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皇帝と犬

作者: ざぶろ

 ジョリジオ歴1665年、マッシュルーム帝国帝王、マッハ6世は隣国、ザハトー共和国へと攻め込んだ。ザハトー共和国で虐殺された同胞の仇討が目的だと、名目ではそうなっていたが実際は違った。マッシュルーム帝国では雇用の激減が問題になっていた。そこでマッハ6世はザハトー共和国を併合し、そこで新しい雇用を生み出そうと考えたのである。

 ザハトー共和国とマッシュルーム帝国は、マッシュルーム帝国が宣戦布告したその翌日からさっそく真正面で剣を交えた。マッシュルーム帝国は強かった。帝国軍が使っていた武器は火星で採掘した特殊な元素をつかって生成した。この元素は最近発見されたもので、高温で溶かした後に固体化させるとこれ以上ないほどの硬さと繊細さを誇る。共和国軍は文字どうり草のようになぎ倒されていった。

 兵士たちが命をかけて戦っている時、帝国皇帝は一人部屋でむふむふしていた。というのは、その日新しいペットがやってきたのだ。遠い西の国から輸入した犬という種類の哺乳類だ。

 皇帝は犬のほっぺたに自分の頬をなすりつけた。

「むにゅむにゅー、僕のフランシス、かわいいフランシス」

 皇帝が犬と戯れていると側近があわてた様子で部屋に入ってくる。

「陛下! ただいま連絡が入りました。第4師軍が全滅しました!」

 側近は真っ青である。まさか師団を一つ潰されるとは夢にも思っていなかった。2年前からザハトーの共和国軍に密偵を送りこみ内部からの破壊工作を仕掛けていた。共和国軍は帝国軍を目の前にしてあっという間に崩れ落ちていくはずだったのに。

「陛下、まったく、我々の計算違いでした。こうならないようにあらゆる策を練ってきたつもりでしたが、それが実りませんでした。城を警備している師団を援軍として派遣することをお許し下さい」

「むふむふー、僕のフランシスー。僕のフランシス」

「陛下、聞いておりますか?」

 犬とむふむふやっていた皇帝は顔を上げて「うん、いいよ、援軍」と言った。やけにあっさりした口調に側近はのけぞった。

「い、いいのですか? この城を警備している兵団を持っていきますぞ」

「いいよ、全然」

「陛下……」

 側近は感激のあまり手を組んで天に祈るような仕草をした。皇帝陛下はきちんと我々のことを考えて下さっている。だからこうして師団の派遣も許可下さった。

 我々は良い主人を持っている!

 そう再確認した側近は部屋からもの凄い勢いで出て行った。

「むふむふー、僕のフランシス、僕のー」

 皇帝は犬がたいそう気に入ったようだ。きっとこの犬と一緒なら、城を攻め込まれ殺されても後悔はしないのだろう。

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