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車を走らせて数時間は経っただろうか。
地面にはちらほらと雪が積もっていた。
「あれは?」
不意に助手席から声がかかる。
ブレーキを掛け、左の窓を覗きこむと直線の道の端に小さな石が見えた。
「見に行ってみる」
私の返事も待たずに佑太が車を降りてしまう。
ため息をつきながら車を降りる。
外は痛い程の冷気に包まれていて、慣れない雪国の冬に身を震わせた。
「何が気になったの?」
大人の男の膝以下の石の雪を払う背中に問う。佑太の横にしゃがみ込み、石を観察してみる。
「何か彫ってある」
雪を払っていた彼の手が止まる。
コートの内ポケットから懐中電灯を取り出すと僅かに周りが明るくなった。
石を見ると所々苔むし、朽ちたただの石にしか見えない。しかし指で石をなぞると何かが彫られた形跡があった。
「帰りに確認しよう、明るい時間じゃないときっと解らないよ」
服に付いた雪を払い立ち上がる。それに習い、佑太も立ち上がった。
冷えた体には車の暖房が暖かい。
車に戻り少し走らせると大きな川と水車、数件の民家がライトに照らされた。
「着いたみたいだね」
隣で地図を見ていた佑太に声をかけられる。思ったよりも早く着いたみたいだ。
今思うとさっき熱心に調べた石は村の入り口を示していたのかもしれない。
時刻はまだ午前3時前。
目的地か確認を取りたい所だが、この時間だと住人は寝ているだろう。
「車内泊?」
「ですね…」
一番聞きたくない言葉を聞いた。
仕事柄、車内泊はよくある事。しかし欲を言うならやっぱり暖かい布団で眠りたい。
隣では車内泊に頓着がないのかゴソゴソと寝る準備を始めている。
「寝ないと明日辛いよ?」
「解ってる…」
諦めて私もシートを倒す。
目をつぶると運転の疲れか、すぐに意識を失った。
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