だわさときりこ
花を摘みながら家に帰りつくと、きりこがベランダで洗濯物を取り入れていた。
「ただいまなんだわ」
ベランダの柵の外からだわさが言うと、
「あ。お帰り、だわさ。おやつ作ってあるよ」
ときりこが言った。
「今日のおやつはなんだわかね?」
だわさは摘んできた花をきりこに差し出して聞いた。
「ん、今日のおやつはスコーンにしたよ。おいしいジャムをはなちゃんにもらったんだ。この花は?」
花を受け取りながらきりこが言った。
「きれいだったから摘んできたの。テーブルに飾ってくんない?スコーンか…。はなちゃんのジャムとは、うまそうだわね」
「ま、ね。あがったら?」
「いんや。タバコがないのよ。買いに行こうと思ってさ」
「おやつの後で行ったら?スタンタンで乗せてくよ」
「じゃ、今乗せてってよ。おやつの後だとおやつの時間に一服できないだわ」
「しょうがないね」
きりこは花を持って部屋の中に消えたかと思うと、今度は手に何か紙袋とスタンタンのキーを持って玄関から出てきた。
「わりぃわねぇ」
「ちょうど良かったよ。はなちゃんが何か忘れ物してたんだ。ついでに届けて来よう」
だわさときりこはスタンタンに乗り込んだ。
きりこはスタンタンのエンジンをぶるんとかけ、スタンタンを発進させた。
「ところでだわさ。君の頭についてる羽はなんなんだい?」
きりこが言った。
「あ、これ?これは…!」
だわさが頭の羽をさわろうとした時、オープンなスタンタンの上をビュッと風が吹いて、羽が飛んで行った。
「あれ、飛んじゃったのかい?」
だわさの頭を見てきりこが言った。
振り返っても羽は見えなかった。
「いいんだわ」
だわさが言った。