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貧乏は嫌だ

薮は貧しい家の出なので幼い頃から我慢の連続だった。それが今の我慢のきかない性格を形成しているのかもしれない。自分のことで自慢できるのは小学校が歴史ある学校だったということ。当時は学区制なので選ばれたものでもなんでもないのだが。


商品を売らなければならないMRは商品を買ってくれる薮に対して悪い態度はとらない。ちやほやして欲しい薮にとっては格好の相手だ。


「ここは田舎なので貧乏人が多いから高い薬は出せないよ」


などと、かつての自分をけなすようなこともMRさんに平気で言うのであった。

待合室に人がいるか、ドアがなく繋がっている隣の部屋で点滴をしている人がいるかなどといったことは薮の頭の中には存在しない。


そんな薮の趣味はパソコンだ。自慢話の中の一つにパソコンの本を出したというものもある。理解できなくて奥さんに長年丸投げしている確定申告で印税が入ったことはないらしいので、なんらかのものを載せてもらったというのが精々なのだろう。

実際、病院の予約票や様々な手続きをダウンロードするのでさえ盛大な文句を言いつつ時間をかけてやっているのでそのレベルはお察しである。奥さんがパソコンを使えないとバカにしているが、それならとっとと各種手続きを奥さんに丸投げしないでやれば良い。今の時代パソコンから書類を落としたりして手続きをすることのほうが多いのだから。


「マイナンバーなんてわからん!どうすれば良いんだ!」


と、偉そうにして教えてもらう立場だということを理解していないのだ。馬鹿にしてたら手伝ってもらえない。当たり前のことである。


そんな薮のパソコン活用法は映画の配信を見ることと株相場、そしてファイル共有ソフトだ。奥さんや従業員がわからないことを良いことに24時間つけっぱなしで様々なファイルをダウンロードしていた。

ひどい時には院長室だけでなく診察室のパソコンにもHDDを10台以上つなげ部屋に唸るような音を響かせていた。ダウンロードの内容は映画やアニメ、音楽にHな動画である。

そんな薮の天下も子供が帰ってきて幕を下ろした。病院で進行している事態に呆れた子供は薮が食事会に出かけている隙に全部捨ててしまったのだ。


「老後の楽しみに保存していたのに!」

「お前(奥さん)が命令したんだろう!やめるように言え!」


などと、帰宅して事態に気がついた薮は大層お怒りだったという。

翌日も不機嫌きわまりなく、


「とんでもない人間だ!」


と患者さんがいるにもかかわらず大きな声で怒鳴っていた。とんでもない人間なのは薮の方である。

子供は薮のことをセレブになりたいブタの“セレブゥ”だと言っていて皆で笑ってしまった。

他人にそう見てもらいたいならふさわしい振る舞いくらいすれば良いのに、食事もズズッとすするような音をたてて食べるので勉強会後の食事会でもさぞかし目立っているだろう。


そもそも、病院終了後に1時間以上かけて県庁所在地のある会場へ向かうので、市内からの参加者を想定している勉強会には必ず遅刻しているはずである。食事会目当てなのがバレバレでどう思われているか気にならないのだろうか。

まぁ、MRに遠回しに


「身内だけの小さな会ですので……」


と断られているにもかかわらず


「〇〇先生とは同級生で、久々に会いたいんだよ」


と無理矢理参加しようとするような人間には無縁な話かもしれない。奥さんが直接的にハッキリ注意しても


「羨ましいんだろう。悔しかったら医者になるんだな」


と言っていたくらいである。たとえ医者だったとしても恥ずかしくて家族として隣には座りたくない男である。


薮は家族にも邪魔されずに遊ぶ為、特に脳梗塞で倒れた後は病院の院長室にベッドを入れてそこで暮らしている。小さな個人病院内には風呂などの設備はないので必然的に風呂は温泉施設に通うことになっている。

勉強会終了後は再び時間をかけて帰宅する為夜遅くになる。その時に薮は風呂に入ることもなく、時に下着を変えることもなく翌日の診療にあたる。不潔な医者とは一体なんなんだろうか。夏場には靴や体から異様な匂いが漂ってくるほどである。

月の半分は勉強会、またどうも休日は着替えも風呂も入らず過ごしているらしい薮は患者さんに不快な思いをさせていることに気がつかないのである。昔から匂いがほとんどわからなかったので当然なのであるが、そうであるならより匂いには気をつけるべきではないだろうか?

こういったことからも自分の不快には敏感に反応するが、他人の不快は気にしない自分勝手な人間であることがわかると思う。


皆さんも臭い医者には気をつけてください。もしかすると3日も風呂に入っていないかもしれませんよ?

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