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魔王の元とお土産と

二万ポイント、九千ブックマーク達成。


感謝いたします、読んでくださる方のためにも頑張らねば。


では本編をどうぞ


「やぁ。昨日ぶりだね」


転移した先にいるのは、もちろん第三魔王。


昨日と同じような怒気は感じられない、陽気で、掴みどころのない魔王がそこにいる。


カイウスはいきなり目の前に現れた魔王に、一瞬驚くが、すぐに丁寧な挨拶を試みる。


「魔王様、先日は大変御迷惑をおかけしました」


「リッキーでいいよ。君のことは他の人族より、結構気に入ってるんだよね。フフッ、何て言ったって、君みたいな歳でここまで来れたのは初の事だからね、ここ数百年では一番楽しい時間だよ」


「気に入っていただけて何よりです、リッキー様」


カイウスは、陽気な態度の魔王相手に少しの安堵を覚えたが、決して気を緩めたりはしない。


なんせ、昨日感じた魔王の存在感は決して忘れられるものではなく、カイウスの警戒心はこれ以上ないくらいに上がりまくりだ。


ちょっとの安堵ではまだまだカイウスは油断しないし、できない。


「ん~~~、昨日は怖がらせ過ぎたみたいだね? 君の心からドンドン僕を警戒する感情が流れてくる。ププッ、あまりに警戒し過ぎて一周回りそうな感じだね?」


「‥‥‥!?」


「あ、今度は驚愕かな? あ~~~、とっても楽しいな。君ってこんなにもたくさんの感情が渦巻いてるんだね、一段と興味が出て来たよ」


ケラケラと心底楽しそうに笑う魔王の姿に、カイウスはそれどころではなかった。


彼の感情がまるで読まれているかのように、ズバズバと当てられる。


そのことに少しの恐怖と畏怖を覚えた。


「あ~あ、怖くない怖くない。僕は敵対者には決して容赦しないけど、君みたいな子には人畜無害な存在だよ。何て言ったって、ここ数百年は戦争だって起こしたことないし、喧嘩すらしたことない。安心安全で健全な魔王だよ、それに、所詮は兼業で、副業のようなもんさ、魔王なんてね」


安心安全で健全な魔王? そんな魔王が存在するはずがない。


第三魔王の逸話は相当な数がある。


なんせ、数千年の時を生きた最古参の魔王の一人だ。


ヤンチャした時代もあっただろう、その中で、最も新しいのが約百年とちょっと前の話。


『第九魔王の消滅』事件だ。


第九魔王は物語にあるような、傲慢で、排他的で、人族殲滅主義者な魔王。


その第九魔王はこの世界では考え知らずで有名で、あらゆるところに戦争をフッ掛けては、略奪、拷問、虐殺など様々な非道を働いていた。


それがあるときから、急にいなくなった。


その根城と共に。


__彼の魔王は、死の森に手を出した


__彼の魔王は、戻ってこない、それどころかあの立派な根城が消え去るのを見た。


__彼の魔王は、第三魔王の怒りを買ったのだ。



この世界に住む、全ての者達が噂し、真偽のほどを確かめたが、出てくるのは魔の森に向かった第九魔王を見たという者だけだった。


__魔王様は傲慢で、鬼畜で、どうしようもない方でした。そんな方でしたが不思議と惹きつけられるものがあり、仕えていました。しかし、あの日の判断には承服しかねるものがあった。『俺が他の魔王連中を倒して、魔王の王、大魔王になってやるぜ。そのための手始めは、腰抜け魔王の第三のとこが良いな』そうおっしゃって出て行ったきり、第九魔王様は戻って来ません。なぜ第三魔王様の事を腰抜けに思ったのか、なぜ根城が消えたのか、それは私にはわかりません。分かりませんが、ただ一つ言えることがあるのならば、第三魔王様に手を出すのはやめたほうが良い。それ以外にはありません。第九魔王様は根城だけで済みましたが、他の方々はどうなるか‥‥‥どこかの国が消えてなくならないことを私は心の底から祈っております。


これはある老紳士の言葉だ。


第三魔王を語る上では決して外せない、そんな言葉。


この言葉が出回って以降、表面上探っていた国々も、その他の様々な組織、商会も、全てが探りの手を止め、一つの触れてはいけない存在が誕生する。


それが大樹の森であり、第三魔王と言う存在。


カイウスは今、その存在に触れてしまった。


「ん~~、じゃ、君の恐怖心を取り除くためにちょっと大樹の中にでも行こうか?」


「はい?」


「じゃ、行こう」


小さい妖精に引っ張られながら、カイウスは大樹の中へとヌメッと入って行った。


これが第三魔王という、触れてはいけない存在の一端だった。












「あ~~~~、ここに人、いや、他の生き物を入れたのは何百年ぶりだろう? 正直暇すぎて忘れてしまったよ」


「は、はいッ。光栄に思います魔王様ッッ」


「いや、リッキーでいいって。それにそんな畏まらないで、自然に自然に。怖くないから、ね?」


「はい‥‥‥」


カイウスは触れてしまったのだ、この世界で規格外な存在。その一端に。


彼が今いるのは、ある城の中。


カイウスが行ったことのある城、モーリタニア城より何倍も大きく、豪華絢爛であり、何より汚れというものが感じられない。


そんな城の一室にカイウスと第三魔王はいた。


「ここが僕の最近のコレクションの一つだよ。綺麗で大きくて、見ていて飽きなかったから貰ったんだ。あ、後、魔王の剥製っていうすっごく珍しいのがあるんだよね。頭は空っぽみたいなやつだったけど、なかなか毛並みだったりは綺麗でね、血とか魔力とかを大樹に吸い取らせて、めちゃくちゃ良いのが出来たんだよ」


「!!!!!!」


カイウスは叫びたがっている。


しかし、声が出ない。


一端どころか、ずっぽし腰辺りまで掴まれているのかもしれない、この魔王に。


カイウスの目の前には今、百年前、第九魔王と言われた存在が剥製としてあった。


金色の美しい毛並みに、口から生えたすべてを噛み砕かんばかりに尖った牙、鋼鉄の様な強靭な四肢、そして剥製であっても衰えぬその存在感。


紛れもない、この存在は魔王と呼ばれただけの圧倒的な何かがある。


カイウスにはそう思えた。


「僕は妖精型の魔王で、こいつは確か‥‥‥獣、獣神型魔王だって呼ばれてたなぁ。獣人とかはこの魔王を良く恥だなんだと言って、討伐しようとしてたみたいだけど、普通の奴らには無理だったろうね。なんせ、なかなかすばしっこくてね、僕も無傷で捕まえるのには苦労したよ」


その剥製を前にして、第三魔王は苦笑いを浮かべながら、その時の苦労話を言って聞かせてくる。


‥‥‥‥‥‥。


この世界で圧倒的強者である魔王を前にして、その存在を敢て無傷で捕らえ、剥製にして、その者の根城で飾る。


ここは何処かの博物館か何か? 


きっとそうだ、そうに違いない。


カイウスは一旦、そう言うことで納得することにした。


「ね? すっごくいい事だったでしょう? 魔王の剥製何て、世界中探してもここにしかないよ? 良かったね、これで一生自慢できるやッ!!」


そう言って隣に並ぶ魔王様は、純粋な笑顔と共にカイウスにサムズアップしてくる。


その笑顔には達成感があり、心から良い事をした、そういう思いが伝わって来た。


もちろんカイウスも緊張しながらサムズアップ返しを行う。


「ん~~~、まだまだ緊張してるね。もっと見て行く? あと数千種類くらいコレクションしてるからさ。そのどれかに君を満足させるものがあるかもね‥‥‥」


「結構ですッ!! 大変お世話になりました。もうそろそろ帰ろうかと、本来、今日は挨拶だけの予定でしたので」


「そう? 無理に引き留めても悪いし、君ならまだまだここに来るだろうしね。分かった。少し早いけど、大樹から出ようか。そうしないと転移魔法は使えないからね」


「ありがとうございますッ」


カイウスの頭の中は今にもパンクしそうであった。


なんせここはあの大樹の中なのだ。


大樹の中に城一つ、その他コレクション数千種類を詰め込んで保管しているらしい。


魔王とはつくづく規格外、自分と言う存在がちっぽけに見えるカイウスなのであった。



その後、カイウスと第三魔王は、ヌメッと入るときと同じように大樹から出てくる。


この大樹は一体全体どうなっているのだろうか、全くもって不思議だ。


確かに大樹の大きさは半端ではないが、この中に城が収まりきるとは到底思えない。


「ふぅ、いいことはしっかりできたね。次は君にご褒美をあげなくちゃ」


「ご褒美ですか?」


そんなカイウスの疑問をスパッと切るかのように、魔王は、次の話題に移っていく。


「そっ、ご褒美だよ? ちゃんと一人の力でここまで来たからね、僕、約束は守る方なんだ‥‥‥と言うことではいッ、この謎の大きな卵を授けようじゃないか!!」


魔王が出したのは、それはもう大きな卵。


ダチョウの卵とか、そんなレベルではない。


カイウスの身長と同じくらい、大きな卵だ。


「はぁ。この卵何の卵かは‥‥‥」


「知らないね」


「どこにあったのかは‥‥‥」


「落ちて来たんだよ!!」


「心当たりは‥‥‥」


「あり過ぎて何なのかわかんなくて‥‥‥えへへへ」


一応この卵か何なのか、その手がかりを探ってみたが、結果はこの通り。



『何・も・分・か・ら・な・い』



それがこの魔王から引き出せた、謎の卵の情報。


(正直、置いて行きたい。すっごくいらない。けど‥‥‥)


「魔王様、ありがとうございます。大切に育てますね」


「うん、君ならそう言うと思った!! 孵ったら何だったのか教えてね!!」


「もちろん、一番初めに魔王様にお知らせに来ますとも」


「よろしく!!」


こうして、カイウスは魔王に挨拶に来ただけなのに、謎の巨大卵と、各国が今ですら情報を集めている第九魔王の真実を知るのだった。







「カイウス様、それ、何? おおっ、とても大きい。‥‥‥卵?」


「ナナさん。ええ、さっき魔の森で拾って来たので、ここに置いておこうかな、と。さすがに父様にこれ以上負担を掛けるわけにはいきませんから」


「カイウス様、なんだか今日、疲れてる?」


「ええ、少々疲れてますね‥‥‥少し休ませてもらってもいいですか?」」


「分かった、ここに来るといい」


「‥‥‥」


「さぁ、来る」



カイウスが転移した場所は、今までは子供たちが出入りしていた広場の地下。


今はもう、ナナ以外はここを使っている者はいない。


子供とは常に一か所にいるわけではないのだ、たくさんの場所といろいろな方法で、伸び伸びと遊ぶ。


それが子供というもの。


カイウスがここに卵を持ってきたのは、誰にも迷惑を掛けず、安全な場所の心当たりがここしかなかったから。


しかし一人だけ、しっかりと将来を見据え、魔法の練習に励んでいる努力家がいた。


「『膝枕は男にとって至高だ』とお父さんから聞いた。さぁ、来る」


「‥‥‥」


あまり表情の変わらない彼女から、言い知れぬ威圧プレッシャーを感じたカイウスは、素直に彼女の提案に甘えることにした。


別にいい機会だ、なんてことは思っていない。


もし、本当にそう思っているのだとしたら、カイウスは立派な紳士として名を馳せることとなるだろう。


ただ本当に疲れた、それだけだ。



「勝利」



ナナは、自分の膝の上に収まったカイウスの頭の上で、嬉しそうにVサインを作るのだった。




『 ん、ウェルカム。私の膝は特等席』

        BY 本日唯一の勝利者


更新大変遅れました。申し訳ないです。


たまにこうして二日三日開くと思いますが、今後ともよろしくお願い致します。


百話目指して頑張りますッ!!


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