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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
214/233

211 真の狙い

2019/3/19 見直し済み


 もたらされた情報に、目眩が起きる。

 ホテルの一室で状況を見守っているミリアルは、頭痛を感じていた。

 それこそ、イケてるメイド長トーラスに連絡して、すぐさまワインを持ってくるようにと命じたい気分だった。

 そんな想いにさせたのは、このルキアスに本拠を置く義兄――ルーファスの言葉だ。


「駄目だ。基地で反乱が起きてる……」


 ――まだ掃除が終わってなかったのかしら……ディートとミラルダではとっくに大掃除を済ませて、不要なゴミ(はんらんぶんし)は生ごみ同様にゴミ箱(ろうや)に叩き込んで蓋をしているのに……というか、沢山の参加者が生き埋めになっている現状で、それは最悪だわ……いえ、お粗末だわ。不始末だわ。間違いなくお仕置きの対象だわ。


 将軍ともあろう者が、ミリアルの顔色をうかがってビクビクしている。まるで、彼女の夫であるミッシェルのようだと感じる。


「さて、困ったわ……」


 義兄から視線を外し、申し訳なさそうにワラワラとリモート操作装置から出てくるメイド達を眺め、深々と溜息を吐く。


 ――それでも、さすがね。ガルダル、カティ、キャス、キルカリアは、今も参加者をシールドで守ってるわ。カティ……私は母親としてあなたを誇りに思うわ。それに比べて男連中は……いえ、今はなじっている場合ではないわね。


 後手後手に回った現状をどう打破するか。溜息を吐きながらも必死に考える。


『うにゃ~~~ん! 応援求むですニャーーーー!』


 指令室にレナレの悲痛な叫び声が轟く。

 そう、彼女は目的地に到達できなかった所為で、敵に囲まれているのだ。


 ――あっちも大変そうね。いえ、それよりも、どうして到達できなかったのかしら……まあ、あれは放置していてもドールが壊れるだけだし……そうね、放って置きましょう。


「レナレ達には一機でも多く倒して散れと伝えて。ああ、そうね。倒した敵が一機増える度に、料理を一品追加すると付け加えておいて。きっと、それでやる気が倍増するでしょ」


「了解しました」


 可哀想だと感じつつも、彼女達の対応はそれで問題ないと頷く。


『頑張るですニャ~!』


『ウチも頑張るっちゃ!』


 どうやら、ミリアルの提案は快く受け入れられたようだ。レナレだけでなく、トトの元気な声も聞こえてきた。


 ――うふふ。本当に面白い子たち! あとで美味しいものを沢山食べさせてあげましょう。


 レナレとトトのお陰で気分が優れたところで、現状把握からやり直すことにする。


「残った部隊の限界は?」


「二時間がタイムリミットだと言ってます」


 管制担当の返事は予想の範疇だ。そして、軍の状況を把握するために、視線をルーファスに向ける。


 ――そんなに怯える必要がるのかしら?


 視線を向けた途端にビクリとする義兄を不満に思いながらも、現状について報告して貰う。


「PBAは一機も出動できそうにないのですか?」


「うむ。指令室が占拠されている所為で、格納庫の扉すら開かない状態だ」


「占拠されているのは、指令室だけで間違いないですか?」


「ああ。それで間違いない」


「それなら、出動できるパイロットをウチの工場に移動させてください。基地からなら三十分程度で到着できるはずです」


「わ、わかった」


 ルーファスが頷くのを確認したところで、手にした携帯端末が振るえ始める。


『トーラスです。遅くなって申し訳ありません。カトル=リストンの身柄を拘束しました。これから尋問に移ります』


「丁度良かったわ。尋問は後でいいわ。影虎をルキアス基地に回してもらえるかしら。指令室に害虫が湧いたみたいなの、片付けてちょうだい」


かしこまりました。それで、如何様(いかよう)にしましょうか』


「任せるわ。やり易いようにやって構いません」


『畏まりました』


 ルキアス基地の反乱を収める段取りを済ませ、そのまま通話を終わらせようとしたのだが、そこで忘れていた事柄を思い出す。


「あっ、ちょっと待って、忘れてたわ。ルキアス工場にパイロットを送るわ。恐らく、三十分くらいで到着するはずよ。新機体を使えるように準備しておいて」


『はい。直ぐに準備させます』


 ――今日は本当に忙しいわ……こんなに慌ただしいのもディート襲撃のとき以来ね。皺が増えたらどうするつもりよ! まあいいわ。さて、次は……


「会議場付近の状況は?」


「敵が暴れている様子はありません。ただ、敵が減っているように思われます」


「減ってる? どこにいったのかしら? 確認できる?」


「はい。直ちに!」


 オペレーターの返事に頷きつつも、市民の状況を確認する。


「周辺の避難状況は?」


 すると、別のオペレーターが振り返る。


「七十パーセントといったところです」


「急がせてちょうだい。恐らく大きな被害が出るはずだから」


 被害について言及したところで、再びルーファスが首をすぼめた。


 ――まあ、被害に関しては仕方ないわ。この状況で被害を最小限に抑えながら戦えるのは、タクちゃんくらいのものだし……それに、お金で済む問題なら、私にとって大きな被害とは言えないわ。


 一通りの段取りを済ませ、これからの作戦について説明するために、元帥と四将軍に視線を向けたのだが、そこで彼女は再び気分を悪くする。


 ――どうしてあなた達は私が視線を向けると尻込みするのよ! もうっ! あとでお仕置きしますからね!


 その思考が恐れられているのだが、本人は知る由もない。

 ただ、両手を腰に添えたミリアルは、不機嫌な様相を隠すことなく作戦について話し始めた。









 生まれてから後悔ばかりだった。

 そして、今、何度目になるかも分からない後悔に歯噛みする。


 ――もう最高の人間なんて口にするのはよそう……造られた人間なんて言うのは止めよう。


 キルカリアは自分の存在が恥ずかしくなってきたのだ。

 散々と自慢げに言っても、この有様なのだ。それこそ、どの口がと言われかねない。


 ――あ~~~~~! もう! これこそ、タクヤの言っていた『穴があったら入りたい』という状況そのものだわ……これなら私よりもミリアルの方が何倍も高性能だし……いえ、それはいいのよ。これからについて考えないと……


 際限なく自虐的になっていく自分を戒める。そんな彼女は、ただいま瓦礫の下に埋まっている。いや、彼女の操るドールが埋まっている。

 気が付いた時には、建物を構成している建材が雨のように降ってきていた。それも、木材よりも石が多いのが厄介だった。

 それでも、自分達だけが逃げるのなら、どうにでも対処できたはずだ。そもそも、現地にいるのはドールだし、埋まってしまっても問題ない。しかし、会議参加者を見捨てる訳にはいかない。それ故に、シールドを全開にして守ってはみたのだが、結局の処、全く身動きでいない有様となってしまった。それでも、現状を維持するために、エッグから出る訳にはいかない。


「ガルダル、そっちはどう?」


『こちらはまだ持ちます。交代で休みましょう』


 ――それが賢明な判断ね。


 見えるはずもない相手に頷きながら納得するが、それだけでは自分の名が廃ると考える。


 ――何とかして現状を打破する方法を考えないと……


「どこかに人が通れるくらいのスペースってないのかしら」


『私も探しているのですが、機体が動かせないので……見える範囲では無理そうです』


 ――あう……ガルダルも同じことを考えていたようね……もう溜息で息が止まりそうだわ。


『こっちも無理みたいだね』


『あたしの方も見える範囲では無理そうです』


 ガルダルのみならず、カティーシャやキャスリンも抜け道を探していた。


 ――結局、考えることは同じなのね。そうなると、私の存在価値なんて、たかが知れているというものか……それなら、救助については、ミリアルに任せることにしましょう。


 自分自身に絶望しつつ、脱出についてはミリアルに任せることにする。だからといって、何もしない訳ではない。そう、敵の作戦について考える必要がるのだ。

 敵がどんな目的でこの作戦を行っているのか。初めは黒鬼神と拓哉の存在を手中に収めたいのだろうと、敵の要求を鵜呑うのみにしていた。いや、愚かな者達だと舐めていた。ところが、こうなると話は別だ。ここまでくると、機体や拓哉を欲している訳ではないと、簡単に理解でいる。では、狙いは何なのだろうかと考える。


 ――会議場の爆破と生き埋め。ルキアス基地の反乱……


 名誉挽回とばかりに、キルカリアは頭をフル回転させる。そして、一つの答えを導きだすと、躊躇ちゅうちょすることなく管制に向けて声を発した。


「ホテルが危ないわよ。狙われているのはここよ!」


 キルカリアが導き出した答えは、誰もが予想していないものだった。

 それは、敵の狙いが初めからホテルだというものだ。ただ、ここを狙うには邪魔者が居る。それ故に、その者を足止めしてから、ここを攻めるつもりだと判断した。そうなると、拓哉達が会議場の近くで襲われたのも偶然じゃないことになる。では、どうやって情報を仕入れたのだろうかと考える。

 ただ、それに関しては、既に明らかになっている。いや、拘束されている。

 しかし、それと知らないキルカリアは、自分の考えが間違っていないと確信して、憤りが込み上げてくるのを感じる。


 ――ああ、内通者がいるのね。あ~ムカムカしてきたわ。


 全ての謎が解けた時、怒りを抑えながら再び声を発していた。


「ちょっとだけ抜けさせてもらってもいいかしら」


 ――まあ、返事がノーでも抜けるのだけど。


『構いませんが、どうしたんですか?』


「ちょっとね。ピンチになりそうだから……」


『えっ!?』


 ――まあ、今もピンチの最中なのだけどね。


 少しばかり考えのあるキルカリアは、驚くガルダルを放置して、卵型の操作ボックスから飛び出した。


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