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熱砂の街と散策2

今年は書く年にするといったな? ……あれは嘘ではない!


 太陽の光が、燦燦とカイウスたちを照付け、彼はそんな日差しを片腕で隠しながら見上げた。



「暑い……」


「ん……」



 そして、ただ一言そう呟いた。


 場所はカーランバ獣王国城門前。目の前には、真っ白に輝く街並みが広がっており、人通りは驚くほどに疎らだ。


 まるでカイウスたちを警戒でもしているかのような……いや、まさしく住人たちはカイウスたちを警戒しているのだ。


 人間種の訪問という珍しい事態を。


 カイウスはフゥーと息吐くと、足を進める。



「さぁ、行きましょうかナナさん。初めての、異国の地ですよ!」


「ん。カイウス様、すごく楽しそう」


「ええ、まぁ……実はこの国来るのを滅茶苦茶楽しみにしてました。だって___」



 モフモフに包まれたいから、という言葉は突然の来訪者により遮られることとなる。


 二人の少し先の地面に二つの影が差したのだ。



「クスクスッ、人間さんは元気いっぱいだね、ティスタ?」


「うんうん、その通りだね、リウム?」


「「クスクスクスッ」」

 


 カイウスたちの目の前によく似た二人の鳥獣人の女の子が舞い降りる。


 一人は腰まで伸びた真っ赤な頭髪につり目の勝気そうな女の子。もう一人は、緑色の髪をボブカットにした垂れ目の大人しそうな女の子だ。


 双子なのか、二人ともよく似た真っ白な翼を口に翳し、楽しそうに笑っている。


 カイウスとナナはそんな二人の訪問に目を丸くするばかりだ。


  

「……」


「あら? 驚いているの? 人間さん?」


「リウム、私たちが突然すぎたんだよ」


「そうね? 確かにその通りだわティスタ。こういう時は謝ったほうが良いのかしら? でも人間さんの驚いた顔も面白いわ」


「うんうん、リウム。確かに人間さんの驚いて固まっている姿は、なかなかに見ごたえのある面白さね」



 クスクス、うふふ、と双子らしき二人の鳥獣人が無遠慮にカイウスとナナの周りを楽しそうにウロチョロする。

 

 その瞳は好奇心で輝き切っており、カイウス達もなかなか「やめてほしい」とは口に出せない。


 

「はぁはぁ、おい、人間が困っている……やめろ双子宮」


「あ、リンガードだ」


「恥ずかしがってたリンガードだ」


「「クスクスクスッ」」


「うぐぐッ……」



 そこにまた新しく、息を切らした猫獣人のリンガードが、一陣の風とともにやってくる。


 双子たちの興味が一気にカイウス達からリンガードへと移り、おちょくる様にして腕を組む彼の周りを駆けまわる。


 

「……ナナさん、これは? どういうことでしょうか? 今確かに双子宮、と聞こえたのですが」



 聞き間違いですかね? と首を傾げながらカイウスが言う。ナナもそんな彼に合わせて首を傾げて、



「たぶん……私もそう聞こえた」


「あの女の子たちがですか?」


「うん、あの女の子たちが」



 カイウスは目を窄めながら、無邪気に駆け回るザ・自由人な双子を指さす。

 

 すぐさまナナがその指をしっかり握りしめ、降ろさせた。



「カイウス様、初対面で指さすのはさすがに失礼」


「あ、はい。確かに……すみません」


「ううん。私も、驚いているから御相子」



 素直に頭を下げたカイウスに、ナナは微笑んでその手を離す。


 二人の視線の先には未だ、騒ぐ双子とあわあわと慌てた猫獣人の青年がいて、

  


「あははは、結局来た! リンガード結局来た!」


「フフフフ、やっぱり来た! リンガードやっぱり来た!」


「お、おい、人間がこっちを見て困っている。私のことはいいから、少し落ち着いてくれ、双子宮」


「えー、どうしよっか? ティスタ?」


「うーん。でもリウム考えてみて? まだ私達人間さんに挨拶してないよ?」


「ああ、本当だねティスタ! じゃあ早く済ませないとだね?」


「うんうん、早く済ませちゃおう」


「あ、まっ___」


 

 猫獣人のリンガードの手が空しく空を切った。


 双子が再び、楽しそうにしてカイウス達の元に駆け寄り、輝かしい笑顔を浮かべて羽を広げた。



「私はリウム! カーランバ獣王国王道十二宮が一人、双子宮のリウムだよ! 人間さん今日はよろしくね!」



 勝気そうな女の子がカイウスの右側からそう言えば、垂れ目の大人しそうな子がナナの左側から顔を覗かせる。



「私はティスタ。カーランバ獣王国王道十二宮が一人、双子宮のティスタだよ。 お姉ちゃん共々今日はよろしくね?」



 と、ナナと目線を合わせて言う。


 カイウスは勝気そうな女の子の勢いもあって固まってしまっているが、ナナの対応は違った。


 冷静にティスタに頷いてみせると、



「ん、よろしく」

 


 その小さな手を差し出した。


 ティスタはそんなナナを見て、数回瞬きをしたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。



「フフフ、人間さんはいい人間さんかな?」



 ティスタはそう呟きながらも迷わずその両翼でナナの手を包み込む。



「おおぉ……これはなんというフワフワ、気持ちいい」


「うんうん、ティスタの翼は綺麗で柔らかくて気持ちがいいでしょう?」


「ん、自慢するだけはある。これはすごい」


「ありがとう」 


「……」

 


 そうしてナナとティスタが女の子同士の親交を深める中、一人羨ましそうな表情をするものがいるわけでして。


(ああ、いいなぁナナさん。……でもさすがに女の子の手を羨ましげに見るのは、そこはかとない犯罪臭が漂うような……ああ、でも触りたい)


 羨ましいような、でもだめだと自分を戒めている複雑そうな表情をしたカイウスが、右手をニギニギとしていた。



「……? 私達もする? 握手?」


「……はい」



 少しの犯罪臭など何のその。首を傾げて聞いてくる女の子の提案を断るほうが失礼に当たるというものだ。


 無邪気な笑顔とともに差し出された翼を手に取る。



「あははは、人間さんと握手だ! やった、やった!」


「おっとっと……」


 

 カイウスの手も無事? リウムという勝気そうな女の子の両翼に包まれ、思いっきり何回も縦に振られことになった。


 翼の感触はとても滑らかで、肌触りが良く、フワフワとしたものだ。


(絹みたいな手触りにも思えるけど、どこか違う……やっぱり体温で温かいからかな? どこかホッとするような触り心地だ)


 一モフリストとして、どのような状況でも触り心地の分析は忘れない。例えそれが、体ごと浮かび上がりそうになっていても、多少腕が痛くともだ。


 そこに判断すべき素材がある限り、モフリストはその分析と感触を忘れないのだ。



「……おい人間、俺も別に仲良くしたいわけではないのだが護衛の任務を円滑に、効率良く済ますためだ。親交を深めておいて損はないだろう」



 リウムの上下運動の激しい握手から解放されると、今度は酷い仏頂面を浮かべた猫獣人のリンガードが、尻尾を揺らしながらカイウスへと手を差し出して来ていた。


 もちろんカイウスはその手を取るために手を差し出すわけで、



「「……(ニヤリ)」」



 そこで、キラリっとリウムとティスタの眼光が怪しく光った。


 

「よろしく、えっと……?」


「僕はリンガード。カーランバ獣王国王道十二宮が一人、人馬宮のリンガードだ……よろしくはしなくていい……最低限度の礼儀と距離を保ってくれればそれ以上は何も言わん」


 

 まさに定型文通りに必要最低限で済ませよう、というのがわかるツンツンした態度に、カイウスも心なしか残念な気分になるが、そんなリンガードの脇からひょこりと双子が顔を覗かせた。



「クスクスクス、リンガード滅茶苦茶嬉しそうだよね? 今、本当は滅茶苦茶嬉しいんだよね?」


「クスクスクス、リンガードもこの国から出たことがないからね? 初めての人間さんに興味津々なんだよ」


「ああ? そんなわけないだろ、僕はただ護衛のために来ただけだ。お前らと一緒にするな」



 リンガードはプイッとそっぽを向いてしまう。


 しかし、そこは獣人国でも人をおちょくることに掛けては一、二位を争う双子たちだ。このままでは終わらないし、終わらせない。


 双子はリンガードのある部分を指し示すと、声を揃って言った。



「「だってリンガード? 尻尾が、ちぎれそうだよ?」」


「なッ、そ、そんなことないだろ!!」



 そんなことがない。ということがない。彼の尻尾は先ほどからはち切れんばかりに左右に動いていた。


 双子が、みるみる顔を真っ赤にしていくリンガードに追い打ちをかける。



「「うんうん、めっちゃ動いてる……可愛い」」 



 尻尾を見せないように隠そうとするも左右に双子がいるためか、うまく隠せない。 

 

 首を振って、とうとう、どうにもならないと悟ったリンガードとカイウスの視線が交差する。



「良い尻尾ですね!」


「や、止めろ、み、みるなぁァァァァァァ!!!!」



 親指を立てながら言ったカイウスの言葉に、リンガードの悲痛な声が暑い街中に木霊する。



「あはははは」


「フフフフッ」



 それに呼応するようにして二人のよく似た女の子の楽しそうな声も一緒に響くのだった。


*注意* 新作の宣伝に入ります、ご興味がある方以外は読み飛ばしてもらって構いません。こういった行為が嫌いな方々、本当に申し訳ないです。


 

 さて後書きです。

 今年は、辺境貴族を含め約三本の連載作品で進めていこうと思っております。


 一つは先日もご紹介した『天剣の担い手』ですね。この作品は自分自身が書きたいと思っているので、多分ポイントが付かなくても、妄想を書き殴って続けていきます。


 では今回は、もう一つの作品を紹介させてください。お願いします。

 今回は、


『天使に授けられた力で異世界無双~転生先は最高に楽しい~』です。


 できるだけストレスフリーに進めて行きたい作品になっていますが、一話目が鬼門です。長いです。


 この作品は主人公が少し変人という設定で、普通の人とは違う言動や行動をしながら、異世界を満喫するお話です。


 言うなればそう、『主人公最強』ものですね! 


 今は悪役令嬢物がなろうのトレンドとして受けてますが、何をとち狂ったか、あえてそこには触れずに、使い古された感のある王道物で行こうと思います。悪役令嬢物はね、あれヤバい、一回嵌ると全部見たくなる。めっちゃ好き。

 

 (あんなの私には到底……できないとは言わないでおく。きっと成長するって信じてる)


 ということで長くなりましたが後書きを終えようと思います。気になった方は是非、後書き後に小さくありますリンク先からお飛びいただけると嬉しいです


 ついでに、宣伝しても『天剣の担い手』は残念ながらランキング下部を掠めて沈みました。でも僕の妄想はまだまだ続きます。


 これからも皆さん、どうぞよろしくお願いします。


追記 今年の新作の宣伝は、たぶんこれで最後。

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― 新着の感想 ―
[一言] 途中で作品を放り出すのは如何なものかと。 作者様の身に何かがおきたのなら仕方ないですが、途中で投げ出す作品が多すぎる。 作品を楽しみにしている読者の為にも完結すべきかと存じます
[一言] 続きいつまでも待ってます
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