んっ?

 いまなにか失礼なことを言われた気がするぞ?


「はい。はい。えっ? これが原住民なのですか?」


 なに1人でブツブツと呟いてんだ? 誰かと話してんのか?

 ヤバイ奴じゃないだろうな。まあ、不法侵入の時点で十分ヤバイが。


「はい。ラッファリーナ地方に生息する、ヒルネテル・コブタ種に見えるのですが……」


 んっ?

 またなにか失礼なことを言われた気がするぞ?


 こぶたとか言われたような?

 確かに最近運動不足で、全体的に少し残念なお知らせになってはいるが。


「……」

「……」


 しばし見つめ合う俺と銀髪女。

 雨に濡れた薄布が、月明かりのような肢体に貼り付いて何かとモロ見えになっている。

 俺は悟られないよう、空気と一体化するような顔でガン見しつつ、脳内をREC(録画)モードに切り替えた。


「……発情期ですか?」


 おい。


「はい。はい。やはり発情中のヒルネテル・コブタだと思われます。原住民の家畜、またはペットである可能性が高いでしょう」


 ……何言ってんのかよくわからんが、とりあえずゲンコツ食らわせていいかな?

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