紫織探偵事務所
『え?ダウジングで探し物?』
そう、と嬉しそうに頷くのは僕の雇い主の内藤 紫織さん。
艶やかな黒髪、色白な肌、笑った時にできるえくぼ、瞳は黒くても優しい目。オカルト、SF、科学好きという女性にしては珍しい趣味を持っていても美人。
今日も{入門!ダウジング}と書かれた部厚い本を楽しそうに読んでいた。
『聞いてる?蒼真くん?』
反応を示さない僕を不審に思ったのか顔を覗きこむ紫織さん。答えようとしたところで、インターホンが鳴り響いた。
『 はーい』
紫織さんがぱたぱた、と小走りで玄関へ向かっていく。
『依頼者の、吉原です。』
僕の出した日本茶を飲むと一息ついて、自己紹介を始めた。賢そうな眼鏡をかけていて、髪を後ろに一本で束ねている。
話を聞いていくと、依頼内容は犬を探して欲しいと言うことだった。早速写真を見せてもらうと笑顔の吉原さんと一緒に写っているのは、黒いドーベルマンだった。なぜこの犬をが見つからないんだ?
『ショコラがいないと…!』
泣き崩れる吉原さん。どうやら吉原さんの黒いドーベルマンはショコラと言うらしい。見た目と名前が合わない。見つけても分からないだろう。
『心当たりは?』
首を傾げながら聞くと、考え込んだ吉原さんは思い出した、と言うように手を叩いた。
『日本のどこか♪』
この依頼は大変だな、と日本茶をすすった。