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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
229/233

226 大失敗と大失態

2019/3/23 見直し済み


 大地にできあがった巨大なクレーターは、隕石の落下を思わせるほどだった。

 恰もカルデラかのように中心地は深く抉れ、それを取り囲む大地は逆に盛り上がっている。

 驚くことに、その盛り上がりの端から端までの距離は凡そ五キロであり、その衝撃の凄まじさを物語っていた。

 その光景をミリアルが目の当たりすれば、きっと目眩を起こしたことだろう。

 なにしろ、その威力は、都市破壊兵器と言わんばかりのものだったからだ。


 ――敵は……いない……でも、これは……


 己の所業とはいえ、あまりの悲惨な光景に思わず息を呑んでしまう。

 射撃直後の爆発が凄まじかったのは理解していた。

 ただ、その爆発によって生み出される影響までは、考慮できていなかった。

 何もかもを吹き飛ばすような爆風が収まり、地上の様子をモニターで確認できるようになったところで、拓哉は自分の行った破壊に凍り付いてしまった。

 爆心地は完全に地形が変わっている。雨が降れば湖になるかもしれない。


 ――これじゃ、核と変わらんじゃないか……


 これまでも、それなりに大出力の射撃を行ってきたが、ここまでの被害はなかった。

 それもあって、全力の攻撃が、ここまでの大被害になるとは思ってもみなかった。

 いつまでも地上を映し出したモニターを、まるで拘束されたかのように釘付けとなったままの拓哉だったが、そこで心臓が高鳴ると同時に、鼓動が速まる。


 ――キルカは!? 街のみんなは大丈夫なのか?


 原型を留めていない地形から、その被害を思い描いて、地上に居るはずのキルカリアや街いる者達のことが心配になる。


「キルカ! デクリロさん! クロートさん! トニーラさん! みんな、大丈夫ですか!? キルカ! ――」


 何度も地上に居るはずの仲間を呼ぶが、誰一人として全く反応がない。レーダーには味方としての信号が健在なので、キルカリアの機体や高速飛空艇が存続しているのは確定なのだが、操縦者が無事とは限らない。


 ――拙い……これは……もしかして……


 己の所業に、身体が震えだす。

 意図した訳ではないのだが、結果として誰も生き残っていなかったら、拓哉がきた意味すらなくなるのだ。いや、拓哉の存在意義すら危ぶまれる。


 ――くそっ! こんなことなら……俺は、なんてことをしてしまったんだ……


 誰からも返事がないことに、拓哉は凍り付いたまま途方に暮れ始める。

 その時だった。ヘッドシステムから雑音が聞こえてきた。


『ジーーー! ザ、ザ、ザーーー! じゅ……しょ……じき……らし……』


 ――これは! 高速飛行艇からの通信だ!


「大丈夫ですか! 街はどうなってますか! 聞こえますか!?」


 相手に伝わるかどうか解らないが、必死に呼びかける。

 すると、しだいに雑音が消えていく。

 そう、拓哉の攻撃が生み出した磁気嵐。それが原因で通信に支障が出ていたのだ。

 それが収まり始めたのか、パイロットの言葉を拾えるようになる。


『じゅ、しょう。きこ、えますか』


「ああ、聞こえるぞ。そっちは、どうなってる」


『あっ、良か、た。ご無事で良かった』


「俺は無事だ。それよりも街の被害を教えてくれ」


『ああ、いきなり突風が吹いたかと思うと、磁気嵐が起きて通信ができなくなって……』


 応答のなかった理由を理解するが、それよりも救助に出かけた者達が気になる。


「救助に向かった者達は?」


『デクリロ=トリア曹長は帰還しています。トニーラ=ランクス伍長もこちらに向かっているとのことです。強風は吹いていましたが、特にけが人などはないようです。クロート=デバル三級軍曹は、未だシェルター内で説得中とのことです』


 ――よ、よかった……マジで、心臓が止まるかと思った……


 生き返ったと言いたくなるほどに安堵して、ドライバーシートにドサリと身体を預ける。


「そ、それなら良かった。こちらは無事――」


 ――まずっ! キルカ……


 パイロットからの報告を聞いてホッと息を漏らしたものの、キルカリアからの返事が届いていなことを想い出す。


「き、キルカ! 返事をしろ! キルカ!」


 何度も呼びかけるのだが、彼女からの応答はない。再び心臓を凍らせ、黒鬼神を一気に降下させる。

 それに連れて、機体の外気温が上昇し始めたのか、センサーが異常を知らせてくる。


 ――やべっ! 外気温が百度を超えてるじゃんか……


 爆心地に近いのが原因か、それとも、熱気が上空に舞い上がっているのか、その理由は定かではないが、外気温が異常値を示していることに間違いない。

 慌ててモニターの映像を拡大すると、そこには煮えたぎった爆心地が映し出された。

 激しく焦りを募らせながら第三防衛ラインに急ぐ。

 すると、そこでキルカリアからの通信――苦言が耳を叩いた。


『いった~~い! もうっ! タクヤ、何をしたの!? 機体がボロボロだわ。ああ、アタックキャストも壊れてるし……』


 怒り心頭のキルカリアだったが、無事であると知って安堵の息を漏らす。


「悪いな。ちょっとやり過ぎちまったんだ」


『やり過ぎたって?』


「全力で神撃をぶちかましたんだ」


『えっ!? たったそれだけで、この有様なの? てか、敵が全滅してるじゃない。あう……これじゃ、生存者は居なさそう……ね』


「すまん。そんなつもりじゃなかったんだが、思ったよりも威力が出過ぎちまったんだ。ちょっと、これは封印する必要がありそうだ」


『そうね。人類にも、ヒュームにも、自然にも優しくなさそうだものね。というか、冷房がフルで動いてるんだけど……異様に暑いわ』


 ――うぐっ……まあ、そうだろうな~。外気温が凄いことになってるし……


「すまん。直ぐに迎えに行く」


 拓哉自身は全く暑くもないのに、額に浮かぶ汗を感じながら、黒鬼神をフル加速させて第三防衛ラインに急いだ。









 それは、酷い有様だった。

 正直言って、誰がこんなことをしたんだと思わなくもない。

 まあ、犯人が解っているので、文句も言えない。

 当然ながら、犯人は自分自身だ。

 実際、マークを頼りにキルカリアの場所を特定したのだが、信号は分かれども、彼女の機体は見当たらない状態だった。

 というのも、彼女の機体は第三防衛ラインの瓦礫に埋まっていたからだ。

 そう、それは物の見事にと言って良いほどに埋もれていた。


「大丈夫か? 今すぐ出してやるからな」


『早くしてね。機体が壊れ始めたの。警告表示がどんどん増えてるんだから。それに暑くて死にそうだわ。これって誰が悪いのかしら』


 ――ぐふっ! これは遠回しに俺を責めてるんだろうな~。


 額から流れた汗が頬を伝うのを感じながら、拓哉は救助活動を始めたのだが、これがまた大変だった。

 そもそも、PBAは戦闘用であり、瓦礫の撤去には向いていないのだ。


 ――これって、戦闘よりも大変なんだが……くそっ! あんな銃、封印してやる!


 大被害の責任を銃に押し付けながら、拓哉は必死に瓦礫の撤去を始める。しかし、掘れども、掘れども、キルカリアの機体は見えてこない。


 ――ちょ、ちょ、マジ? どこまで埋まってるんだ? というか、キルカはどこに隠れて攻撃してたんだ?


 キルカリアの機体がなかなか見つけられなくて、思わず愚痴を零しそうになるのだが、それを必死に堪えながら瓦礫を投げ飛ばす。

 そもそも、原因は自分なのだ。文句を言うのは筋違いというものだろう。


 ――でも、この状態を考えると、PBAって想像以上に丈夫なんだな~。


 キルカリアの無事を知った拓哉は、呑気なことを考えながら彼女の機体を発掘する作業を進める。しかし、そこで驚くことになった。


 ――あれ? これって……キルカの機体の腕? えっ!? それって拙いじゃね?


 瓦礫の間に転がっていたPBAの腕を見て、一気に顔を引き攣らせる。そして、慌てて瓦礫の除去に専念する。


「あっ……」


 それが機体を見つけた拓哉の第一声だった。


 ――これはまず~~~~い! てか、よく生きてるな……


 彼女の機体は両腕がなくなり、脚も両方が潰れていた。いや、それよりも問題なのは、コックピットハッチがぺちゃんこになっているのだ。


「キルカ! 生きてるか?」


『生きてるわよ。それよりも早くして! 暑いのよ。本当に……』


 彼女の愚痴を聞きながら、外気温を確かめる。


 ――ぬぐっ……六十度……そら、暑い罠……てか、ここで外に出すと、間違いなく死ねるよな……


 異常な外気温度を確認した拓哉は、彼女の機体を抱き上げると、空に向けて黒鬼神を舞いあげた。

 別に意地悪をするつもりではなく、早く涼しい環境に移してやりたいと考えたからだ。

 ところが、その思い遣りが裏目になる。


『ちょ、ちょ~! タクヤ! や、やめて~~!』


 その声で、急速上昇を止めると、今度はゼイゼイという荒い息を吐きながら、キルカリアが罵声を浴びせてきた。


『ちょっと、タクヤ、私を殺すつもり? 少し遠慮してくれないと、この状況だと加速圧力で死ぬわよ』


 ――ぬぐっ! そうだった……彼女の機体はまるっきり唯の鉄の箱……スクラップだった……


 自分の失敗に気付き、この後に繰り広げられるに違いない折檻を想像する。そして、拓哉はどこかに居るかもしれない神様に祈りを捧げた。


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