Prologue
もう幾時剣を交えただろうか。
気が遠くなりそうな意識をなんとか押しとどめつつ、俺は集中力を切らさないように改めて構えた。
この無言のやり取りが終わることへの対策を何度も考え続けても答えは収束してしまう。
結局のところあの人の思い通りに、このやり取りが終わってしまうのだろうと気の入らない覚悟をしながら、そしてその終わりはもうすぐ告げられることが、何となくわかる。
一度剣劇が止まり、両者の間に間が開く。
「さあ、フィナーレだよ。」
「くっ…。こんなフィナーレ、冗談じゃないですよ!俺は認めない!」
そう言いながら俺は、収束からの回避ができずにいた。
「私の物語が気に入ってもらえないようで残念だよ。」
そう言いながら、実に満足そうな顔で笑みを浮かべる。
「しかし、物語は私の紡ぐように終える。これは運命だよ。受け入れてくれたまえ。」
そして、駆け出したのは2人同時だった。
「うおおおおおおおおお!!!!!!」
俺は、その人の胸に剣を突き立てることしかできなかった。
「この世界を頼むよ。」
2162年のJAVW(Japan Augmented Reality Virus Wars)と後に呼ばれる大きな事件は、この後収束しつつあった。
もともとの発端をさかのぼればキリがないのだが、まずは、一人の研究員による日本国内の急速なAR発展があげられるだろう。
コンタクト型のウェアラブルデバイスが登場したことで、見た目上の問題点が解消され、それとともに官民一体となったAR設備が急速に進んでいったのだ。
一般化したAR社会から半年ほど過ぎた頃だろうか、突如としてAR上ではあるが、東京の池袋上空に巨大な円盤型の物体が現れた。
初めはどこかの企業のキャンペーンイベントとでも思われたいたが、その円盤から異形の存在が解き放たれたのである。
それはAR可視化されたコンピュータウイルスだった。急速にAR社会が進んだことと同時にIoT社会も進んでいたことから、その異形の存在たちはあらゆるものを破壊し始めた。
もうすでにウェアラブルデバイスなしでは生活できない状況にだったため、それは人間であっても同じことであった。
突如現れた新種のウイルスに、日本は混乱に追い込まれた。
しかし、不可解な現象はこれだけでは終わらなかった。
突然の光とともに空に大きな女性が現れた。
救世の女神であるかのように。
彼女は言った。
「異形の存在に屈してはなりません。さあいまこそ、立ち上がり反撃の狼煙を上げるのです。そのための力を授けましょう。」
その後、一部の若者に一つのアプリケーションがインストールされていた。
その名は『イマジンブレイブ』
この力こそ異形の存在に対抗する唯一の手段であった。
そしてJAVWは始まり、"始まりの少年"と呼ばれた一人の少年によって終結したのである。
どうも初めまして國藤拓です。
プロローグということで短めですが、初めのご挨拶といったところで…
のんびりとした投稿にはなるかもしれませんが、よろしければ定期的に見に来ていただけるとうれしく思います。