世界が平和になった理由
「やはり来たか。神よ」
「テオ様…!?」
「久しぶりだな。少し大きくなったか?」
リリアを頭を軽く撫で、視線をティナに向ける。
「…私はステラの思想通り、完璧な世界を作りたかった。未完成で愚かな者たちなど消して…どうしてお前らは邪魔をした!!」
「完璧な世界?くだらない。未熟だからこそ努力するのだ。未完成だからこそ愛が生まれるのだ。私が完璧な世界を作っていたら、お前は魔王に恋などしなかったであろう!!」
「!!…負けたよ。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。」
「その前に、寄る所があるだろう?」
猶予をもらったティナはクルムの家へと向かった。ノックをするとドアから目を赤くさせたクルムが顔を覗かせた。
「ティナ…?」
「久しぶり」
ティナは精一杯の笑顔で応えた。
「…変わらないな」
「ティナはすごく変わったね…」
「クルム、すまないことをした。私の所為で勇者が…」
「ティナはボクにとって、すごく尊敬できる先輩なんです」
「…」
「だから、最期までかっこいい先輩でいてください」
「……っ」
「だめですよ、先輩。後輩の前で泣いちゃ…」
「もうよいか」
「ああ」
「テオ様、その人をどうするつもりですか!?」
「案ずるな。転生するだけだ。愛娘を泣かせるようなことはしない」
「ありがとう…お父様」
テオは手をティナの額に置き、深く念じる。するとテオの手の平から光が発し、瞬く間にティナを包んだ。光が消えるとそこには一人の少年が横たわり、眠っていた。
「…この子が、ティナ?」
「こやつはティナが転生し生まれたただの人間だ。ディアよ、せめて十六の成人までこやつを世話してくれぬか」
「わかりました。…カイヤのためにも」
「でも名前が要るよね。ディア、なにか付けたら?」
「そうだな…マオ、マオがいいな」
「私たちは教会に帰りますね」
「ボクも世話係に戻るよ」
「みんな、元気でね」
「ディアこそ…たまには遊びに来てね」
「うん。じゃあ」
「…またね」
ディアはマオを抱え、自分が生まれた村に帰るのだった。
fin
なんとか完結しました。今までありがとうございました。




