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1、超極小確率の事象

「うあーヒマじゃ」


 一人のエルフが、広い空間の肘掛け椅子に腰掛けて、肘を立てながらぼやいた。

 幼く小さな体、夕焼けに似た色の金髪に、澄み渡る青空に似た色の蒼い眼。ゆったりとした、質素だが高級な服。

 彼女の名前はウガラガルタ・エルフズリーダ。

 人族世界の最強種、エルフの、首長である。


「もうやること大体やったからのう」


 彼女の願いはただ一つ。

 世界を滅ぼすこと。



 彼女が何故世界を滅ぼすことを目標にしているか、簡単に説明する。

 約八十年前、このエルフの領域に一人の人族が訪れた。ウガラガルタには青年の男に見えた。


 彼はよく笑いよく耕した。

 よそ者に眉をひそめるエルフ達も、いつしか人柄に絆されていき、「人族も悪くないな」と言い合うようになった。


 話を聞けば彼は戦争の惨禍から逃げてきたのだという。

 なるほど確かに外の世界ではちょっと前に共和国と王国を代表とする連合国が(いわば)世界大戦を行っていたところだ。

 魔族の脅威を忘れて馬鹿だとは思うが、戦争を忘れ平和ボケするよりはマシなのでエルフはノータッチでいた。


 彼はやがてエルフの領域から消えた。

 特に何か書き置き等はなかったが、皆は納得していた。いついなくなってもおかしくないような、儚い感じがする人族だったからだ。首を吊って死んだのかもしれないし、冒険者でも始めてのたれ死んだのかもしれない。わからなかった。そして、特にエルフ達はそのことを気にすることはなかった。

 なぜなら、……彼がいつも願っていた願いだけは、誰の頭からも消えなかったから。


 「世界を救済したい」。「人族の皆を救いたい」。

 いつも彼はそう言って、ときに涙さえ流していた。ように見えた。


「あの人族の願いを叶えてやりたいと思う」


 七十年前、八百歳代くらいだったウガラガルタは特に仲の良い者を集めてそう言った。


「人族を救済……つまり全滅させる。それがあの人族の願いじゃったな。


 ――人族世界を滅ぼそう」


 否定する者は誰もいなかった。

 いつしか彼の願いを叶えようとする一派は前進派と名乗り始めた。

 一応口では「待った」をかける、後に中立派と呼ばれるようなエルフ達も、あの人族の願いを叶えてやりたいという気持ちについては一緒だった。

 それほどまでに、彼はエルフの領域に馴染んでいた。



 さて、そういうわけでウガラガルタは七十年間いろいろと手回しをした。

 もはやその手回しのタスクもなくなり、ほとんど準備は万端といったところだ。


(じゃ、とりあえずそろそろ動き始めるかの。あと十年程度でエルフの人口を今の五倍にしよう。ほんとはちまちま増やして一万くらいにできてりゃ魔族と戦争だってできるんじゃが、人口を増やすと人族の各国がうるさいからのう。……でも十年で増やせば問題なかろう。適当に政治的混乱を工作で起こして押し切る。エルフは五歳から“戦術個体”級の戦闘力を持つ。足手まといにはならんはずじゃ)


 ウガラガルタは一応優れた指導者である。

 人族世界を滅ぼすために、やれることは全てやっている。


 ただ、少し心配性なところもあった。


「……本当にこれだけでいいじゃろうかの」


 何度も何度も何千回もよぎったこの考えが、またウガラガルタの頭をよぎった。


(今まではずっと、全て、無視してきたが。ここまでやって、それでも感覚がこう訴えかけているってのは、実際に足りない証なのかもしれん)


 自分の感情を信じ、ウガラガルタはある行動を取ることにした。



 エルフの領域のある建物の会議室で、ウガラガルタは大きな人族世界の地図を広げる。

 そして、手にはサイコロのような玩具を持っている。


(よし、では石が落ちた場所の国にちょっかいをかけてみる感じでゆくぞ)


 ウガラガルタは基本的に理性で物事を考えるエルフであるが、どうしても直感や周囲がそれに対してブレーキをかけるときは、こうやって直感や天命に従うことを好んでいた。

 今回は、広げた地図に石を投げて、石が落ちたところに何か特別に積極的なアクションを起こす。

 失敗したら失敗したでしょうがない。自分の理性を信じきれなかった自分の弱さが悪い。


(何が出るかのぉっと)


 石を子供の小さな指の上に乗せて、弾く体勢を取る。

 一発で綺麗に地図の上に落ちないかもしれないが、その時はその時でもう一度投げればいい。


(ま、面積の大きい共和国か王国じゃろう。共和国に落ちたらヴェスタをあの人形によこして実力と政治力で適当に骨抜きにして、王国じゃったら教会使ってうまく揺さぶってみるか。あとはいくつか貴族の実力者がいるから野心くすぐって面白い感じにしてやってもいい。小国に落ちたら落ちたで、君主を洗脳するなり国内の主要戦力全員殺すなり適当にして囮に使うぞい……)


 頭の冷静な部分でそんなことを考えながら適当に投げた石は、

 しかし、


 地図の端っこに綺麗に落ちて、ぴったり止まった。


「うっっっっそじゃろおまえ」


 地図の端っこの、魔族領域に。



 相対しただけで、強烈な圧迫感に、ウガラガルタはえづきそうになった。

 というか、恐怖で体ががたがた震えそうだ。根性で我慢する。


「お呼びに預かり光栄です、エルフの長よ」


 少女は胸に手を当てながら挨拶をした。


「私の名前はリュチエグリア。魔王、リュチエグリア」


 魔王リュチエグリア。人族大陸を取り囲む大陸すべてを覆う魔族領域で最強の存在にして、最高権力者。

 なぜか人族大陸には不干渉の姿勢を取っているが、正直明日この少女が宣戦布告してくると人族は非常に困ることになる。困ることというのは要するに、二割がた絶滅する。


 鮮やかな桃色の髪色、複雑な色を持つ瞳。学生服風の服に、軍服のような飾りがついた黒いマントを羽織っている。学生服に取り付けられたネクタイはとても長い。腰の下まで伸びている。何かそういうファッションなのだろうか?

 ファッションといえば、太腿が目を引く。左の太腿には指程度の大きさの時計盤が、いくつもベルトで固定されている。


(……あれ、やっぱり動くんじゃろうのう。人族世界の時計は、建物一つぶんの機構がないと動かないんじゃが)


 そして、右太腿と左腕には、


(巻き尺……を象ったアクセサリーじゃろうか?)


 ぐるぐるに、黒い布地の、巻き尺風のリボンというかベルトというかなんというかが巻き付けられている。


 そして、右目の周囲には、彼女が魔王であることを示す、魔力の発露による光の紋様が発現していた。

 三つの矢印が同一の原点から伸びている。

 魔王の片目の周囲には、意味のあるシンボルが魔力の光によって浮かび上がるのだという知識はある。だが、何のシンボルなのだろう、あれは。


 何もかもがわからないことばかりで、ウガラガルタは心の中だけで苦笑した。


 エルフの領域には豪勢な建物はあまり多くない。

 だがやっぱり権力者同士のつきあいをするのなら儀礼としてある程度のものは必要で、この謁見室というか謁見ホールのような部屋もそのための設備だ。人間の王城の王座の間ほど豪勢ではないが、それでもある程度の広さがあり、階段の上から肘掛け椅子に座って謁見する人を見下ろす。


 ちなみに風属性魔力を注ぐとぱっくりと王座の背後の壁が開くようになっており、さまざまな演出に使えたりするのだがそれは別の話。


(魔族領域の王。結構なことよ。だがこっちだってエルフの長……!)「光栄とはこちらのことじゃ。魔王。こんな辺鄙な場所によくぞ来られた」


 敬語は使わない。エルフは(広義の)人族から少し独立した雰囲気を保っており、魔王と対等に付き合っていこうとする姿勢を見せても問題はない。というかそのうち人族を滅ぼすつもりでいるのなら今下手したてに出るとまずい。

 魔王が片手を薙ぐとこの集落が消滅する中、対等な口を使う恐怖はやはりあるが……理性を以て感情を殺す。


「いいえ、ウガラガルタ。私は二百年前の戦争の時に生きていた。だから知っている、エルフがどれだけ手強いか」


「……うん? なんかテンションが思ってたのと違うのう。なんかこう魔族の王なんじゃから、来てやったぜ、ギャハハみたいな」


「そして貴方もよ。ウガラガルタ、貴方、強いのね」


 魔王はにっこりと笑ってウガラガルタの目をまっすぐ見た。

 恐ろしいほど怜悧で威圧感のある表情だが、こうして笑うと、彼女はとても魅力的な印象を持つ。

 捕食されそうな笑みだが、捕食されるととても気持ちいいことになるのではないかという予感だけがある淫靡な感じだ。

 正直怖い。


「げ、ん在世界最強の生物にそう言われてものう……」


「いいえ。魔王の力なんてそもそも借り物の力よ、私が強いのは当たり前。でも、貴方は違う。……貴方、強いなあ」


(うう……じろじろ見られて背筋がぞわぞわするんじゃが!)


「ところで、隣の人は大丈夫?」


「あん?」


 言われて、隣を見る。

 機密上あまり大人数で迎えても仕方ないので、今この謁見の間にいるのは、ウガラガルタ、リュチエグリア、そしてあとこちらのお付きが一人だけだ。

 政務官オフィアの一人で、前進派で、一番強いのを連れてきた。弱い者をつれてきて、おもちゃとして殺されても困るし。


 だが、そのオフィアは、


「すっ、すみません、首長おかあさま、体が、勝手に、はっ、はっ――」


 口に手を当てながら、かたかたと震え、涙を流し、跪いていた。


「……いや、無理もない。すまんの。強さだけでなく感受性の強さも考えるべきじゃった」


 もう、魔王の魔力は魔力が多いとかそういう次元ではない。

 全エルフの中で三番目に強いウガラガルタでさえ、はっきり言って戦おうとしたらその瞬間に殺されそうだ。


 星を喰らい尽くしそうな、真っ黒い魔力。異常な密度だ。

 おそらくまあ黒い魔力自体は闇属性の魔力だろうからそれはいいのだが、しかも、どういうからくりか、彼女の魔力は黒だけでなく、朱色、青白色と、複数の色を持っている。


 通常一人の人間が出す魔力の色は一色だ。

 たとえ二重属性だとしても、色はその二つの属性を表す色が入り混じった一つの色になるのが基本。

 ……なぜ、魔王の体からは、三色の色の魔力が、綺麗に現出しているのか。何かの冗談ではないのか。


(まさか三重属性とか……冗談じゃよな。はったりじゃよな。それかなんかの魔法器か? ともかく存在するはずがない。それに魔力の力は想いの力。二重属性でも人格が分裂したものになりやすいって論文出てたはずじゃ(二面性を持っていたり、人格障害を抱えていたり、感情が強すぎたり理性が強すぎたり)。三重属性ってもうまともな人格が保てんぞ)


 こんなもの、対峙して正気でいろというほうがおかしい。

 対峙して正気でいられるのは、もともと狂っている者だけだ。


「いったん、外しましょうか。ウガラガルタ」


「いや、いい。お気遣い感謝する。……そもそもそちらのせいじゃからこちらの落ち度にしてもらうと困るが、すぐに退出させる」


「ゆっくりでいいわ。慣れているから」



 さて、最初の印象と異なりというべきか、あるいは最初の印象と違わずというべきか、二人の邂逅は無事に進んだ。


 もちろん、最初の会談でいきなり「私は人族世界を滅ぼしたいんです!!!」などと言うはずがない。とりあえず、リュチエグリアを簡単に食事でもてなす。

 あまり豪勢な部屋ではないが、エルフの食事には自信がある。


 芸事ができる者が今のエルフの集落に一人いたので、一曲だけ弾かせた。

 外の世界で歌姫をやっている者で、肝心の歌は下手だが、楽器の演奏は極めて綺麗だ。

 世界の片極の王に聞かせる価値のあるものだと思う。本人は魔王にビビってべそべそ泣きながら弾いていたが。


 そして、リュチエグリアは食卓に並ぶ色とりどりの食事の中の、一品を取り上げて褒めた。


「美味しいわ。この白色のシチュー」


「料理を気に入って頂けたようで何よりじゃ」


「お父様がよく作ってくれていたから」


「……何? なんて?」


「私のお父様が、よく作ってくれていたの」


「……………………」(そういえば今のパティセがホワイトシチューを作るようになったのって二百年前の三期聖戦の後じゃったな。で、リュチエグリアのお父様というのはおそらく二百年前に死んだ先代の魔王のことじゃろう。あれ……このシチュー……)「そ、そうか、それは何よりじゃ……」


「魔族領域の料理でしょう?」


「…………………………………………い、や、調理者パティセに聞かんとわからんのう……でも、その可能性が高い……かもしれん。ちょっと確認を取るが。不快ならば申し訳がない。換えさせる」(何やっとんじゃあの馬鹿は!!!! 父親を殺して魔族世界から奪った料理を娘に振る舞って何がしたいんじゃ!! 殺す!!!)


「ううん。いいえ。……いいえ」


 リュチエグリアは寂しげに笑った。


「思わぬところでお父様に会った気分がしたから、嬉しくて」


「……いやいやいや、本当に申し訳ない。確認して……換えなくてよいとしても、謝罪させよう」


 なおも食い下がるウガラガルタに、それは構わないとリュチエグリアは言い切った。


「強さこそ正当。私のお父様は弱者だったから当時の貴方達に負けて、文化を収奪された。それどころか私達は忘れたものを……保存していたのは貴方たちだ。貴方達は二百年前の勝利を恥じるべきではなく誇るべきで、私は、この食事を食べたいと思うわ」


 ぐ、とウガラガルタは言葉を詰まらせた。

 今、寛大な態度でエルフを許している魔王の言葉。

 この言葉でこちらの失点を許してもらっているのは確かだが、逆に、「この言葉こそが、魔族が人族の絶対的な敵である証」でもある。



 ウガラガルタは魔族領域にも多少調査の手を伸ばしている。数人程度のエルフが潜入し、海をわたって戻ってきて、あるいは特殊な魔法でエルフの領域に情報を運搬する。そもそもが今回の魔王を呼ぶ話は、魔族の政府機関の中で上位の役職を務めるエルフが直接魔王にコンタクトをとる形で行われている。


 その魔族の価値観とは、一言で言えば、

 「強さこそ正義」。


 まず単純に暴力が優れているものは優れているとみなされる。

 魔王が政治権力の頂点なのが既にそうだ。

 人族世界で調停者が政治権力の頂点に立つことは考えられない。


 また、暴力以外の力も称賛される。

 美貌、頭脳、芸術の技術力、はたまた物語のどうしようもないずる賢い悪役のような、権謀術数で立場が上の者を引きずり落とす政治力でさえ、魔族にとっては力である。

 それら全てが称賛される。


 ただ、それを持たないものは、魔族においてはゴミだ。

 奴隷のような身分に置かれ、力あるものに絶対服従。

 弱い種族は種族ごと奴隷。

 戦闘が当たり前の彼らの価値観においては、人族に宣戦布告するのも、人族の「強さ」がどうであるかを確かめるくらいの気持ちに過ぎない。強ければ「やるじゃんお前ら! しばらくはいいわ。すまんかった」。弱ければ奴隷。――こっちとしては、死に物狂いなのだが。


 悪いとはいわない。価値観に貴賤はない。

 魔王たる彼女なんかは、別のルートから、どこか騎士道精神と似た境地に到達しているように見られる。人族こちらの世界においても、美徳として称賛する者もいるかもしれない。

 だが、魔族の価値観は人族には受け入れられない。


(人族は多様性を確保することで野生生物の中生き残ってきた。そしてその中にあっては、弱者を完全に保護することこそが、人族の、いや、人型生命体の長年の夢……)


 解放教会は進化論を支持している。あそこの基本理念は、「魔族は敵であり勝つためならなんでもいいから利用する」だ。

 そして人族が生まれたのは草原だと最新の研究者は指摘している。


 草原で、まだ猿だった頃の人族は悔し涙を流したに違いない。

 食料が足りず口減らしをせざるを得なかった苦しみを、

 運動神経が悪い仲間にも槍を持たせなければならず、結果として殺してしまった苦しみを、

 大切な者を守れなかった苦しみを、

 全て受け止めて。


 彼らは一人残らず想いを抱いたに違いない。死ぬ間際まで、まだ未熟だった脳に刻んだに違いない。

 「いつかは我々はもっと強くなり、大切なものを全て守る」。

 それはいつしかある程度叶うようになった。

 ある程度叶うようになってからも願い続け、叶え続ける。

 そうして人族は今の状態に至った。

 弱いものを守ろうとする――人族はずっとそうやって生きてきたのだ。


 要するに、


(我々人族にとって、弱者の保護の放棄は大自然に対する屈服であり、世界に対する敗北に他ならん!!! ……ま、儂は為政者じゃから必要なときは社会保障なんてせんし邪魔なのはさっさと殺すんじゃが……まあそれは別じゃ)


 魔族と融和してしまえば、この願いは絶対に叶わない。


(故に、魔族世界は完全なる敵性社会ってわけじゃ)


 ここまでは人族世界の共通認識であり大義名分である。

 で、それがエルフにどこまで関係するかといえば、実際のところはそこまでは関係しない。

 エルフは魔族世界の中でもかなり優秀だ。最強クラスの種族の一つに収まるだろう。魔族の中でもそれなりの地位にいられるだろうし、交渉次第では自治区のようなポジションに収まることもできるはずだ。エルフは一人残らず魔族大陸で生存し、一人たりとも弱者にはなりえない。


 弱者の保護がどうとかは、そもそも人族とは別の生物であり政治家であるウガラガルタにはそこまでは関係ない。自分が守らなくてはいけないのは理念なんかではなく構成員の命だ。それを考えれば、魔族の中で今より良い暮らしができるのなら、戦争なんてやらなくてもいい。


(……じゃが、その時エルフは今の形を取っていられるかわからんしな)


 エルフはニンフと似た魔力生命体である。

 魔力そのものの龍やフェアリーとは少し離れるが、体が魔力でできていることには変わりない。

 魔力の力は想いの力。

 想いは思考によって編まれる。


(今と違う価値観の社会に同化して、今のままでいられるかわからん。こうして山の中でのんびり畑を耕して暮らしている我々が、競争社会に放り込まれて、果たして心が歪まずにいられるじゃろうか? そして心が歪めば、肉も歪むのがエルフ。そういう意味では人族のほうがまだ魔族に適合できる場合もあるかもしれんの。多分人族の上位一パーセントくらいは魔族でやっていけるから)


 問題ない可能性もある。

 だが、問題がある可能性がある。

 以上の、理念上の理由と、実利上の理由から、ウガラガルタ率いるエルフは、しっかり人族側についている。


 ウガラガルタは魔王の目をしっかり見据える。


(儂らエルフは絶対魔族なんかに負けたりせんっ!!)



 まあそれはそういうわけで、それはともかくとして目の前の自分たちの失点は自分たちの失点である。


 一応、さんざん否定した後でフォローを入れても無駄かもしれないが、魔族の強さ至上主義は、人族世界とは比べ物にならないほど多様な種族が纏まるためには仕方ないといえる。知能のある魔物としか言いようのない種族もいるみたいだし、昆虫から進化して人と似た外見をとっている(といわれている)種族や、体の一部がガラスになっている種族等もいるらしい。


 ともあれウガラガルタは謝った。


「……魔族の価値観ではいいかもしれないが、儂らの価値観ではそうはいかん。儂にも婦長はいたし、儂を産んだその配偶者もいた。気持ちがわかるとは言えないが、何か後で持ってこさせよう」


「……本当にいいのに。でも、ウガラガルタ、そういうところを見ると、やはり貴方は本当に強いのだと思う」


 食器を置いて、魔王は微笑みを続けながら一つ息を吸った。


「もし今のを失点と思ってくれているのなら……そこに甘えて、一つ話がしたいな」


「んんッ!? うん!?」


「別にここだけの話というわけではなく、皆に言って回っている話だから秘密保持とかについては気にしないで。人族世界の者に言うのは初めてだけれど……」


 ウガラガルタは身構えた。


(な、なんじゃ……!?!? や、やべーーーーやつじゃこれ。あああああああ……)


 だが、聞かないわけにはいかない。


「聞こうぞ、魔王」


 聞き返すと、魔王は笑った。


「私はね、神を殺したいの」



 魔王である少女は簡単に話をした。


 二百年前の戦争で、前魔王は部下達の願いを聞き届ける形で人族を攻め滅ぼす大戦争を仕掛けた。

 その戦争が続き人族の人口が一割を切る頃に、現れたのは調停者であった。

 その調停者は……父親の前魔王を殺した。


「そこまでは……戦争である以上謝罪はできんが、こちらとしても把握している事実じゃ。そこで何故神という想像上の概念が出てくる? 調停者に対して恨みがあるというならおかしくないが」


 ウガラガルタは神については半信半疑といったところである。

 解放教会の言うような全知全能の神はいないと思っているが、一期聖戦の顛末から、この世界の管理者的な存在は多分いると思っている。

 だが、そのことを言う必要はない。ぼかして、また質問をする。


 リュチエグリアは話を続ける。

 当時魔族世界の大学生でありながら、新しい魔王となった彼女は、なぜ調停者があんなタイミングで現れ父親を殺して戦争を終わらせたのかに着目し、最終的に「人口」に行き着いた。


「貴方達の世界では、世界が危機に瀕した時に人王(魔族での調停者の言い方)が現れるという言い伝えになっているのよね」


「あ、ああ。一応な」


「でも、それっておかしくないかしら。私の調査が正しければだけれど……なぜ……『ぴったりと人族の人口が一割を切った瞬間に、人王が生まれたの』?」


「……ぴったり……一割か」


 人族が危機に瀕している時に調停者の力が目覚めるというのはおかしくはない。魔力の力は想いの力。そういった想いをトリガーにして、初めて生まれるものもあろう。

 けれど、それにしては、彼女が彼女なりに調査した統計上の数字が、正確すぎる。

 まるで、何かのギミックがあるみたいだ。


「私は断定した。神のような存在が存在し、私達を使って遊んでいる。人口が減ってはじめて人王が生まれるのは、攻め滅ぼされかける人族が、魔族を追い返すのが楽しいから」


 どろどろと殺意で言葉が濁る。

 重圧がヤバい。


「茶番……茶番だ。神が仕組んだ茶番。今もだらしない笑顔を浮かべながらこの世界を覗き見ているに違いない。私達を使って遊ぶのは仕方がない。神は私達よりも強いから。だから殺す。必ず殺す。そうすれば、お父様に報いることができる」


 今すぐ首を吊って死にたくなるほど、殺意がこの部屋の中に充満している。


(助けてくれぇ……だれか……)「ちなみに、二百年間人族世界に不干渉だったのは……」


「ええ。労力が割かれるのが嫌だったから。


 魔族の皆は、私が調停者にリベンジしようとしていると解釈してくれて、概ね力強く支援してくれている。お父様の仇という点では似たようなものだから、私も特に誤解は解いていない。皆……いい人達で、とても嬉しいわ」


「うぅーんいい人……まあいい人かの……いい人じゃな。うん」


 なるほど。

 ウガラガルタは心の中で納得した。

 筋は通っている。

 どこもおかしいところはない。

 父親の仇(と言って良いのかどうかはわからないが)を討とうとする姿勢、それなりに年寄りとしては応援したくなる。


 というところの感情は、あるにはあって、それは確かなものであるが、それを置き去りにして、一つの感情が飛来した。


(最高じゃ!! 儂の時代来たな!!!)


 魔王は知らないのだろう。

 「人王」が「勇者」ではなく「調停者」と呼ばれるようになったのは、たった五百年前だということを。

 即ち、「人王」の力に人口のリミッターがかけられたのは、この世界が生まれて以来の法則ではない。


 誰でもできることだ。いや誰でもは無理だが。

 何かの触媒を使って、人族の全員にそういった内容の魔法をかけることはそこまで難しくない。

 確かに難しいことではあるが、たとえば、印刷を全て独占している、教会なんかなら。

 ウガラガルタは知っている。調停者とは、人族の願いを宿す者である。


(知らないというのは不自然だから、カマでもかけてるのかもしれんから、そこは後で探りを入れることにして。魔族の記録にはなかったのかもしれんのう、五百年以上前の記録は……


 ……ふふ、ふふふ……


 ……やったー!!!!!! 交渉材料入手じゃ!! むろん、ちゃんと教えて差し上げよう。大したもんじゃ、二百年前に死んだ父親のことを想って二百年間努力してたなんぞ。いっそ、びびるわ。じゃからちゃんと教えて差し上げる。が、貰うもんは貰うぞ! 儂は!! さて何を要求するかのう……くっくっくっ……)


 ウガラガルタは深く痛みを受けたような表情を浮かべた。


「お気持ちお察しする。そのことに関しては儂らも協力が可能じゃ。なにせエルフは人族とともに永く生きる種族、儂なんかはもう歳は九百になる。知識については、エルフに敵う種族などおらん。ま、まあ、神を殺そうとして災害なんか起こされた日には堪らないし、直接的な助力はできないかもしれないが――」


「構わない」


 魔王はそこで、ウガラガルタの手を取った。


「ウガラガルタ。どうかお願いをするわ。もちろん、タダでとはいわない。それでも、何かわかっていることがあるのなら、教えて欲しい。私は……お父様の雪辱を果たす。三百歳になるまでには……きっと」


「お、おう……」


 その真摯な目に、どうこの外交カードを最大限活用するか考えを巡らせていたウガラガルタは、一瞬呆気にとられた。


(なんだか申し訳ないような気持ちになってしまった。こんな気持ちを抱くのはずいぶん久方ぶりって感じじゃ……いかんいかん、こうではいかん。儂は首長。エルフの首長(エルフズリーダ)。落ち着いていけ)



 会と食事はその後和やかに進んだ。

 回復した政務官が戻ってきたし、給仕をしているメイデンという姓持ちがたまにお茶を注いでいく。


 今度、自分たちの目標を話したのはウガラガルタ側だった。


 むろん、「人族世界を滅ぼしたい」とは言わない。

 だが、お互いの秘密を話すことは関係を深める重要な方法だ。ウガラガルタは躊躇なく自分たちの情報を開示した。


 「実はこうして呼び出したのには協力してほしいことがある、今はその内容を開かせないが、いろいろ教えてもらった代わりとして、自分たちがそのやりたいことを得たきっかけを聞いて欲しい」と前置きして、八十年前の話をした。


「へえ……エルフの領域に、人が」


「ああ、面白い人族だった。よく働いてなあ……結構見た目がよくて、惚れていたエルフも多かったのう」


「……それはまた。エルフはこっちでは極めて美しいということになっているのよね。外から来た、ただの人に靡くようなことがあるの?」


「まあ靡かんやつもおったな。儂もその一人じゃ。けれど……それでも……どこか放っておけん感じがした。儂は独身じゃったし今も独身じゃから、子供かなにかの代わりにしていたのかもしれん」


「ふうん、なるほど……」


 魔王は適当に相槌を打って、お茶を一口、口に含む。


「まあそういうわけでな、いろいろやることが出てきた。今の段階ではまだ話せんが、協力をお願いすることもあるかもしれん」


「別に、構わないわ。なるほど、そういうことなら話は早い。お互いに求めるものがある、それ以上に幸いなことはない」


 そして、なんでもなく放たれたリュチエグリアの次の一言で、この話し合いは捻れていく。


「まあ、じゃあ話せないことに関しては聞かないわ。



 ――ねえ、その人ってどんな人だったの?」



 ウガラガルタは大切な人族の話を深掘りされて、上機嫌に口を開いた。


「うん? うん。話そう。そうじゃなあ、とにかく真面目に勤勉な男じゃった」


 なんでもない話の始まり。

 しかし、控えていた政務官は、え、と全く予想外の顔をして、呟いた。


「男?」


「は? 何じゃユラヴァド。どうかしたか」


「いえ……いや。いや。おかしいでしょう、首長おかあさま


「何がおかしい」



「『あの人族』は、男なんかじゃなくて、――若くてかわいい女の子だったじゃないですか」




「今は仕事中ですよ、リーダ・ウガラガルタ。唐突に私を呼びつけて何がしたいんです!?」


 エルフの領域に五人いる政務官オフィアが全員並ぶ。彼女たちは行政を担当する官僚のような立ち位置だ。二百人でできている国だから五人で済む。五人で済むが、やはり仕事は多いらしく、毎日頑張っている。

 ウガラガルタとの付き合いが長いエメリル・エルフズオフィア、

 もっとも武力面で強いユラヴァド・エルフズオフィア、他三名が並ぶ。


「これは中立派に対する貸しですよ、わかっているんですか!?」


 今きゃんきゃん喚いているのは中立派の政務官クロムネルシ・エルフズオフィアだ。

 魔王の重圧に負けているのだろう、冷や汗を流しながら、ウガラガルタに八つ当たりをしてきている。

 あと、わざと外の人間の前で醜態を晒すことで、こちらに対するプレッシャーを、かけてるんだと思う多分。


「わかっておる。ただ、ほんのすこしだけ付き合ってくれ、クロム。何かあったら……中立派も前進派もなくなるかもしれん。もし何もなければ、貸しにはできんが、……何か儂手づから食事でも用意しよう。それで許してくれんか」


 クロムネルシは沈黙した。


 魔王はカップで静かに茶を飲みながらそれを見ている。


「ねえ、一旦席を外しましょうか?」


「構わない。いてくれ。それで……五人に聞きたい。儂らが……立場にもよるが、皆がそれなりに愛した『あの人族』。……どんな姿じゃったかの。一言で……教えてくれ」


「? ……わざわざ呼びつけてそんなことですか? そんなの、……」


 五人はお互いに目を合わせる。

 それを見ながらウガラガルタは願う。

 どうか、一つの答えであってくれ。

 というかユラヴァドの勘違いであってくれ。ユラヴァドが、何か酒でも飲んで常時酔っ払っていたということにさせてくれ。

 その願いは……


「老人の男でした」「若い女性です」「男傭兵?」「お婆ちゃんって感じでしたケド」「そんなの五歳くらいの少女に、」


 聞き届けられなかった。



 混乱する五人は無理やり仕事に戻した。

 他言無用を誓わせてある。


 ウガラガルタは握りつぶすくらいの強さで頭をおさえる。


「どういう……ことじゃ、これは……どういう……」


 混乱。ただそれだけがあった。

 ここに迷い込んだたった一人の人族。

 彼の願いを叶えてやるためだけに、この数十年間、頑張って動いてきた。

 今、それが根底から覆されようとしている。


「これまでこういう形でお互いの認識をすり合わせたことはなかったの?」


 魔王が問いかける。


「無い。『あの人族』で話が済んだ。儂らにとって、大切な人族は一人だけだったから」


「そう。逆に、他種族の人間からこうして指摘されることは」


「むろん無い。前進派のことなんて、一般的な人族は知りもせん」


「――つまり、ある程度エルフの内情に踏み入ることができて、その上それはそれとして最初は外様である生命体しか、今の話には気付けなかったと」


「ああ。その通りじゃ」


 考えても考えても、答えは出ない。

 『あの人族』とは、一体なんだったのか。

 よく笑い、よく食べて、魔法を使えば一発だというのに、肉だけで畑を耕していたあの男の姿は――


「ウガラガルタ、今の貴方に見せたいものがある。大学の論文検索システムから、何かの手土産になると思って持ってきたものよ」


「聞こう、魔王……」


 打ちひしがれた声で、ウガラガルタは応えた。

 もはや気力もない。けれど、目をそらすわけにはいかない。


 魔王は空間に黒い円を出現させ、その中から紙束を取り出した。

 おそらく闇属性魔法だろう。アイテムバッグのようなものか。そういえば、アイテムバッグが人族世界に流通し始めたのは二百年前の戦争以来で、魔王の「お父様」も闇属性魔法使いだったなとぼんやり思う。


「これは、――人族領域の言い方では魔力大龍だったかしら? 魔力大龍の、出没についての、千年間の記録の一部」


「魔力、大龍――」


 地図を見せてもらった。


「ほら、今もこのエルフの領域にはとてつもなく巨大な円が……」


「あ、それは大丈夫。別件じゃ。大丈夫。八十年前の地図を見せてくれ」


「? いいの? まあいいけど……それじゃあ、はい」


 そして、八十年前の地図を開く。

 「黒色魔力塊観測記録」と題された、人族大陸の地図だ。

 気力を失ったウガラガルタはゆっくりと目を通す。


(この地図、……フェイクじゃないならおかしなところだらけじゃ。人族領域全体が……まるで……星座じゃのう。大都市が全て……魔力大龍の反応になっていて、六大都市なんかは都市が全て飲み込まれておる。……この円の位置は……もっといえば、街の中心、教会……)


 そして、エルフの領域も。


「……これが……この円が……『かの人族』ってわけかや……」


「……心を強く持って、ウガラガルタ」


 八十年前のエルフの領域のある時期には、どの大都市にも負けないほどの巨大な円が現れていた。

 その巨大な円は、エルフの領域に一定期間逗留したあと、ふらふらとまたどこかに消えた。


 円の横にはこう注釈がある。

 ――「人族型黒色魔力塊」。


「貴方達の言い方だと、人型魔力大龍というところ?」


 言葉を繋ごうとするリュチエグリア。

 ウガラガルタは、答えられない。

 ぺらぺらと紙をめくり、その度に事実が自分を打ちのめす。


「同じ……同じじゃ。期間が同じ。どうがんばって頭で否定しようにも……期間が同じでどうしようも――ない。儂は……儂は……何のために……」


 今の話に全て合点がいく。

 特殊なケースで少々予想がつかないが、……エルフの領域に来たのは、おそらく人を象った魔力の泥人形だ。エルフ達がめいめいそれを、人族だと勘違いした。

 自分たちが恋するその姿を、勝手にその人形に見出したのだ。

 もちろんエルフ達側が全員幻覚を見たというのはおかしいから、そういった性質を持つ魔力大龍だったと考えるのが自然。


 時期的にはおかしくない。

 魔力大龍は魔法を使う際の魔力の残滓、魔力残滓によって生まれる。

 戦争では、大量の魔法が使用される。

 大量の魔力残滓が、より集まり、人型魔力大龍という、エルフ全員を騙し切るような強力な魔力大龍を生んだ……。


「ほ、本人に、人格はあったんじゃろうか?」


「?」


「じゃから……彼は……ほら、たまたまそういうふうな能力を持っていたというだけで、……本人の望みがあったかもしれんじゃろうが。たまたま魔力大龍として生を受けたというだけで、……人間と変わらない自我を持っていたかもしれんじゃろうが!! そうであるならば問題がなかろう! あやつは、あやつは、人の救済を願っておった! 儂らはあの人族のために……あの人族が、たとえ魔力大龍であろうと……戦争で生まれた魔力大龍であろうとも……あやつのために……努力して……願いを……」


「よくわからないけれど、『彼』と呼称するのはもうやめたほうがいい、ウガラガルタ。――自我の有無の立証ははじめから不可能よ」


 続けられた言葉に、ウガラガルタは手のひらに顔を埋めた。


 派閥闘争において、エルフを何人か秘密裏に殺した。何人か魔族領域に追放した。

 必要だと思ってやったことだけれど、あれはなんのためだったのか。

 魔力大龍。それは断じて人族ではない。何をどう頭の中で抗おうと、そんなこと、わかりきっている。

 怪物だ。ただの、怪物。


 今日この日まで、ウガラガルタは一体何のために何をしていたのか。

 まるで、熱にでも冒されていたように――。


「席を外させて頂くわ、エルフの王よ。落ち着いたら声をかけて。貴方には時間が必要。ゆっくりでいいからね」


 立ち上がりかけたリュチエグリアを、ウガラガルタは止めた。


「調停者が今の形の調停者になったのは、天と地ができてからではない。人族世界には、それに関する記録が残っておる」


「? ……!?」


「礼じゃリュチエグリア。……魔王、リュチエグリア。儂に、儂らに協力してくれ」


 絶望と屈辱に打ちのめされた精神は、一つの答えを紡ぎ出す。

 ウガラガルタは人族世界最強種の最高権力者。九百年を生き、九百年殺し、九百年エルフの脳を使って生きてきた。

 熱に浮かされてさえいなければ、本来は、この世界において、彼女に権謀で敵う存在など存在しない。


 かちかちと頭の中で、世界という盤上の駒と駒とをすり合わせ、一つの解答を導いていく。

 ここにいるのは人族世界最高峰の政治家の一人。

 だからわからないことなどない。

 理解できるパワーゲームなら理解できる。

 たとえ、この物語の、全ての解答だって――。


「どういうこと、ウガラガルタ。今の話は――」


 魔王は問いかけをしようとしたが、ウガラガルタの気迫に押され黙り込んだ。


「殺す。殺さねばならん。エルフの意志はエルフのものである。替えは効かんし効いてはならん。意志とはその生命体を定義づけるもの。故にこれは殺人に等しい。儂も責任は取らなくてはならんじゃろう。だが殺す。それより先に殺す。殺されたからには殺さなければ。もともと儂は首長でありエルフの全ては儂のものじゃ。そしてそうであるからこそ――


 最低でもこの人型魔力大龍は見つけ出して殺す。

 そして背後にいる感触がする黒幕も殺す。

 それは儂の知識では、勇者にリミッターをかけた存在と同じはずじゃ。


 殺す。

 必ず殺すッ」


 恥と屈辱でどす黒い色を帯びるウガラガルタの声。

 その声に、魔王は黙って寄り添う。

 そして。



 エルフの首長と魔王の会談の三ヶ月後、エルフと魔族の連合軍が、全人族に対して宣戦を布告した。

「あの人族」はどう見えていたか

ミズリ:タルトに似ていて少し胸が大きい少女

ラーザイン:自分を生んだエルフに似た女性

カリャンセ:歯車で動き蒸気を吹き出す機械人形

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