カイヤが羊皮紙を渡した理由 前編
魔王ステラによって荒らされた街に向かうため、その一つ手前の街、リッグに滞在しているディアとリリア。二人はそこで一人の少年に出会った。
「カイヤ?カイヤなの?」
少年はディアに聞き寄る。
「えっ、えっと…」
「どなたか存じませんが…彼はカイヤではなく、ディアですよ」
「あっ!ごめんなさい。ボク、人を見分けるのが苦手で…」
「いいよ。気にしてないから」
「よかったらうちに来てください。見たところ旅のお方ですよね?」
二人は彼の厚意に甘えることにした。
少年の家はとても小さく、一人で暮らしているようだった。
「あの、カイヤという人はどんな人なんですか?」
話を切り出したのはリリアだった。
「何ヶ月か前に旅にでたボクの息子みたいなものなんです」
旅に出た?やっぱり、カイヤって…
「もしかして、あなたが言っているカイヤって、勇者の…」
「よく知ってますね。もしかして、カイヤとお知り合いですか?」
「知っているもなにも、僕たち、勇者だから…」
「そうだったんですか!…なら、ボクのことを言ってもいいですね。はじめまして。ボク、天使のクルムっていいます。カイヤを育てました」
どうりで幼い割にしっかりしている。
「カイヤは元気にしてますか」
「はい。たまに会います」
「私は一回しか会ったことないですけど…」
「よかった。これからもカイヤのこと、よろしくお願いしますね」
その日はクルムの家の近くにある宿屋に泊まることになった。
あの日からディアもゆっくり寝ることができるみたい。
私はちょっとした気分転換に、外を散歩していた。
「クルムさんに会わないの?」
クルムさんの家の前でカイヤを見つけた。
「……」
「あれ、カイヤ?…じゃなくてディア?やっぱりカイヤだよね?おかえり!中に入って!」
「…ほら。行ってきなよ」
バッ!
「…これを渡しに来ただけだ」
そう言い彼は去って行った。
クルムの手の中には一枚の羊皮紙が握られていた。
「これは…?」
きりが悪かったので前後編に分けました。