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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
191/233

188 人生とはゲームのようだ

2019/3/8 見直し済み


 世の中とは、表裏一体だ。

 光があれば闇があり、善があれば悪がある。

 男があれば女があり、白があれば黒がある。

 そう、白と黒と言えば、葬式だ。

 いやいや、そうではない。白と黒と言えばオセロだ。

 そして、何を考えたのか、クラリッサとキルカリアはオセロ対決をしていた。


 シミュレーションで全く歯が立たなかったクラリッサは、恥も外聞もなく約束を反故にした。

 もちろん、無かったことにはできない。しかし、ありとあらゆる勝負を持ち出した。

 それは、射的に始まり、百メートル走を経て、自由形百メートル競泳にまで行き着いた。

 二人の水着はやたらと攻撃的で、拓哉が目を泳がせた。

 もちろん、二人がチョイスしたのは、拓哉の目を惹くための水着だ。恐ろしく面積が少なく、競泳なんてやったら脱げるのではないかと思えるほどだった。

 そんな対決もキルカリアに軍配が上がった。

 そして、全く勝てなかったクラリッサは、身体を使った争いでは勝てないと悟ったようだ。

 そんな訳で、オセロゲーム対決となったのだ。


 因みに、オセロゲームがこの世界にあることを不思議に思うかもしれないが、それについては、拓哉がこの世界に普及させたのだ。

 別にお金儲けがしたかった訳ではないのだが、クラリッサとカティーシャの争いを見かねた拓哉が、彼女達の争いを収めるために自分で作ったのだ。

 それがなかなか好評で、暫くの間、二人でそれを使って争っていたのだが、勝負に時間が掛かるということからすたれてしまった。

 しかし、ミラルダに戻ったことで、期せずしてこのゲームが復活してしまったのだ。

 クラリッサ曰く、戦いが終わったら、それを売りに出して生計を立てようと提案していたのだが、何のことはない、カティーシャがリークしたことにより、モルビス財団がこれを製造および販売することになってしまった。

 当然ながら、その特許は拓哉が持っているので、印税が入ってくる仕組みになっていた。

 ところが、ミリアルは印税を支払う気がないようだ。「カティと結婚すれば、印税なんて必要ないわよね」と言われてしまい、必要だとも、カティーシャと結婚しないとも言えず、印税の話は消滅してしまった。

 それでも、それまでに振り込まれた金額が桁違いで、きっと一生暮らせるはずだ。

 実際、拓哉が特許権を持っていること自体が理不尽なのだが、そこは異世界なので問題なしとしてもらおう。


「これ、面白わ。単純だけど、奥が深いわね」


 キルカリアは、五回目となるオセロ対戦にも拘わらず、飽きもせずに感心していた。

 その割には、二回目からはキルカリアが連勝しており、劣勢に立たされたクラリッサは厳しい表情を浮かべていた。


「これ、タクヤが作ったって本当? どこからこんなアイデアを?」


 ――あう……ズルだからあまり答えたくないんだが……


「タクヤが居た世界の玩具よ」


 誰が何と言おうと、オセロの存在はパクリだ。それ故に、押し黙っていると、次の一手を悩んでいたクラリッサが暴露した。

 ただ、キルカリアとしては、パクリよりも拓哉が居た世界に興味を抱いた。


「へぇ~。面白そうな世界ね。こんな玩具が沢山あるの?」


 ――沢山どころの話じゃない。数えきれないほどあるんだが……


「山ほどあるらしいわ。私が行った時も色んなゲームを見たわよ。アイテムを捕まえるゲームとかもあったし、シミュレーターと同じようなゲームもあったわ。タクヤはそのゲームで敵無しだったらしいわ」


 情報を口にするなと言った割には、クラリッサがあっさりと暴露していく。


「一度行ってみたいわね」


 ――いやいや、それは無理だから。もし可能なら、俺が帰れるという話になる。


「それは無理な相談ね」


「ちぇ、残念……」


 無理だと聞いて、キルカリアはとても残念そうな表情を見せる。

 しかし、彼女はそれを収めると、すぐさまとんでもない提案を持ち出す。


「だったら、拓哉がこの世界で作ればいいのよ」


「それは、いいかもしれないわね。取り敢えず、拓哉の知っている遊びを全てモルビス財閥に伝えるべきね」


 ――おいおい、どれだけあると思ってるんだ? いや、戦争よりはずっと健全かもな。


 なぜだか、クラリッサは拒絶しているはずのキルカリアから出された案に頷いた。

 ただ、その表情は恐ろしく渋い。間違いなく次の一手に悩んでいるのだ。

 そんな二人に肩を竦める拓哉だったが、そんなことよりも気になることがあった。

 それは、キルカリアの態度だ。ことごとく勝っているのにも拘らず、勝者の権利を主張しないのだ。


 ――いったい何を考えてるんだ? 俺との時間を作るのが目的なら、とっくに主張しているはずだが……


 拓哉の疑問を他所に、彼女は楽しそうにクラリッサとの対戦を続けていた。


「あ~、また負けた……」


 攻めあぐんだクラリッサだが、結局は、また負けてしまった。

 ただ、彼女も本来の目的を忘れているようだった。


「まだよ。たかがオセロの勝負じゃない。こんなものは勝負の内に入っていないわ」


 ――おいおい、一番初めに勝った時は、最高の勝負だって豪語してたじゃんか……


 負けが決定した途端、手のひらを返したように発言を覆してしまうクラリッサに呆れてしまう。

 ところが、キルカリアは全く文句を言わない。それどころか、笑みを浮かべている。


「それで、次は何をやるの? 何が出てくるのかな?」


 勝ったはずのキルカリアは、おやつを待つ子供の如く瞳をキラキラさせている。

 それを見る限り、完全に目的が変わっているように思うのだが、当然ながら、口にしたりしない。

 しかし、さすがのクラリッサも疲れてしまったようだ。


「ご、ごめんなさい。す、少し疲れたから休憩させて欲しいわ」


 勝負を挑んでいる、クラリッサが先に音を上げてしまったのだ。なんとも都合の良い話だ。

 ただ、この状況なら、キルカリアもそれを受け入れると思っていた。

 ところが、キルカリアは一気に表情を曇らせる。その表情は、思いっきり不服だと言っていた。

 しかし、何かを思いついたようだ。彼女は瞳を輝かせた。


「蘭! 私とオセロの勝負をしましょ! あなたの演算能力と私の思考の勝負よ」


 なんと、コンピューターにも勝る頭脳と言われるヒュームに、オセロの対戦を申し出たのだ。


 ――おいおい、それって勝てないだろ! 地球でもコンピューターと人間の対決は、前者に軍配が上がっているのに……況してやコンピューターを凌駕りょうがする存在なんだろ? 勝てる方がおかしいぞ?


「ひめ……キルカリア様の命であれば」


「別に命令じゃないわよ。楽しいわよ?」


「別に楽しそうに見えませんが……」


 オーキッドはあまり気が進まないようだった。

 それもそうだろう。考えるから面白いのであって、彼女からすれば、演算ではじき出した結果を見るだけなのだ。なんの面白みもない。

 それでも、キルカリアの願いを断ることなくオセロを始める。そして、オセロ盤が半分くらい埋まったところで口を開いた。


「私の負けです」


 ――おいおい、これで投了とか在り得んだろ!


「え~! まだ終わってないじゃない」


 拓哉の思考を読んだかのように、キルカリアは不満を露わにする。

 しかし、オーキッドは表情を変えることなく首を横に振った。


「既に、最後までのパターン解析が終わっています。このまま行くと私が負けます。故に、続けるのは無意味です」


「そんなの解らないじゃない」


「いえ、ひめ……キルカリア様が打つ手を間違えるはずがありません。故に私の負けです」


 ――こりゃ、確かにコンピューターよりも遥かに優れてるな……いや、異常だと言った方がいいか。コンピューターなら勝つことはあっても、このタイミングで敗北宣言なんて出来ないもんな。というか、それに勝ったキルカリアって、いったいどんな思考をしてるんだ?


 途中で勝敗を見切ったオーキッドにも驚いたが、その頭脳を持つ彼女に勝ってしまうキルカリアの思考能力にぶっ魂消たまげる。


「これじゃ、勝てるはずがないか……」


 オーキッドを負かしたキルカリアを目にして、クラリッサがボソリと愚痴を零す。

 ただ、拓哉としては、こうなると焦りを感じる。自分にお鉢が回ってくるような予感がしたのだ。


 ――おいおい、俺に遣ろうとか言うなよ。絶対に勝てないからな。


 拓哉の想いとは裏腹に、キルカリアの瞳がキラリと輝く。


「ねえ、タクヤ! やりましょうよ! 私、もっとやりたいわ」


 夢見る乙女のような表情で、キルカリアが手招きする。

 しかし、拓哉としては願い下げだった。


 ――負けると分かっている勝負ほど詰まらないものはないだろ!


 彼女の要望に対して、拓哉は首を横に振る。

 途端に、彼女のほおふくれる。

 拓哉にとっては、それが意外だった。


 ――へぇ~、こんな表情も出来るのか……てか、目がウルウルしてるし……うはっ! 断り辛い……しかし、遣っても負けるし……そ、そうか!


 彼女の恨めしい表情に負けた拓哉は、仕方なく勝負することを考えるが、そこで名案を思い付く。


「いいぞ!」


「やった~~~~!」


 キルカリアは両手を上げて喜びを表現するのだが、そこで待ったを掛ける。


「ただ、やるのはオセロじゃない。これだ!」


 首を傾げるキルカリアに、拓哉はモルビス財閥から試供品として贈って貰ったゲームを持ち出す。


「ねえねえ、タクヤ。これなに? なになに?」


 そのゲームを目にしたキルカリアが、瞳をキラキラさせながら身体を乗り出す。


 ――ふふふっ、これなら勝負の行方は運頼みだ。


 そう、身体や頭を使う勝負を挑むから勝てないのだ。もっと、運を利用したゲームを持ち出せばいい。例えば、トランプやマージャンなんて良い例だろう。イカサマをしない限りは、運しだいで勝敗が変わる。

 そして、拓哉が思いついたのも、それに近いものだ。

 見るからにワクワクとしているキルカリアに、拓哉は胸を張って告げる。


「これは、人生ゲームだ!」


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