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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
172/233

169 至高の時

2019/2/26 見直し済み


 コレティカの要求を退けるつもりが、気が付くと完全に失敗していた。

 それでも彼女との話がひと段落したところで、ミルルカが話題を代えた。


「タクヤ、これからどうするんだ? カティに聞いた話では、ミサイルで飛んで行くというが、正気か?」


 ミルルカは例の飛行オプションについて気にしていた。

 彼女としても、正気の沙汰とは思えなかったのだろう。険しい表情を見せた。

 ただ、あの非現実的な案は、拓哉とクラリッサの反発で白紙に戻った。


「いや、今回、カタパルトで撃ち出されたんだが、飛行オプションの加圧はそれの倍以上だってさ。だから、無理だと言い張ったんだ」


 そう、拓哉が格納庫に戻って、一番初めに着手したのは、ララカリアに対するクレームだった。

 カタパルトが駄目だとは言わない。ただ、事前に一言あってしかるべきだと考えたのだ。

 拓哉のサイキックがあったから良かったものの、場合によっては死人が出る可能性があると思えたからだ。

 結局、拓哉の剣幕に怯んだララカリアは、渋々と謝ってきた。しかし、それだけで終わらせられなかった。その件で不安を抱いた拓哉は、飛行オプションの加圧について問い詰めた。すると、彼女はおずおずとカタパルト射出の倍以上だと告げてきたのだ。

 もちろん、拓哉のみならず、クラリッサともども絶句したのは言うまでもないだろう。

 さすがに、それは在り得ないと反発して、飛行オプションの使用は白紙に戻ったのだ。

 しかし、そうなると問題が生まれる。いや、初めから解決していない。

 それについて、不安な表情を浮かべたキャスリンが言及する。彼女としても、ミラルダに愛着があるのだ。何とかして守りたいと思っていた。


「それじゃ、いつ出発するんですか? 普通の飛空艦では、間に合わないのではないですか?」


「そうだな。機体の整備が終わりしだい出発しようかと思ってる」


 当初は、機体の飛行能力で行こうかと考えた。しかし、現在の疲労とララカリアの言葉で、それを諦めることになった。

 黒鬼神の飛行能力は、通常の飛行型PBAよりもかなり高性能だ。それは喜ばしいことなのだが、メリットばかりではない。その高性能の代償は、拓哉の体力や精神力だった。それが精力であるのなら、いくらでも余っているので問題ないのだが、さすがの拓哉でも丸一日飛べば、ぶっ倒れるだろうと言われたのだ。

 それを聞いては、チャレンジする気も起きない。それ故に、機体の整備が終わらせてから直ぐに出発することにしたのだ。


「機体の整備は、いつ終わるのですか?」


 ヒュームが攻めてきていると聞いて、ガルダルも親身になって心配していた。ディートから離れているとはいえ、他人事ではない。


「突貫でやっても、最短で明日の昼だと言っていたよ」


「明日の昼ですか……」


 寂しそうな表情でポツリと呟くと、そのまま押し黙ってしまった。

 ガルダルとしては、拓哉と一緒にディートに向かいたいと考えていた。しかし、彼女の機体は、今回の戦闘で再起不能なほどのダメージを受けてしまったのだ。

 その機体を目にしたララカリアは、ハッキリと修理するより、今進めている新型機の製造を速めた方が得策だろうと断言した。

 ただ、どれだけ早くても、新しい機体が組み上がるまでに、二ヶ月近く必要となるのだ。

 当然ながら、酷いダメージを受けたミルルカの機体も、一ヶ月の入院となっていた。


「くそっ! 遅れてでも向かいたいんだが……少し壊し過ぎた……すまん」


「私も……ごめんなさい」


 頭をさげるミルルカとガルダル。

 彼女達の表情には、悔しさと申し訳なさがありありと現れている。


「何を言ってるんだ。俺からすれば、よくあれだけ戦えたものだと感心するぞ」


「そうよ。二人とも十分に頑張ったわ。大丈夫、タクヤと私で何とかするわ」


 今回の戦闘で、黒鬼神の性能を理解した拓哉とクラリッサは、単独でも何とかなると考えていた。

 ただ、クラリッサの表情はかんばしくない。

 ミリアルが高速艇を用意してくれると言っていたが、ミラルダまで最短で三日はかかる。それは致命的だった。予想されているヒュームの進攻は、二日後だ。

 明日の出発となると、どう足掻あがいても、最短で二日遅れとなってしまうのだ。


「クラレ、大丈夫だ。最悪は途中から自前で飛べば、もう少し早く着けるからな」


「そうね……」


 クラリッサを慰めるつもりで苦肉の策を口にしたのだが、残念ながら、彼女の笑顔を取り戻すことができないままお開きとなってしまった。









 暴れるだけ暴れて、後処理はミリアル、いや、ミッシェルに丸投げした拓哉は、コレットの一件があったものの、夕食も済ませて飛空艦の自室にと戻ってきていた。

 実のところ、リディアル達はアーマードールの訓練という名目で、片付けを手伝わされていた。

 同じアーマードールのオペレターであるはずのカティーシャとキャスリンが飛空艦の自室に居るのは、俗にいうズルという奴だ。

 ただ、拓哉が言及することはない。それを口にすれば、またまた騒ぎが起ると考えているからだ。それもあって、知らぬ存ぜぬを通していた。

 それはそうと、なにゆえ飛空艦の自室を使っているかというと、何度も何度も居室を変えるのが面倒だったからだ。

 それ故に、ミリアルから部屋を用意するとの申し入れがあったのだが、つつしんで辞退することにした。

 本当は、用意された部屋で策略が起ることを考えたのだが、それを理由に断る訳にもいかない。

 ああ、その策略とは、当然ながら子作りに関するものだ。

 ただ、疲労の溜まった状態では、身の内に溜まったモノを放出する気にすらなれないだろう。

 その証拠に、拓哉達は戦闘の疲労を隠せない様子でぐったりとしていた。


「みんな疲れただろ。風呂に入って疲れを癒すといい」


 ソファで気怠そうにする面々に、気を使って風呂を進めた。ところが、誰一人として肯定的な反応を見せない。


「ボクはそうでもないから、いつもと同じで、タクと一緒に入るよ」


「あ、あたしも、タクヤ君と一緒なのが一番癒されるかも……」


「わ、私もタクヤと一緒に入りたいな。明日から暫くは会えなくなるしな」


「私もです。というか、みんなで一緒に入りましょう」


 カティーシャ、キャスリン、ミルルカ、ガルダル、四人が頬を赤く染めている。

 男なら誰でも喜ぶ場面なのだが、疲れ切った拓哉は、無言で脱力した。まるでノシイカみたいだ。

 ところが、天の恵みか、クラリッサから想像もしていなかった意見が飛び出す。


「ごめんなさい。今日はみんなに話があるの。だから、タクヤには悪いけど、一人で入ってもらえるかしら」


 彼女以外の女性陣が首を傾げるのだが、拓哉としては願ったり叶ったりの申し入れだった。それもあって、話の内が気になりつつも、直ぐに入浴することにした。


「ぷはっ~~~! 一人の風呂は最高だな~~~。てか、いつ以来かな……」


 広い風呂を占有した拓哉は、いつになく身体を伸ばし、心地よさを満喫しながら思いにふける。

 気分的に寛げた効果か、この世界にやってきてからの日々が脳裏をめぐる。


 ――よくよく考えると、この世界に来てまだ一年も経ってないんだよな~。その割には、未来の嫁が五人とプラスアルファか……殆どファンタジーのハーレム状態だよな……これって、幸せだといっていいんだよな? PBAなんて夢の乗り物に乗れるし、未来の嫁はみんな美人で可愛いし……どう考えても、日本じゃ実現不可能だよな~。


 日常から始まり、PBAでの模擬戦、更には対校戦と、これまでの出来事を思い起こし、将来を約束したクラリッサ、カティーシャ、キャスリン、ミルルカ、ガルダル、一人ひとりのことを順々に思い浮かべる。

 ただ、最終的に思い浮かべたのは、好ましい内容ではなかった。そう、ミラルダに迫りくる脅威だ。


 ――ミラルダを何とかしないとな……みんなの悲しい顔は見たくないし、俺の未来すらも怪しくなるからな……


 ヒュームの脅威に晒されているミラルダのことを考え、なんとかするつもりで意気込んでいると、バスルームの扉が開いた。


 ――あれ? 話は終わったのかな? 早くないか? もう少しゆっくりしたかったんだけど……てか、なんか、やたらと恥ずかしがってないか?


 ゾロゾロと五人が入ってくるのを目にして、少しばかり不満を抱く。ただ、彼女達の雰囲気がいつもと違うことに気付く。

 しかし、彼女達の様子については触れない。そう、藪には蛇がいてもおかしくないからだ。


「話は終わったのか?」


「ええ」


「う、うん」


 クラリッサはいつも通りなのだが、カティーシャは少し歯切れが悪い。

 それでも、深入りするのは得策ではない。そう考えた拓哉は、黙って視線を外した。

 これは、いつもの習わしだ。

 彼女達とは毎日一緒に入浴しているのだが、本心とは裏腹に、女性陣の裸を露骨に見る訳にもいかない。少なからず、それが礼儀だと考えていた。

 そんな拓哉の思考を知ってか知らでか、彼女達は既に慣れた所為か、最近はそれほど恥ずかしがらなくなった。

 ところが、今日に至っては、どこか落ち着きがないように見える。

 それでも、知らんぷりを決め込むと、何事もなく入浴タイムが終了した。


 ――なんか、無性に気になるな。いったい、なんの相談だったんだ? いや、考えても仕方ないし……てか、眠い……


 彼女達の態度を気にしつつも、風呂を終わらせると、一気に疲れがやってくる。それと同時に、羊がメエメエと大挙してやってきた。勝手に瞼が閉じそうになる。

 限界だと感じた拓哉は、いつもよりも早い時間だが、就寝することにした。


「悪いけど、今日は疲れたんで、そろそろ寝ることにするよ。おやすみ」


 いつもなら全員がそそくさと後に続くのだが、なぜか今日に限って、いつもと反応が違う。誰もが後で行くと頷いた。


 ――ん? どうしたんだ? なんか、いつもと違うし……てか、疲れてないのか?


 彼女達が見せる反応を不思議に思うのだが、そこで女性陣が思いのほか元気であることに気付く。

 ミルルカとガルダルの二人は死闘を演じたのだ。普通に考えれば、その疲労は半端ないはずだ。ところが、二人ともソワソワしながらお茶を飲んでいた。


 ――いや、眠い。取り敢えず、寝よう。


 女性陣の態度を不可解に思いながらも、まぶたが塞がりそうな状況なだけに、あまり深く考えることなくベッドに突入した。

 すると、寝巻姿のクラリッサが部屋に入ってくると、拓哉の横に潜り込んできた。


「おまたせ」


 その行動に不可解なところはない。いつも通りのクラリッサだ。しかし、やはり女性陣の態度が気になる。


「なあ、みんなどうしたんだ? いつもと様子が違うんだけど。クラレの話と何か関係があるのか?」


「そうかしら。特に問題になるような話はしていないわよ」


 素っ気ないというか、白々しいというか、なんとも言えない答えに、首を傾げそうになったのだが、それを押し留めるかのように、クラリッサが唇を重ねてきた。


「うっ……」


 突然の口付けに驚いてしまう。しかし、拓哉の条件反射は、少しずつ成長しているようだ。熱い口付けをしてくる彼女を無意識に抱きしめる。

 ただ、その口付けからして、いつもと違う。やたらと熱く濃厚だ。


「なあ、ほんとに、どうしたんだ?」


 ゆっくりと唇を離すと、仄かに紅潮したクラリッサを見詰める。

 すると、彼女は少し恥ずかしそうな様子を見せた。


「今日の戦いで思ったの。戦場では、いつ誰が死ぬか分からないって。だけど、戦いはこれからが本番よ。だから……ゆっくりと愛を確かめ合う時間って、今しかないと思うの」


 モジモジとしつつ自分の考えを告げると、拓哉の耳元に唇を寄せて声で囁いた。


「私の初めてをもらって」


 その途端、羊の群れが霧散した。一気に眠気がぶっ飛んだ。お調子者かもしれないが、眠気よりも溜まった精力の方が上手だったようだ。

 ただ、今更ながらに、一線を越えることに躊躇する。


「俺でいいのか?」


 胸の鼓動が耳に届くかのように、激しく打ち鳴らす。

 ここで断られたら、きっと即死してしまうだろう。

 しかし、そんな落ちは用意していなかったようだ。いや、少し顔を顰めたクラリッサから苦言がもたらされた。


「台詞が違うわ。そこは愛してるぞ! って、言うところよ」


「そ、そうだな……クラレ、愛してるぞ」


「私も愛してるわ。それと、ありがとう」


 こうして俺はクラレと共に大人の階段を上った。

 本当は疲れているはずなのに、それを全く感じることなく肌を合わせ、激しくお互いを求め合い、貪るように愛を確かめ合った。

 彼女の身体を味わうかのように、あらゆる感覚を使って確かめる。

 敏感に反応する場所を見つけると、執拗しつように攻め立て、甘い吐息が聞こえてくるたびに喜びを感じていた。そして、彼女の囁き声に頷く。はち切れんばかりに膨れ上がった攻撃オプションを彼女にうずめていく。


「やっと、ひとつになれたわね。嬉しいわ」


「俺もだ。絶対に幸せにするからな」


「うん」


 行為の前にお互い例の薬を飲んだので、受胎についてはクリアだ。

 それもあって、激しく愛を確かめ合った拓哉は、溜まりに溜まって保管に困っていた実弾を思いっきり撃ち放った。

 とても幸せな一時ひとときだった。彼女は初めてだったが、執拗に拓哉を求めた。、拓哉は彼女の甘い声を聞く度に気分が高揚させた。

 ただ、大きな問題を感じたのは、彼女と余韻を楽しもうとした時だった。


「クラリッサ。次が控えてるから、そろそろ交代だよ」


 そう、寝室の扉を少しだけ開けて顔を覗かせたカティーシャが、ベッドで抱き合う二人にクレームを入れた。

 その途端、拓哉は卒倒しそうになる。


「も、もしかして、全員が? 今日、全員とするのか?」


 クラリッサとの愛を全力で確かめ合った拓哉は、未だ整わない息遣いで腕の中に居る彼女に、不安げな表情を向ける。


「あら? 一人だけなんて、不公平でしょ? ただ……カティ、少し早いわ」


 御尤ごもっともな意見が帰ってきた。ただ、カティーシャに対する苦言も忘れなかった。

 カティーシャはといえば、下着姿で部屋に入ってくると、仁王立ちで応戦する。


「クラリッサ一人でどれだけ時間を使ったか分かってるのかな? 夜は短いんだよ? だいたい、みんな薬を飲んで待機してるんだからね?」


「はぁ~、仕方ないわね……」


 カティーシャの意見が尤もだと考えたのか、クラリッサは溜息を吐きつつも、裸のままベッドから降りる。何を考えたのか、おもむろに拓哉の寝巻を羽織った。

 その魅惑的な姿に息を呑みながらも、拓哉はタイミングよく入ってきたことが気になって仕方なかった。


「なあ、カティ。なんで終わったタイミングが分かったんだ?」


 普通に考えて、聞き耳を立てるにしても、こんなタイミングで割り込めないだろう。

 そう考えれば、誰でも至る疑問だ。

 問われたカティーシャはといえば、何を思ったのか、視線を他所にむけた。


「知らない方が幸せだよ?」


 彼女の返事を聞いた時、拓哉は全てを理解した。


「見てるんだな。覗いてるんだな。俺のプライバシーをかえせーーーーーーーーー!」


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