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気づいたこと

日刊一位ありがとうございました。大変嬉しかったです。


正直、あとは落ちていくだけなので気楽に書くことができます。


では、本編をどうぞ


ブラッティーベアとの契約が無事終わり、カイウスは現在、ブラッティーベアの長と共にある場所にいた。


「おお、これがブラッティーベアの子供たちか。まずいな、可愛すぎる」 


「「「「「クアァァ」」」」」


「‥‥‥天使か」


それは北の森にあるブラッティーベアの巣。


巣というより子育ての場と言ったところか、そこにカイウスはお邪魔していた。


カイウスが案内され、まず目にしたのは、小さな小さなブラッティーベアの子供達。


その子供たちは見知らぬ者が来たことにより、その者を威嚇するかのように立ち上がり、立ち上がれずを何回も繰り返す。


そこにはなんとも微笑ましい姿があった。


彼はそのうちの一体の元へと近づき、抱き上げる。


「クラァァァ」


「失礼するね…‥‥」


カイウスは一言いうと、その後はただ無言で撫で続ける。


その子は始め、少し嫌がるように身を背けたりしていたが、その動きも段々無くなっていった。


「ク、クラァァゥゥ」


「‥‥‥」


「ク、クラァァァ」


「‥‥‥」


「クァッ」


「ふぅ、ありがとう。だいぶ癒されたよ。ほら、仲間の元へお戻り」


撫で終わったカイウスの表情はとても優しく、満足感溢れたものだった。


降ろされ、解放されたブラッティーベアの子供は、すぐに仲間の元へと戻ると思いきや、その場からなかなか動こうとしない。



「カプッ」



それどころか立ち上がった彼の足にしがみ付き、甘噛みまでする始末。


『もっと構え、撫でろ』


そのブラッティーベアの子供が示す行動の意味は、きっとこういう意味に違いない。   


カイウスはその行動を茫然と眺め、ニヤッと笑い、再び抱き上げる。


抱き上げられたブラッティーベアの子供は、今度は嫌がらずに彼の撫でを受け入れ、自ら撫でて欲しい場所まで要求する。


「「「「「クラァァァァァ」」」」」


その光景を見ていた他のブラッティーベアの子供たちも、おぼつかない足取りでカイウスの元へ来ると先ほど降ろした子と同じ行動をしだす。


少し撫でて帰ろうと思っていたカイウスが解放されたのは、それから数時間後の日が落ちかけた夕方のことであった。







「やぁ、君。なかなか面白そうなことをやってるじゃないか」


ブラッティーベアの子供たちから解放されたカイウスが、転移魔法で帰ろうとした時、唐突に話しかけて来る存在が現れた。


その存在は大人の両手を合わせたようなサイズでありながら、この場で最も強大な存在感を放っている者。


「この数か月、僕のとこに来ようと思えば来れたよね? せっかくお願いを聞いてあげるってこの僕が言ったのに、君は本当におかしな子だよ」


淡い光を放つその存在は、カイウスの周りを飛び回りながら楽しそうに語って来る。


「あまりにも楽しそうなことをやってたから、もう僕から来ちゃったや」


”第三魔王”


この森の主にして、かの賢者ですら足下にも及ばない存在がカイウスの目の前にいた。


「第三魔王様。もう少ししたら赴こうと考えていたところでございまして、ご機嫌を損ねていたら大変申し訳ありません」


はっきり言うと、最近のカイウスは少し暴走気味だっただろう。


動物、魔物好きのカイウスにとって、ポロロと別れた時のことは大きなショックであり、久しぶりに再会した時に今までの反動が出てしまった、と言わざるを得ない。


しかし何事もやり過ぎは良くない。


彼はもっと、じっくりやっていけばいいのである。


それこそが今世での目的なのだから。


目の前に本当に危険な存在が現れることにより、彼の頭は急激に冷えて行く。


モフモフ、モフモフし過ぎた。


そのせいで、一番に挨拶しなければいけなかった存在の事をあっさり忘れていたのだ。



__ここは本来、誰の土地だ?


__一番偉い者は誰だ?


__その存在に挨拶は済ましたか?



挨拶というものは何事においても一番大事な事柄だろう。


これが出来なければ、まず人として疑わなければならない。


そしてそれが相手の私有地に乗り込むことなら、尚更気をつけねばならぬことだ。


今までのカイウスは完全に浮かれていた。


いや、この世界に来た時からそうであったのだろう。


神という存在に会い、良い環境に置かれ、甘えさせてくれる家族、使用人達に囲まれる。


劣悪な環境でしかなかった前世からは、考えられないような幸せにどこまでも甘えていたのだ。


それは、前世の木村 竜太の時では決してとらないであろう数々の行為。


どこまで行っても身勝手で、我儘な行為だ。


「はははは、良いんだよ。僕も楽しませてもらったからね。この森にある木たち、これは全部僕であって僕じゃない者達だから、ほんの少しお願いしたら君の行動を全部教えてくれたよ」


「この森、全部」


「うん? ああ、知らなかったね君は。でも、今知ったから問題ないよね? ここは僕であって僕でない場所なのさ。ププッ、やっぱり人間の驚いた顔は何回見ても面白いね」 


目の前の魔王が、それを暗に教えてくれた。


祖父と会った時は決してここまでの存在感はなく、気軽に話しやすそうな雰囲気を醸し出していた魔王も、今は怒っているかのように彼の前に浮かんでいるのだ。


いや、正直、立っているのもままならないほどの怒気を感じる。


「まぁ、その中でも君のスキルについてはすごく興味深かった。もしそのスキルで、この森の者達を変なことに使ったら…‥僕は決して許さないよ?」


魔王の最後の言葉に込められた威圧により、カイウスは一段と頭を冷やしていく。


ゆったりとした人生を送るつもりが、このまま行けば前世と同じ、何かに追われるような人生になっていたかもしれない。それではだめだ。


まだ引き返せる、そう冷静に考えたカイウスはもう一度自らの心を戒める。


「はい、肝に銘じておきます、魔王様」


「そう、ならいいや。君、帰るとこだったんだろ? 釘は差しといたからね、もういいよ? あと、今度来る時があったら僕の元を訪れるといい、これすごくお勧めだから」  


「是非、そうさせていただきます」


いい機会だったのだろう。


ここで冷静になれたことは、とてもよかったに違いない。


カイウスはその日、転移魔法で屋敷に帰ると、まず父親の元へと赴くのだった。







なぜカイウスが父親の元に向かったのか、それは彼が冷静になれたからこそ気付けたことがあったからだ。


「うん? カイ、どうしたんだい? この書類が終わったら聞いてあげるから少し待っててね」


「‥‥‥父様。手伝います」


「そうかい? ならこの書類の計算を頼むよ。優秀なカイウスにならきっとできるに違いないからね。あとでちゃんと確認するからやりたい様にやるといい」


「はい、父様」


前回みたいに屋敷の執務室に無断で転移するのではなく、しっかりノックをし、名前を言って入っていく。


部屋の中は、所狭しと積まれた書類に、穏やかな笑みで彼を迎える父の姿。


カイウスはその穏やかな父に近寄り、俯き加減で書類の束を手に取る。


「…‥‥」


「…‥‥」


入って少しの間、室内は書類と格闘するカイウスと、父の作業音で支配され、少しの沈黙に包まれる。


そんな中、時折カイウスが何か言いだそうとしては、口をつぐみを繰り返しているのだが、室内は無言のままだ。


「カイウス、何か言いにくいことがありそうだね。父さんなら何でも相談に乗ってあげるから、ゆっくりと落ち着いて話すと良い」


書類仕事をしながらでもその光景を見ていた父が、カイウスの手助けを行う。


「父様‥‥‥」


「僕は君の味方だ。何があっても君の敵にはならないよ。‥‥まぁ、父親としては少し情けないだろうけど、頼ってくれると嬉しいかな」


笑顔で優しくそう言う父。


カイウスがここに来たのは今まで大切に、温かく接してくれた父に言いたいことがあったからだ。


「父様、ありがとうございます。こんな我儘で嫌悪感しか感じないような子供でも、あなたはそうやって優しく接してくれる。私は、そんなあなたに何をお返しすればいいのか分からない。どこまで行っても我儘だった俺を…‥‥どうか、許してほしい」 


「え? か、カイウス? 何か熱でもあるのかい? それとも新手の嫌がらせ? さすがにこれが僕に対する嫌がらせだったら…‥泣くよ? ベットの上を洪水にするくらいには泣くからね?」


小さいその両の拳をこれでもかというほど握りしめ、俯き加減に下唇を噛み、カイウスは震えながら彼の父に頭を下げる。


万感の思いと誠心誠意感謝の気持ちが込められた、カイウスのその姿に。


父は困惑し、手に持っていた書類をその場に慌てて置く。


「新手の嫌がらせ‥‥‥今までの私だったらそうでしょうね。父様、私は気づいたのです。あなたの全てを包み込むようなその優しさに、その強さに。私はようやく気付けたのです」


「いやッ、ちょっと待って。まだ、レイヤからもそう言ったこと言われてないのに‥‥‥いったいどうしたのカイウス? 本当は今日、疲れているんだろう? ほらほら、後は父さんがやっておくから、部屋にお戻り」


そう言って父は頭を下げているカイウスを抱き上げると、執務室の出口までゆっくりと運んでいく。


「…‥‥今日は感謝の気持ちしか伝えられませんでしたが、決してこれだけでは終わらせません。父様、あなたの優しさに絶対報いて見せます」


「はいはい、わかったよ。‥‥‥じゃあゆっくり休むんだよ」


「ありがとうございます」


そう言って執務室の扉はゆっくりと閉められる。


執務室の外には扉に綺麗にお辞儀をするカイウス。


執務室の中には息子が出て行って、不思議な安堵を感じている父。


カイウスの恩返しはここから始めるようだ。








カイウスが去った執務室。


そこには二つの影があった。


一つはもちろん彼の父、もう一つは‥‥‥。


「さて、スフィア。何があったのか報告を聞かせてくれるね?」


「ううぅぅぅぅ、三男様。ズルゥゥ、ご立派に成長なされた。まさか齢6になるかというところで、旦那様の素晴らしさに気づくとは、このスヒィア感動です…‥ウウゥゥゥゥ」


「はぁ、家の使用人はこうなると使い物にならないからなぁ。落ち着くまで待つしかないか」


カイウスの父は『それにしても』と思う。


父は執務室で四つん這いになった、影から守る系ガチムチエルフを眺めながら、自らの目頭を押さえる。


「なんだろう、この、息子に認められた感。人一倍苦労すると思ってたのに、少し拍子抜けしたのかもしれないな。でも、一つ疑問を言うなら…‥‥五歳って早くないか?」


その父の疑問は、不思議と執務室に響いたという。






『明日の飯は?』

BY腹ペコペット


今回の回から少しモフモフからは遠ざかろうと思います。

決して無くなりはしませんので、モフモフを期待している方はご安心ください。


少し悩んだ結果、送り出したこの回ですが、軌道修正はできているでしょうか?


次回からは人と関わっていくようにしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。


後タイトルの変更考えていることをここに記しておきます。


長文失礼しました。

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