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5-1、困った時には助けを求めれば必ず誰かが助けてくれる1

 日が充分に昇ってから、ルトナは庭で日課のトレーニングをしつつ今後の方策を考えた。


 魔力を伸ばすには魔力をただ使えば事足りる。量、使い方は問わない。

 だが、脳が焼けるのを防ぐためには、少し事情が変わってくる。


 とはいえ別に複雑な手順とかが必要なわけではないが。

 単に、魔力を伸ばすためだけのトレーニングより、多くの魔力を使う必要があるとのことだ。


 空に向けた五本の指先から発火させて、魔力を消費する。

 これまでは小さくて普通の火力の炎だったが、今は二階に届くくらいの細長さの白い炎だ。

 魔力の総量から見れば、一秒間に消費する量はそこまででもない。

 だが、十分も燃焼させ続ければ充分だ。この火力を同程度で長時間維持するのは難しい。半分以上の消費になる。


(たった十分って感じだが、……ここまでやっても十分持つようになったのが逆にびっくりなんだよな。前は無詠唱の“劫火の肺臓”の練習で、数秒で魔力数割持ってかれてたし)


 ボヤ騒ぎになったら困るので苦情が入ったらまた別のことを考えなければいけないが、それはさておき。


 ユノの話の詳細を聞いた。

 話が正しいのなら、確かにカリャンセの家ですれ違った相手と今、やりあっている、あるいはやりあうことになりつつあることになる。


(……アコルテさんより強い可能性が高くて……でも一応どうにもならないわけじゃなくて……でも敗北する可能性がある……)


 「ギャリイ」のギャング組織が目下のところの脅威だ。

 そして、その脅威はアコルテすら手を焼く可能性が高い。


(本当の本当に確実にアコルテさんを助けるって思うんなら、俺だけの力じゃ難しい……か?)


 どうなんだろうか?

 何も情報がなく、判断がつかない。


 人族の組織にアコルテが、ましてやルトナとユノの加わったこの三人がどうこうされるとはとても思えない。

 何か……別の種族と繋がっていたりするのだろうか。


 必要なのは、情報だ。



(……チェリネ。……こういう場面で頼りになるかわからないけど。チェリネなら……)


 こういう状況で頼る相手として、まず思いついたのはチェリネ。顔が広く、確かな実力を持っている、しかしただの一冒険者。

 彼女が完全にこの問題を解決してくれるとも思っていないし、そうなればものすごい量の貸しを要求されるだろう。一生様付けで呼べとか言い出すかもしれない。


 ただ、「仕方ないな」と言いながら、ギャリイに関する基本的な情報と、この状況を打破する助言の一つくらいはくれるのではないかとそう思った。

 だって、彼女は冒険者としての先輩なのだから。


 アコルテをユノに任せ、ルトナは状況を把握し打破するべく動き出した。



 淡い色の土属性魔法使いチェリネは、ギルドのいつもの飲食スペースにいた。

 そして、ルトナを、「避けた」。


 ルトナがギルドに姿を現し次第、速攻で立ち上がって階段に向かい、二階に向かって姿を消したのだ。


(は!?)


 偶然ではない。確かに目が合った。

 理由がわからないまま、彼女を追いかけて二階に向かう。


 すると、

 チェリネは二階の階段を昇りきったところで、少しだけ薄暗い廊下の影に紛れてルトナを待っていた。


「ルトナ。声の調子を落として会話しろ。あと、ここを降りたら、大げさでも良い。『あの野郎どこ行ったんだ』と、大きめの声で呟いて頂けると助かります」


「……それって」


 チェリネは大きく溜息をついた。


「ええ。います。オマエが今回ケンカを売った相手の身内がね。たくさん。ここに。冒険者ってのはちんぴらとの相性が非常にいい仕事ですから。……昨日夜辺りからかな……今朝は特に、ルトナさんに熱烈なファンができたようで。気になってちょっと耳傾けて見たが……当たり前だが具体的な話は出てこない。何をどうトラブったんです? 結構本気みたいだぞ。向こうさんは」


 ……まだ、ケンカは売っていない。

 しかし、思い直してみれば、向こうから見れば確かにそうだ。

 向こうからしてみれば、ルトナ達二人はここまで決まっていた日数を超えてアコルテを逗留させ、放ったはずの刺客は(倒したのはアコルテだが)始末されている。


(それだって動きが速すぎる。昨日の今日じゃねえか……)「……ちょっとね。その、ア」


「あ~~~~~~!!! やめてください。って、聞いたの私やんけ……」


 チェリネはルトナの言葉を遮り、色の淡い魔女の帽子のつばで表情を隠した。


「今回は、無理です。私一人の立場で言えば、事情次第では力を貸したいんですが……私個人は別にやりあって負けても別の国に逃げればいいだけなんで。でも、ちょっと人巻き込んで来るタイプの敵はちょっと……」


「そっか……」


「はい。……私としては無事終わったら……顛末聞かせて欲しいが……私、ダッセえなぁこれ……ったく……」


 今度はルトナがチェリネの逡巡を打ち切った。


「……ああ、任せとけよ。ただ迷惑エルフ呼びはもうやめてね? で、それ差し引いてもまだ貸し1だから」


「……ハッ。軽口叩けるなら大丈夫だ。前半はわかった。後半は無理だが。……気をつけて」



「あ~、全然見つかんなかった。あのチェリネさんが力を貸してくれればって思ったんだけどな~」


 一階に降りて、ルトナはこうぼやいた。



 次に考えるのは、ミズリだ。


(ミズリ……ミズリなら……保護者ヅラしてるんだ、こういう時に何もアドバイスなしはねぇだろ)


 だが、ルトナはここで気付いた。


(こっちからミズリに連絡を取る手段は、無い……)


 そして、ミズリはもう二週間近く家に姿を現さない。



 屋根と道を飛び越えるようにして路地を走り、カリャンセの工房にたどり着く。

 入り口の扉を開け放ち、高速で侵入しながら名前を呼ぶ。


「カリャンセ! カリャンセ! いるか?」


「……ルトナ? ルトナなら別にうるさくしてもいいけど少しうるさいぞ。急ぎだとは思うんだけど、悪いが今はデカめの仕事中で……」


 カリャンセはルトナが訪問する時いつも着ているワンピースとズボンで奥から出てきた。

 汗だくで、顔に煤がついてて、手に工具を持っている。仕事中というのは嘘ではないというのはわかった。


「ごめん。ただ少しだけでいいの。ミズリとの連絡方法を持ってない?」

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