表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/73

大樹の森と契約スキル


昨日、アクセス数がすごかったので見て見たら

日刊ランキングの最後の方に引っ掛かってました。


なんというか、大変感謝。その一言です。






”魔の森、死の森、不帰の森”


他にも数々の名称で呼ばれるその場所は、実はどれも正式な名称ではない。


その場所の正式名称、それは”大樹の森”。


その森は通常の倍近い太さの木々が並び、中央には”世界樹”にも届くかのような巨大な大樹が生える、まさに名称の通り、大樹が犇めく自然豊かな場所だ。


しかしこの場所は、この世界全ての国々から超級危険地帯に指定されている。


この森はただの自然豊かな森などではなく、あまりに危険な場所だと、世界全てに認識されているのだ。




それもそのはず。


この森に今まで挑んだ国、人は数知れず。多くの国々が、人々が、その森を焼き払い、切り倒し、抉り取ろうとした。


彼らは危害を加えたのだ、放って置けばただの森だったはずのこの場所に。


ある国は他国の侵略と重要拠点の制圧のため、ある国はただ名声を求め、ある国は志高く、その森に住まうと言われる宿敵を倒さんがため。


それぞれの欲が、それぞれの理由が、その森に牙を向き蹂躙しようとした。


その選択こそ、自らの身に死をもたらすことになるとは知らずに。


彼らは道なき道を進んでいったのだ。



北、南、東、西。



まず彼らはそれぞれ、その森の入り口から攻略を始め、森の中央へと迫っていく。


その進み方はそれぞれで、焼こうが、切り倒そうが、そのまま進もうが、何でもありだ。


彼らは森の表層と言われる場所までは難なく進めた、だがある一定の所からは全く進めなくなってしまう。


それはそれぞれの方角にいる主、と呼ばれる存在と対峙するため。


その存在の縄張りに入ると一変する雰囲気に、彼らは本能で理解したのだここからが本番だと。


しかし入ってはいけなかった、入ってからでは遅いのだ。


もう逃れられはしない。


その存在達からは絶対に逃れられない、入れば最後、死を意味する。


そういった存在達がこの森を東西南北に四分割、統治していたのだから。


__北にはその強靭な肉体と巨大な体躯で圧倒する、ブラティーベア


__南にはその圧倒的耐性と数の暴力で君臨する、ディザスタースライム


__東にはその機動性と得意な集団戦で蹂躙する、ヘルウルフ


__西にはそのズル賢さと得意な罠で殺戮する、デススパイダー


その主達の前に、彼らの牙は抜かれ、名誉は地獄の底に失墜し、志は半ばなどで折れるのではなく、根っこからごっそり引き抜かれてしまった。


それでも、中央にたどり着いた者は数少ないながらいた。

その者は強者だったのかもしれないし、ただ運が良かっただけの者かもしれない。


ただ、その者ことで言えることがあるとするならば、それはその者が自らの判断をこれ以上ないくらい後悔したこと、それだけだ。


その者の目の前には魔王が立つのだ。


この世界で十しか存在しない、何物にも縛られない絶対的な強者が目の前に現れる。


”第三魔王”


この世界で三番目に確認された魔王であり、大樹の精霊でもある存在。


その者の目の前にはそう言った存在が現れるのだ、強烈な敵意と共に。



前方に魔王がいて、後方合わせた東西南北それぞれには化け物のオンパレード。


その者は絶望に打ちひしがれながら、この世から消え去った。


それ以外の選択肢などなかったかのように。



以上の事からこの森は第一級を超えた超級危険地帯に世界各国が指定し、今では誰も手を出してない。


人間にとってここは大樹の森というより、魔の森、死の森、不帰の森と言った方が印象が深く、そう言った恐ろしい言葉を選んだのは、後世に同じ失敗をさせないための最低限の処置だったに違いない。


ここは大樹の森。

魔王がいて、四方には強大な主が潜む魔境の地。


世界中から危険視されるその地に、今。


一人のノムストルが舞い降りるのだった。





ヘルウルフのポロロ。


その背に乗せられた彼、カイウス=ノムストルは現在…‥‥‥‥天国にいた。


人類にとっての超級危険地帯であり、人類にとっての凶敵が数多くいるこの場所。


カイウスはそんなところに連れられてきたにもかかわらず、そう思うほどの幸福な場所にいた。


「「「クゥ~~ン」」」


「ははは、そんなに舐めるなよ、このこの」


「「「キャウ、キャッウ」」」


「おっと、君たちの親からお守を任せられてるんだ、そう簡単に逃がさないぞ」


「「「「ウゥ~~~~~、キャンッ」」」


「‥‥‥‥‥‥ああ、幸せ」


穴倉の様な場所に数十頭の子犬の様な狼たち。


カイウスは現在、モフモフに囲まれ、これ以上ない癒しの空間を満喫していた。


「ここは良い、とても良い所だ。‥‥‥‥‥‥‥‥もう住もうかな?」


こんなことを口ずさむほどの余裕があり、いきなり連れていかれたことなどどうでも良くなるくらいには気分が良く、落ち着いている。


カイウスがこうなったのはどうしてか。


それを知るためには、ここに連れてこられた時まで遡ることになる。


さぁ、行ってみようか。彼の数時間前の過去へ。





カイウスを背に乗せたポロロの行き先は、彼の予想通り魔の森であった。

いや、ここは大樹の森と言うべきだろう。


ポロロは大樹の森へと入ると、少し開けた場所で彼を下した。


「やっぱりか。おじい様の言う通り、ポロロは群れに戻っていたんだな」


「ウォン」


魔法訓練を終えたカイウスがおじい様から聞かされたポロロの居場所。


それはなんてことはない、大樹の森であった。


『ポロロは長に連なる子供じゃろうな、でないと幼生体でブラティーベアとは戦えておらんよ』


『そう、なのですか』


『力のある子供まで駆り出すほど、ヘルウルフが縄張り争いに負けているのじゃよ。賢いポロロは、その現状を知っていたはずじゃ、あの良い子が群れの窮地にじっとしていられるとでも思うか?』


『いえ、必ず救いに行ったでしょう』


『そういう事だ。お主もポロロの意思を尊重してやるといい。もし、あの子が戻って来た時に存分に力になってやればよい、いいな?』


『わかりましたおじい様。その時のためにより一層鍛錬と魔法の研鑽に努めます』


『いや、別にワシそこまで言ってない‥‥‥‥‥‥‥』


『おじい様、今何か言いましたか?』


『その意気じゃ、孫よ』


『はい』



という会話が二か月前の話、もちろんこのことは一家全員も知っている事だ。


だから、ヘルウルフが攻めてきたと知っても誰も慌てず、それどころか一家、使用人総出で確認に出る始末。


もはやあの時、誰も武器を持ってすらいなかった…‥‥‥‥父を除いて。


「そうか、俺を頼ってくるってことは‥‥‥‥‥相当厳しいんだな群れの状況が」


「…‥‥‥‥くぅん」


「大丈夫。約束したろ、あの時。俺はお前を助ける。その言葉に嘘はないよ」


「ウォン、ウォン」


「ははは、くすぐったいから止めろって」


カイウスが救うのは決してその時だけではない。


救うと決めたなら最初から最後まで、ゆりかごから墓場までがカイウス、前世の木村竜太のデフォルトだ。


その時だけ救うだなんて、一社会人、元日本の社畜としては決して許されません。


アフターケアまで行い、残業万歳と三唱する。


それができないなら最初からしない、そのくらいの覚悟と情熱で助ける。


責任とはそういうものだ。



__グルゥゥゥゥゥゥッッッ


「ポロロ? ‥‥‥‥‥‥‥これは」 


カイウスが一通りポロロとの絆を確認した時、その開けた場所に一頭のヘルウルフが現れる。


彼の周りいるポロロや少し離れたところから覗っているヘルウルフたちとは明らかに違うその個体。


その個体は少しずつ悠然と彼の元へと迫っていた。


「長、か。ここまで大きいとは。これは敬語だな。あはははは」


「‥‥‥‥‥」


カイウスのそんな呟きはお構いなしに、ヘルウルフの長であろう個体は彼に近づき、彼の体全体を満遍なく嗅ぎ始めた。


「確認している? 一体何を…‥‥‥」


「グゥウォン」


「へ? いや、ちょっと汚い、でもまぁいいかな、結構触り心地良いから」


匂いを一通り嗅いだ後はカイウスの体に自らの体をこすり始める長。


長の体は所々が汚れており、傷の跡もある。


そんな歴戦の戦士の様な体躯を誇る長に気に入られたと思えば、少し汚れるくらいが何だ、モフリストとしてこの最大のチャンスを生かさないわけがない。


それから数分、カイウスは長の体を満遍なくモフり、長を快楽モフリの虜にして見せた。


もはや神業と言っていいその速度に周りのヘルウルフたちは驚愕している。


彼らの前にはモフリに逆らえない、見たことない長の姿があるのだ。


驚かないはずないだろう、もちろんポロロも驚いている。


「ああ、ここかな? ここだろ? ポロロと同じところが弱いなんて、さすが親子だな」


「クゥン…‥‥ウォンッ」


「お? 抵抗するか、ならば勝負だ‥‥‥‥‥‥せっかくだしスキル使ってみようかな」


「グルゥ?」


「契約、発動」

               

今まではどうしても条件に合わなかったため、カイウスがこのスキルを使うのは初めてのことだった。


彼が考えた、このスキル発動の条件。


それは三つある。


まず第一にどちらも利益があるときに使う事。


要するに、ウィン_ウィンの契約を結ぶこと。


次に、出来る限り不特定多数の人がいる場所では使わないこと。


このスキルは一度結んでしまえば非常に強力な物、利用しようとするものが必ず出てくるに違いない。


それを回避するためのリスクマネージメントは取っておくに越したことはない。


最後に、出来る限り自分の目的以外の事のために使わないこと。


それだけ。


この目的とはスローライフのことであり、モフモフの理想郷を作ることでもある。


今回使用に踏み切ったのは最後の部分によるところが非常に大きい、というか絶対にヘルウルフを掌握する気満々でこのスキルを使っている。


このスキルがどんなものかは覚えているし、使い方も知っている。


後はこのヘルウルフを堕として、モフモフ契約を結ぶだけ。 


カイウスはモフモフして気持ちいい、相手はされて気持ちいい。


なんと、ウィン_ウィンな関係はすでに形成されているではないか、後はそれを契約にするだけ。


カイウスの手元に少し分厚い辞書が現れ、彼はそれを適当に開く。


もちろんその中身は真っ白、白紙だ。


これから綺麗にびっしり埋まっていく予定だが。


その後、快楽モフリに耐えられなかった長へと契約スキルを発動する。


「ヘルウルフの長と私、カイウスは以下の契約を結ぶ」


二人の契約者の元へと、それぞれ一枚ずつ紙が飛んでいき、彼らの思念が紙に綴られていく。


__カイウスはヘルウルフに対するモフモフ権を有し、その権利が保障される限り、カイウスはヘルウルフの魔の森東側における存続を手助けしなければならない。


__ヘルウルフは彼の言い分を認め、自らの種の安全が保障される限り、彼の庇護下に入ることをここに認める。



「あ、あれ? 長さん、これはどういうこと?」


カイウスがそう呟いた時には契約書は作成され、以下の契約になっていた。


それは両者が同意した証。


__ヘルウルフは、種の安全が保障される限り、カイウスの庇護下に入り、カイウスのために動くことをここに契約する。


どうやらヘルウルフの長はカイウスのモフモフが相当気に行ったらしい、歴戦の戦士から、庭の番犬まで何でもこなす、ハイスペックペットがここに誕生した。 








ということで、ヘルウルフの長を掌握したことにより、この天国へ案内してもらい現在に至る。 


カイウスは一枚の契約書と、彼のモフリ技術によってこの天国を成しえたのだ。


ついでに言えば、留守番をすることによって大人ヘルウルフたちも気兼ねなく戦いに出ており、現在巻き返し中なのだとか。


まさにお互いが利益を得る素晴らしい関係性だった。


「ああ、この契約書のお陰で天国が満喫できる…‥‥‥‥魔の森統一してみようかな? そしたらモフリ放題ではないか。俺は天才かッ」


そんなカイウスは、まるで天啓を受けたかのような感動と共にチビウルフたちをモフル。モフリ続ける。


彼の手が止まったのはそれから大人たちが帰ってくるまでだった。





『か、快楽に呑まれて堪るか!!わ、私は誇り高きヘルウルフの長なり』

                   BY 抵抗空しく堕ちたヘルウルフさん


感想など極力返信させていただきますので、遠慮なくどうぞ。


ブックマーク・評価等ありがとうございます、大変励みになっております。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ