2話 入学01
短いですが、ご容赦くださいませ。
国立拡張現実研究所付属第一高等学校│││通称『AR高校』
その第二期生が、今日入学の日を迎えた。
『AR高校』は、JAVW事件でイマジンブレイブが若者たちに普及した直後、当時高校生だったイマジンブレイブ所持者を対象に発足した研究・教育機関である。
もっとも、初めはイマジンブレイブの研究の側面が強く、教育機関としての役割は一般高校程度だったわけだが、現在は戦場の最前線でのデータや経験が持ち帰られ、イマジンブレイブの扱い方や制御の仕方を学ぶ場、そして今後のウイルスへの対策としてイマジンブレイブ熟練者│││『イマジンブレイバー』育成の側面が大きくなった。
空待は、入学式に向かうべく自宅を後にし、最寄り駅へと向かっていた。
高校へは、自宅から駅、電車とで30分程度の距離なので、そう遠いわけでもなく、実家からの登校となる。
「…平和だな。」
そう、ついこの間に比べれば…。
AR高校とはいえ、一般の学生と共に普通の学生生活を送ることができるとは。
そんなことを考えていた時、軽い2回のクラクションの後に、横に真っ赤な外車のスポーツカーが止まった。
「やあ、そこのお兄さん、乗ってかない?」
逆ナンパか!と突っ込みたくなる気持ちを抑えて、聞き覚えのある若い女性の声、運転席の方へ視線を向けた。
「こんなとこでなにやってんの、岬さん。」
「あら、背中美人の男の子がいると思ったら優来くんじゃあない!」
「背中美人とか言われても全く心に響かないんだけど…」
運転席で、あらら!と大げさなリアクションを取っているのは、宮崎岬。
「空待の彼女である。」
「いや、違うからね?モノローグに割り込むなよ!」
「…モノローグとか何言ってるの?せっかくのイケメンが残念イケメンになってるよ?」
「いや、イケメンとかいう設定もないから…。こんのクソ作家の設定のせいで…!」
「そうね、優来くんはどちらかというと美人よね。」
「うるさいよ!…そんなことより、こんな住宅街で何やってんの岬さん。」
「何って?これから入学式に行く高校生の送迎の予定だけど。」
「はい?…」
「いやぁ、西東京区支部長が行けってうるさくてさー。優来くん昨日の夜、C級の魔物と出くわしてるじゃん?」
「それにしてももっと目立たない送り方あるだろ…」
何のことやらさっぱり…。といった様子の宮崎に呆れながらも空待は、渋々助手席に乗り込む。
「それじゃ行くよ!始まりの英雄くん!!」
「しっ!!窓開いてる!!声が大きい!!!」
窓が閉まってから、宮崎はアクセルを踏むと楽しそうに笑う。
「ふふっ、相変わらず堅いわねー隊長は。」
「一応、国家機密ってことになってるんだかんね、岬さん!」
空待は、心の中で深くため息をつくと、入学に向けての緊張が少し和らいでいるのを感じ、そっと微笑んだ。
今後も短い投稿がしばらく続くかもしれません。