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空穿つ砲と飛べない鳥  作者: 月立淳水
空穿つ砲と飛べない鳥
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五章 アンビリア・二(5)


 二週間は瞬く間に過ぎていった。

 ジェレミーは、行政府とオコナー社の本部の間を何度も行き来し、隠れ蓑とした物資輸送計画の詳細を一挙に詰めていった。

 その計画は、英雄たるジェレミーの発案で、暴動を起こす原因となった物資不足を少しでも補うために起案され、調査官サイモンの尽力で予算化され、オコナー社が独占的に請け負うものとなった。これだけでも、ジェレミーがオコナー社にもたらした貢献は大変なものだった。かたやサイモンも、ジェレミーと協力して大規模な反乱を防いだことが高く評価されており、その彼の提案した予算執行案は瞬く間に系外惑星運営局アンビリア支部の委員会で承認されるほどにまで発言力を高めていた。おそらく彼の支部長昇進は間違いないだろうし、あるいは運営局長の座もあるかもしれない、とする声も聞こえ始めているほどである。この二人と、系外惑星において最大開発区シェアを持つオコナー社、三者が利害を一致させる計画はまさに激流のごとく突き進み、実に、立案から一カ月余り、ジェレミーの地下訪問から二週間でほぼ完全に実行可能なお膳立てが整いつつあった。


 ジェレミーは、その計画の最後に、アンビリアを飛び立つ星間船に行きがけの駄賃として資源を積み込むことをひっそりと付け加えていた。当然ながら、いかに政府の潤沢な予算がついているとはいえ、空船を飛ばすほど物流の原則を外す必要はない。これはオコナー社から最後の受注条件として政府に再提示され、容易に承認されていた。この行きがけの駄賃こそが、ジェレミーが本当に運びたいものなのであった。


 独立連盟の動きも素早かった。それまでは行動を制限していた彼らだが、連絡員となった決死隊はまだ逃げもせず捕まりもせず普通の暮らしを送っているメンバーに接触を始め、必要となる人員の確保を開始した。

 地下基地からのコンテナ輸送は、標準時の深夜とアンビリアの深夜が一致する少ないチャンスに行われた。二週間のうちに三回だけ訪れたその貴重な機会に、初回は物資、二回目は物資と大量の燃料、三回目にすべての居住モジュール、という順番で移設作業が行われ、三回目の作業を終えた時、系外惑星独立連盟の本部は廃コンテナ処理場にあった。


 移設作業と連盟構成員の再招集が終わった時、本部に集結した連盟メンバーは五百人に達していた。

 最後に、五百名の連盟兵を潜ませたコンテナは、いつの間にか、輸出物資倉庫のコンテナと入れ替わっていた。

 ジェレミーの指示でリュシディケとマエラで必要なものを集めていたラジャンは予定通り二週間後にアンビリアに到着した。


 ラジャンが任されたものはそれほど容易に集められるものではなかったが、ラジャンはたびたび危ない橋を渡るようなトリックを弄してそれら二組をかき集め、見事に八隻の星間船をそれで満載にしていた。

 時を同じくして、ジェレミー船団六隻もアンビリア上空に集結していた。

 出発の時刻に向けて、両船団の貨物空きスペースに次々と兵員を潜ませた居住コンテナが積み込まれた。


 積み込みの終わった船から順次星間カノンに蹴飛ばされて旅路に就いた。

 最後の船が星間空間に放り出されたのは、最初の船の発射から三十五時間後となっていた。

 こうして、ジェレミーによる独立戦争は合計十四隻という大輸送船団により幕が開けられた。



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