ティナが魔王に仕える理由
勇者さんたちの物語を語るにあたって、ボクがティナについて少しだけ説明します。
ティナはボクが天使職に就いたときにお世話になったお世話係だったのです。
天界について知ってることから知らないことまで、全て教えてくれました。
そしてボクたちは二人一緒に神様専属の世話係になりました。
…異変が始まったのはこの頃でした。
ティナはいつの間にか怪しい術に手を出していて、よく分からない生き物を沢山生み出しました。
大抵の生き物は生まれて直ぐに死んでしまいました。『抜け殻』の生き物もいました。
夜中に一人なのに誰かと話している時もありました。
そしてその数ヶ月後、術の研究がばれて天使職からの退職、天界からの追放を命じられました。
いわゆる『堕天使』になったのです。
それからの消息はボクもはっきりとは分かりません。人間界に降りた時はティナに会えるかもしれないと、わくわくしたこともありました。
でも今、そうは思いません。ティナに会わなかった方が幸せに過ごせたかもしれません。
なぜなら、二十一年ぶりあった彼は、
全くの別人だったのだから。
ティナは街のはずれにいた。
「…ここにいたのか」
「もう少し、弔う時間をくれ」
ティナの足元には土が盛られ、上に大きめな石が置いてあった。
「…用は何だ」
「君は、自分の罪を理解しているのか」
「そう、だな…。この世界の者たちには申し訳ないことをしたと思っている。言い訳になってしまうが…それでも、この堕天使の最後の足掻きだと思って、聞いてくれないか。私も主張はしたい」
「……」
無言の肯定。
「私は魔王…いや、ステラを…愛してしまった」
「!!」
「私はただ、想い人のために動き、尽くしてきた。ただそれだけなんだ」
「魔王と堕天使の恋か。滑稽だな」
そこには皆が知る顔があった。
今回はきりがいいです。