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超科学の異世界が俺の戦場!?   作者: 夢野天瀬
第0章 プロローグ
152/233

149 異世界最強

2019/2/16 見直し済み


 弟達のサイキックが発動したのを確認して、キトルはこの任務が既に終わったと確信した。

 というのも、この流れはゴレタ兄弟における勝利の方程式だからだ。

 そんなゴレタ兄弟の前で、突如として閃光が放たれる。


「な、なんだ? ストップだ」


 ターゲットを目前にして、慌てて脚を止める。キトルは同時に弟達にも停止の号令をかけた。

 その閃光が攻撃でないことを祈り、すぐさま自分達の状況を確認する。そして、ホッと安堵の息吐いた。

 というのも、弟達が無事なのを見て、放たれた閃光が攻撃でないと感じたからだ。

 しかし、次の瞬間、弟達の驚く声が放たれる。


「おいおい! あれって、何なんだ? てか、エロすぎだろ」


「でも、一人だけヌイグルミになったよ?」


「どうやったかは分かりませんが、変身しましたね。というか、カトル君は見てはいけません。教育上よくないです。というか、恥じらいというものがないのでしょうか。なんと破廉恥な」


 ミラトとカトルが、変身した拓哉達を目にして感想を述べた。

 ただ、リトアは顔を顰めて、両手で末弟カトルの両目を塞いだ。

 暗殺者が教育を語るのも滑稽な話だが、リトアにとっては真面目な意見だった。

 素っ頓狂な感想を聞かされ、キトルが視線をターゲットに向ける。


「な、なんだと? あの閃光の間に着替えたのか? てか、なんて奇抜な恰好なんだ。てか、めっちゃそそるぞ」


「あの猫耳。結構、可愛いと思うな~」


「そうですね。あの胸の大きな三人の女性なんて、誰か一人、兄さんの嫁に来てもらえませんかね」


「僕は、あのヌイグルミが欲しいな」


「なに言ってるんだ! カトル。あれは縫い包みじゃないぞ」


「そうですよ。カトル君。あれは着ぐるみと言うんです」


 ――いやいや、そんな問題じゃないだろ! てか、なんでこのタイミングでオレの嫁探しをしてるんだ? でも、めっちゃイケてるのは確かだな。


 場違いな会話を続けている弟達の言葉に頭を悩ませていたのだが、突如として着ぐるみの男――拓哉が絶叫した。


「ここはタキシード仮面だろ! なんでルナなんだ~~~!」


 その悲痛な叫びの意味がゴレタ兄弟に分かるはずもない。

 ただ、自分の姿をなげいているのだけは理解できたようだ。

 そして、末っ子のカトルが首を傾げる。


「ねえ、タキシード仮面ってなに? ルナって?」


「さあ、分らん」


「きっと食べ物のことだぞ」


「そう思うのは、ミラト君だけですよ。本当に意地汚いですね」


 不思議そうにするカトルに素直に三人の兄が首を横に振ってみせた。おまけに、リトアがねちねちとミラトをなじる。


 ――確かに、小言が多いよな……


 次男の言動に呆れるキトルだが、直ぐに気を引き締める。

 というのも、拓哉の発言が理解できずとも、不穏な臭いが漂っているのを感じ取ったからだ。

 どうやら、リトアも何かを察したのだろう。訝しげな表情を見せる。


「どうしますか? 一時、撤退しますか?」


 正直言って、キトルもそうしたかった。隠形を見破るほどの敵が、良く分からない変身を遂げたのだ。警戒しても当然だろう。

 しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 変身した者達が、揃ってゴレタ兄弟に鋭い視線を向けていたからだ。


「やっぱり、オレ達の姿が見えるらしいな。あの様子からすると、オレ達が逃げたくても、見逃してくれんだろう」


「関係ないさ! やってやろうじゃんか」


「できれば、あの三人から一人だけ連れて帰りたいのですが……兄さんの嫁になってもらえませんかね」


 肩を竦めるキトルを他所に、三男坊のミラトが威勢よく拳を振る。次男のリトアは、未だに兄の嫁にしたいらしい。拓哉が聞けば、きっと大変なことになるだろう。

 どちらにしても、リトアとミラトは戦いに賛成だった。

 しかし、勘のいい四男の意見は違った。


「僕は逃げた方がいいと思うな~」


 キトルとしても四男の意見を受け入れたいのだが、現状を考えて無理だと判断する。


 ――どうする。一応、牢獄とアンチサイキックは有効だ。いまなら、なんとか逃げることもできるかもしれん。


 いまのところ、ゴレタ兄弟に有利な状況だ。逃げるなら今しかない。この機を逃せば、最悪の場合、全滅さえもあり得る。

 それを考えて、キトルが判断をくだそうとするのだが、状況は一気にひっくり返った。


「えっ!? どうやって私の牢獄を破ったのですか? サイキックは使えはずなのに」


 自分のスキルを破られたと知って、珍しくリトアがその二枚目の顔を歪ませた。

 その時だ。キトルの背筋を冷たい感覚が駆け抜ける。


「拙い! みんな逃げろ!」


 キトルは身も凍るような悪寒を感じて、これまでに味わったことのないほどの危機感を抱く。それと同時に、弟達に向けて退避の声を張り上げた。









 未だに納得のいかない拓哉が不満タラタラでいると、もはや戦闘などそっちのけで、未来の嫁達が必死になだめてきた。


「タクヤ、大丈夫よ。とても可愛いから」


「そうだよ、タク! とても似合ってるよ!」


「ちょっ、カティ、似合ってるって全くフォローになってないからね」


「わ、私は見た目なんて気にしないぞ。タクヤがどんな姿でも、お前を想う気持ちに変わりないからな」


「私は本当に可愛いと思います。抱き枕にしたいくらいです。いえ、是非とも抱かせてください」


 ――いやいや、好きなだけ抱き枕になってやるが、この着ぐるみは必要ないだろ!? だって、そのふくよかな感触を楽しめないじゃないか!


 クラリッサ、カティーシャ、キャスリン、ミルルカ、ガルダル、五人の嫁がご機嫌を取ろうとしているのだが、拓哉としては着ぐるみなんて必要なかった。いや、素肌で触れ合いたいと感じていた。

 ただ、そんなタイミングで、猫耳美少女戦士が現在の状況を連携してくる。


「ところで、襲撃者が固まってるですニャ……」


 変身している者の中で、唯一拓哉の嫁でないレナレは、敵の様子を覗っていたのだ。

 その言葉で、拓哉達は初めて変身後の能力に意識が向く。

 というのも、これまで見えなかった敵が見えるだけでなく、未だ距離があるというのに、彼等の会話までもが聞こえてくるからだ。


「凄いわね。これなら戦いも楽よね」


「これが融合の力なんだね。これってインチキじゃない?」


「これって、かなりズルいですよね」


「い、いや……」


 クラリッサ、カティーシャ、キャスリン、三人がミルルカに冷やかな視線を向ける。

 その見た目については、拓哉から可愛いと言われたことで、恥ずかしさを忘れたミルルカだったが、ズルいことに関しては自覚があったのか、何も言えずに押し黙った。

 しかし、そこにガルダルが追い打ちをかける。


「これなら、あの時見せたたっくん(・・・・)との戦闘も頷けますね」


「いわゆる、チートという奴ですニャ!」


「うぐっ……」


 極めつけは、どこで知ったのか、レナレが発した『チート』の一言で、ミルルカは撃沈してしまった。

 そこに、トトの自慢げな声が響き渡る。


『ウチの凄さを知った? 凄いやろ? それなのに、ミルルなんてウチを羽虫扱いするんちゃ』


 トトの愚痴を聞いた途端、誰もがミルルカに半眼の視線を向ける。


「い、いや、た、確かに、これは凄いが、こ、こんな格好になるんだぞ? そ、それに、羽虫扱いするのは、普段から奴がうるさいからだ!」


 周囲から冷たい視線を向けられたミルルは必死に弁解する。ただ、さすがに少しばかり可哀想に感じて、拓哉は助け舟を出すことにした。


「そんな事よりも、敵が見えるようになったんだ。さっさと片付けるぞ」


 本来の目的に戻ることにしたのだ。

 ところが、カティーシャが肩を竦める。


「敵って……四人の内、二人は子供だよ?」


 さすがに、子供がいることを不可解に感じたようだ。


「子供が暗殺業にいそしんでるのか? この世界も末期だな」


「でも、ララカリアの例があるわ。見た目が子供でも、年齢がその通りだとは限らないと思うの」


「確かに……ミス・ララカリアって、どうみても幼女に見えるもんね」


 ミルルカが渋い表情で嘆息すると、クラリッサが油断大敵だと釘を刺した。すると、キャスリンが納得の表情で頷く。拓哉にしてもその意見に賛成だった。

 ただ、そこでガルダルが重要なことに気付いたようだ。神妙な顔で仲間を見回した。


「確かに、トトのお陰で敵が見えるようにはなったのだけど、サイキックが使えなければ、私達は唯のか弱い女だと思うのだけど……」


 ガルダルが疑問を声にすると、全員の視線がミルルカに集中する。


「ああ、融合しても力が強くなったり、身体能力が上がったりはしないぞ?」


「だめじゃん」


 期待を込めてミルルカに視線を向けた訳だが、彼女からもたらされたのは、誰もが期待する答えではなかった。

 それ故に、カティーシャが軽率な言葉を口にしてしまった。


『だ、ダメなんやね……』


 トトの落ち込むような声が頭の中に響き渡った。というか、気分までも落ち込んでしまう。

 どうやら、気分まで同調しているようだ。


「こ、こら! カティ!」


「あ、あぅ……そんなつもりじゃなかったんだ。ごめん」


『……』


 いくらなんでもあんまりだと感じて、拓哉がたしなめると、カティーシャはすぐさまトトに謝る。しかし、沈黙だけが脳内を支配した。

 ところが、そこで美しき拓哉の一番嫁が口を開いた。


「あら、がっかりすることなんてないわ。この力は凄いもの。これで足らないと思う者は、自分の力を恥じるべきなのよ。だって、見えない敵に対して、この力だけあれば本領を発揮でいる者が居るのだから」


『……』


 クラリッサが慰めるが、トトからの反応はない。

 すると、肩を竦めたクラリッサが拓哉に向けた。


「それじゃ、どうぞ!」


「えっ!? もしかして、俺か?」


 拓哉は素っ頓狂な声を発して自分を指さす。


「だって、拓哉なら見えてしまえば、あんな障壁を破るなんて簡単よね? それに相手がどれだけ強くても、タイムストップがあるもの。だから、トト、落ち込むことはないのよ。あなたは鬼の金棒になったのよ。これで拓哉は、世界最強よ!」


『ほんと? ほんとなん? ウチの力で、世界最強なん?』


 世界最強と聞いて、トトが発した疑問の声が頭の中で響き渡る。

 それにどう答えたものかと考えていたのだが、クラリッサがコクリと頷いた。彼女の瞳は、拓哉からも元気づけろと言っている。


 ――その視線は……分かったよ……


 クラリッサからの圧力に負けて、拓哉はトトに告げる。


「その通りだ。お前の力で無敵になったぞ」


『や、やったんちゃ~~~! 無敵なんちゃ~~~!』


 頭の中に、トトの歓喜が響き渡る。


 着ぐるみ姿では全く様にならない台詞だったが、それでもトトが喜んでくれて嬉しく思っていると、クラリッサが敵に指を向けた。


「さあ、タクヤ。お願いね」


 ――どうやら、俺一人に始末をさせるのは本気らしいな……仕方ね~、嫁のいうことを飲み込むのも旦那の務めという奴だな。いいぜ! タイムストップ!


 こうして突如として襲い掛かってきた襲撃者を、拓哉は事も無く片付けることになった。


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