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モンスターサーヴァント  作者: 桑島ヨシカズ
1/2

001 序

 

 人間社会ってのは面白い。

 都合の悪いことには目を向けず、都合の良いように解釈して、それを他人に押し付ける。



 ――昨夜、××市××の路地裏で血の抜かれた死体がまた見つかりました。

 警察は遺留品から身元を…………


 ――まるで吸血鬼みたいですね


 頭の悪そうなコメンテーターが、勝手知ったるように、アニメや漫画で取り入れただけの薀蓄を偉そうに並べていく。


 先程街で捕まえた女の肌に顔を埋めながら、男はTVを消した。


「あぁっん」


 女が態とらしく喘ぐその様に、男は既に飽いていた。

 この女の脳みその中は、きっと【こうすれば男は喜ぶ】というテンプレしかないのだろう。

 オタク文化やらその手のサイトで得た知識が当然だと思っている。


 ――飽いたな。

 前の女は、この女と比べれば大分見劣りはしていた。寧ろ、醜女と分類してもいい。

 ただ匂いが良かったから近付いた。

 自身を過剰に卑下しているため懐くこともなく、籠絡するにはかなり時間を要した。

 だが、付き合いを続けて感じられる女の賢さと初心(うぶ)な面には大変満足した。

 腕の中の女と比べたら、××したのは惜しかった。

 ああいうモノを傍に置けばよいのだろう。

 外見は金を積めば幾らでも変えられるが、知性や品性は買えるものではない。

 否、外見を変えれば品性を捨てる輩も居るので、そのままで充分だろう。



「ねぇ、どうしたの?」



 態とらしいまでに、蕩けた声で女が誘ってくる。


 もう、処分するか


「ああ、そろそろ頃合いだな」

 女が恍惚とした表情を浮かべた途端、その顔は一転して苦悶の表情へと豹変した。

「なっ、ん」

 首を絞められている訳ではない。

 なのに、呼吸ができない。

 水中をもがくかの様に、腕を振るったところで呼吸ができる訳でもない。

 女の無様な様子を見ていて、男は笑いを堪えた。

 そして女の表情がまた変化する。

 目の前に、紅い、水珠の様な物が浮かんでる。それは、女の体から“何か”を吸い取るように膨張していく。

 体温が徐々に下がっていくのが分かる。

「綺麗だろ? 俺は人間の血液を吸い出す瞬間が一番好きなんだ。絶望を感じてる時の、その表情が、な」

 女の顔には、既に生気と呼べるものはない。

 男はそれを確かめると、水珠に指先をかざした。水珠は、何かの力が加われたかの様に一気に凝縮される。

 男はそれを飲み込むと、満足そうな顔を浮かべて、部屋を出ていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――今朝、××県××市内のホテルで、女性が血を抜かれた状態の死体が発見されました。

 警察は最近連続してる事件と同様の手口から、同一犯とみて、調べを進めております…………





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