はなちゃんの忘れ物
黄色い壁に焦げ茶色の屋根、庭にはたくさんの花。それがはなちゃんの家。
庭に出て探し物をしていたはなちゃんとホリーさんはスタンタンが来たのが見えたので顔を見合わせた。
「はーなちゃーん!」
きりこがはなちゃんの忘れていった紙袋を手にスタンタンから降りて来た。
だわさもきりこに続いて降りてきた。
「やあやあ、ホリちゃんも来ていたんだね。はい、はなちゃんの忘れ物。」
「まぁ!今きりこさんのところに荷物を忘れたこと思い出したんです。なんてタイミングでしょう!」
はなちゃんは嬉しそうにきりこが差し出した荷物を受け取った。その横で、
「私もさっきお茶をしに来たところでした。荷物あってよかったですねぇ。」
とホリーさんが胸を撫で下ろしたように言った。
「私ってばホントにうっかりしていてごめんなさい。わざわざ届けていただいちゃって。」
はなちゃんはペコリと頭を下げた。
「気にしないでよ、はなちゃん。ジャムをもらったんだから。」
きりこが言った。それでもはなちゃんはすまなそうにして、
「ホントにごめんなさい。ところでジャムの味はどうでした?」
と聞いた。
「まだ食べてないだわ。食べる前に出てきたからね。」
とだわさが答えると、
「君が言ったからね。」
ときりこが言った。
「まぁ、だわささんごめんなさい。だわささんのおやつタイムまで台無しにしてしまって…」
またはなちゃんがしょぼんとしたのであわててだわさが言った。
「ちょうど私が帰って来たとき、きりこが出ようとしていたからついでについてきただけなんだわ。帰ってからスコーンと一緒にジャムはゆっくりいただくんだわ。」
「君が行こうと言ったんだがね。」
とまたきりこが横で言った。
「せっかくだから一緒にお茶会しましょう。さっきお茶を入れたばかりで、ホリーさんも着いてそうそう荷物探しをしてもらって、まだお茶も飲んでなかったですから。さぁさ、あがってください。」
そう言うとはなちゃんはみんなを台所に案内した。みんなゾロゾロとついていく。
「ムッ、いい匂いなんだわぁ。」
台所に入るなりだわさが言った。
「パンケーキを焼いたんです。ジャムつけて食べてください。」
「パンケーキ!?」
だわさの目が輝いた。
「確かだわささんの大好物でしたね。たくさんありますから、遠慮なくどうぞ。」
そう言ってはなちゃんは先ほど入れたお茶を新しいのに入れ直し、みんなにパンケーキとお茶を出した。
「じゃ、遠慮なく」
手作りの木苺ジャムはトロリとして、ふんわり焼き上がった黄金色のパンケーキにのせるとゆっくり広がった。
「いやはや、いつもはなちゃんの作るお菓子は美味しいですねぇ。」
うっとりとホリーさんが言った。
「うん。天才的だね。」
きりこもパンケーキを頬張っては幸せな顔をした。
一番ガツガツ食べているのはだわさだ。口にパンケーキを入れたまま、
「ひわわへ、ごくっ。最高だわね。あたし毎日はなちゃんちのお茶会参加したいだわ」
と言った。
「はい、ぜひ来てください。でもだわささん、お仕事忙しいんですか?訪ねた時いつもお留守みたい。」
「別に忙しくはないんだけどね。たまたまはなちゃんが来た日はバイトなんだわね。」
「そうだね。はなちゃんが来たのはだわさがバイトの日だね。」
きりこが言った。
「私、毎日おやつ作ってるんです。作るのが楽しくて。なのでいつでも来てくださいね。美味しいと言って食べてもらうのが好きなんです。だわささん、おかわりは?」
はなちゃんはだわさの皿に二枚目のパンケーキをのせた。
「いただきます」
「私はいつもおじゃましてます。」
はなちゃんと大の仲良しなホリーさんはいつもはなちゃんとお茶会をしている。お茶会は二人の日課なのだ。
「いいなぁ、ホリちゃん。」
「ところではなちゃん、うちに忘れていった荷物はなんだったんだい?」
きりこがたずねた。
さっきの紙袋を見てはなちゃんが、
「これですか?明日のおやつの材料です。」
と嬉しそうに言った。