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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
42/233

39 監視

2019/1/5 見直し済み


 いささかやり過ぎ感が満載となった模擬戦が終わった。

 格納庫に戻ったところで、拓哉がキレた理由を暴露され、更には良く解らんものを体内に撃ち込まれていた事実を告げられた。


 ――それだけでお腹いっぱいなのに……


 現在の拓哉は、クラリッサの叔父からの呼び出しで、校長室へとやってきたわけだ。

 そこで、校長でありクラリッサの叔父であるキャリックが、今日の出来をベタ褒めしてきた。

 それは良かった。想定こそしていなかったが、それは問題ない。

 ところが、その後に続いた展開が少し、いや、かなり問題を抱えていた。


「という訳で、来週からドライバー科へ編入となるのだが、詳細は追って端末に送ることにしよう。ただ、ちょっと問題が発生してね。生徒にあの宿舎の個人部屋を使わせるのは問題があるというのだ。まあ、教官や職員の宿舎だし、それも仕方ないと思う。そんな訳で、今晩から訓練生寮に移って欲しい。部屋の鍵はこれだ」


 そう言われて、校長から渡された鍵には、三番館五○一号という文字が刻まれていた。


 それについても問題ない。

 ただ、問題はその後に起こった。


「叔父様? それ、私の部屋ですが?」


 ――なにっ!?


 いつものように拓哉と一緒に呼ばれたクラリッサが、受け取った鍵を覗き見て、驚きで顔を引き攣らせている。


「てか、クラレと同室? だって、クラレは女子寮では?」


 クラリッサの発言を聞いたところで、拓哉は直ぐに疑問を抱いた。校長の耳目も忘れて思わず尋ねてしまう。

 すると、彼女は首を横に振った。そう、彼女はこの世界に戻ってから、隔離されているのだ。


「いえ、理由は解らないのだけど、異世界から戻ってきてから、ずっと中央塔の一人部屋……二人部屋を一人で使っているのよ」


 この訓練校の宿泊施設は、一番館が男子寮、ニ番館が女子寮になっている。

 それをマップで確認したことのある拓哉が首を捻る。


「なあ、クラレ、三番館って何だ?」


 三番館の存在をクラリッサに尋ねたのだが、その答えは違うところから返ってきた。


「三番館は、特殊兵寮なんだよ」


「えっ!? カティ?」


「あなた! どうやって入ったの?」


「うむ、校長室に隠密サイキックで侵入するとは、なかなか優秀そうな訓練生だな」


 ――いやいや、そんな問題じゃないだろ。これって不法侵入だぞ?


 感心しているキャリックに、拓哉は思わず心中でツッコミを入れる。

 そんな拓哉を他所に、カティーシャは不機嫌な感情を隠すことなく、校長に向かって強気で言い放った。


「校長先生! 職権乱用はダメだと思うんです。ボクも親公認ですから、平等にすべきですよね」


「ぬっ!」


 ――おいっ! 校長! なんでそこで呻るんだ? スパッと、みんなバラバラの部屋にすればいいだろ?


「カティ、何を言ってるのよ」


 腕組みをして考え込む校長とは違い、クラリッサは即座に反発する。


「何って、そんなの決まってるじゃないか。ボクも同室がいいし、それにボクの方が男同士だから不自然じゃないと思うんだけど?」


 確かにその通りだ。カティーシャの場合は、一応、男ということになっている。周囲の目を気にする必要もない。

 それに比べ、クラリッサが同室となると、もはや周囲にできちゃってますと伝えるようなものだ。


 ――なんで悩むんだ? ここはみんな別々でいいだろ。


 常識的に考えれば選択の余地はない。

 なにしろ、三人が三人とも十五歳の少年少女なのだ。

 しかし、常識的に判断できるのなら、初めから同室などと言わないだろう。

 そこまで考えつかない拓哉は、キャリックの行動を逐一逃すまいと見詰めている。

 その視線の先で、キャリックは閉じていた瞼を開き、腕組みを解いて立ち上がる。そして、何を考えたのか、少し待つようにと言って何処かへ行ってしまった。

 キャリックを見送った拓哉は、疑問に思いながらも瞑目して相部屋について考え始める。


 ――相部屋か……嬉しいような気もするけど……安住の地がなくなってしまうよな。だからといって他の部屋になっても押しかけてくるだろうし……いや、別の男子訓練生と一緒になれば、さすがにそれはないか。よしっ!


 拓哉は問題を解決するために、二人と異なる者と一緒の部屋を望むことにした。

 普通に考えれば、女の子と同居できるチャンスだというのに、なんて勿体ないことをと思うかもしれないが、現在の彼は休息を欲していたのだ。

 ただ、それを実現させるためには、幾つかの関門があることを認識していた。

 という訳で、隣で言い争いをしているクラリッサとカティーシャに向き直る。


「なあ、二人とも、ちょっと聞いてくれないか?」


 その言葉で、二人は言い争いを止めて拓哉に視線を向けた。


 ――なんか、このシチュエーションって、この前もあったよな? いや、まあいい。話を進めよう。


「あのさ、どうなるか解らないけど、二人が喧嘩するなら……いや、俺は別の男子と同部屋が良いと思う」


「あぅ!」


「うぐっ!」


 作戦なんて存在しない。拓哉は有りの侭を告げる。

 その途端、二人は凍り付いたかのように固まった。

 二人はショックを受けたのか、声さえ出ない。

 そんなところに、キャリックが戻ってきた。


「ああ、待たせて済まない」


 ――よし、それじゃ……ん? 何を持ってるんだ?


 すぐさま自分の意見を進言しようとしたのだが、キャリックが手にした物が気になる。

 というのも、戻ったキャリックの手に不審な物が握られていたからだ。いや、それは全く怪しい物ではないのだ。ただ、このタイミングで持ってこられたのが腑に落ちないのだ。


「それじゃ、これを」


 キャリックはそう言って、俺達の前にその物を差し出した。

 本来なら、ここで自分の意見を言うべきなのだが、拓哉は疑問を抱きながらもそれを受け取ってしまう。

 すると、キャリックはこれで終わりとばかりに笑みを見せた。


「モルビス氏にも恩義があるし、不公平は拙いだろう。だから三人部屋を用意させてもらったよ。完全防音のスペシャルルームだからな。頑張ってくれたまえ」


「へっ?」


「それじゃ、行きましょうか」


「そうだね。校長も忙しいだろうし、いつまでもボク等がここに居る訳にもいかないよね」


「ちょ、ちょっとまて! ちょっ~」


 物を受け取った拓哉が素っ頓狂な声を発して首を傾げる。

 これ幸いと、クラリッサとカティーシャが両サイドから拓哉の腕を取ると、有無も言わず校長室から連行してしまった。

 こうして拓哉の作戦は、恐ろしほどの短時間で潰えてしまった。









 目の前には番号が記された扉がある。


「五○五号室。うむ、ここだね」


 拓哉の左隣にいるカティーシャが、手に持つカードキーと扉の番号を見比べながら頷いた。

 その声を聞き流しながら、拓哉は手にしたカードキーを見る。

 そこには、部屋と同じ五○五の文字が記されている。

 右隣でも同じようにしているクラリッサの手元を見ると、やはり五○五と記されたカードキーを持っている。

 そうなのだ。あの時、キャリックは三人部屋を用意しに行ったのだ。


 ――あ~、頭が痛くなってきた。


 目眩を覚えた拓哉が額を手で覆う。

 そして、退出間際に放たれたキャリックの言葉を思いだす。


「あとは任せたよ。ホンゴウ君」


 おいおい、俺は何を任されたんだ? まさか、子作りだとかいわんよな?


 溜息を吐きつつも、扉を開けたカティーシャに続いて中に入る。


「お~~~! すっご~~い! さすがは三人部屋。ひろ~い!」


 確かにこれまで使っていた部屋に比べてかなり広い。

 なにしろ、これは来客用のスペシャルルームなのだ。

 それと知らずに、拓哉はそのリビングの広さに圧倒されていた。

 というのも、三十畳くらいある部屋の中に、大きなベッドが一つだけど~~~ん! と、置かれてあるだけなのだ。


「あの~、ベッドが一つしかないんだけど……」


 さすがのクラリッサも度肝を抜かれたらしい。

 呆気に取られた様子で立ち尽くしている。

 すると、どこからかカティーシャの騒ぐ声が聞えてきた。


「やった~~! 凄い! 凄いよ、これ!」


 その声が気になり、声のする場所へと向かう。

 そして、そこに存在するものを見てぶっ魂消る。


「マジかよ……」


「これってなに?」


 クラリッサは、その存在を知らないようだ。

 彼女は拓哉に視線を向けたまま首を傾げている。

 その行動は、拓哉が知っていると判断したものだろう。

 それを察した拓哉が、頬を人差し指で掻きながら説明する。


「えっと、これは、ジャグジーバスだと思う」


 そう、拓哉達が目にした物は、大人三人が優に入れるサイズの丸い形をしたジャグジーバスだ。


「ねえねえ、タク~、ジャグジーってなに?」


 今度はカティーシャがジャグジーについて尋ねてくる。

 どうやら、ジャグジーバスを知らないらしい。先程の喝采は大きな風呂という理由のようだ。


「あの浴槽にある沢山の穴から気泡が出てきて、体の新陳代謝を高めるんだ。要は泡風呂というやつだな」


 二人とも実物を見たことがないのか、拓哉の説明を聞いても首を傾げたままだった。


 ――ん~、分かりづらいかな? どうせその風呂に入ることになるんだ。詳細はその時でも良いだろう。ただ、気になるのは、なんで訓練校にジャグジーバスがあるかということだな……


 拓哉の疑問も当然だろう。そもそも、訓練校にジャグジーバスが必要なのか疑わしい。

 ただ、その疑問を棚上げする。というのも、考えるだけ無駄だからだ。必要性が分かったとしても何の意味もない。問題は三人同室の状態で、巨大な風呂があるという事実だけだ。

 広いバスルームを後にしてリビングに戻ると、クラリッサが壁に設置されたスイッチを押して昇降式のソファーを呼び出した。


「このソファー、なかなか座り心地が良さそうね」


 ――ん?


 クラリッサは感心しながらゆっくりと腰かけたのだが、拓哉の勘が怪しいと告げた。

 その本能の囁きに従って、ソファーをくまなく調べる。


「何をしているの? まさか……」


 ソファーに座っているクラリッサは、拓哉の行動に首を傾げたのだが、直ぐに気付いたようだ。

 ただ、結論を口にする前に拓哉が声をあげた。


「あった」


「またなの!? 何を考えているのかしら」


 物の見事に隠しカメラと盗聴器を発見した拓哉を見やり、クラリッサが憤慨する。

 カティーシャは、拓哉が手にした盗聴器を目にして顔を顰める。


「うは~~、ほんとに監視付きなの? ちょっと勘弁して欲しいんだけど……」


「もうっ! 叔父様ったら!」


 当然ながら、カティーシャの言う通り、監視つきなんて勘弁だ。

 そう感じた拓哉は、仁王立ちで燃え上がっているクラリッサを他所に、作業に取り掛かることを告げる。


「さあ、盗聴器と隠しカメラを全て撤去するぞ」


 このあと、拓哉は二人の少女と協力して隠しカメラや盗聴器を撤去するのだが、あまりの数の多さに呆れ果てることになった。


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