ディアが昼間によく寝る理由
ディアと旅を始めて1ヶ月。いろいろなことを知りました。
旅の知恵はもちろんのこと、ディアが強いこと、そして…彼が昼間によく寝ることです。
僕、ディアはリリアと部屋で分かれた後、こっそりと宿屋を出た。
空を見上げるが、星の姿はあまり確認できない。
最近、闇が濃くなっている気がする。…僕の中の闇の意識も。
…ドクン
いつもより心臓の鼓動が大きくなる。息が苦しくなり、立つのもやっとの状態になる。
「っぐ…今夜も来たか…」
眼が紅くなり、髪が白く染まっていく。
意識が、奪われていく…
キイイイイン
剣が交わる音がした。しかし『僕の体』は片手で剣を捕らえている。『僕の体』は、剣を振るった人に向かって言う。
「今夜も来たか。黒の勇者よ」
「いい加減くたばれ。魔王ステラ」
そう。僕の中にある闇の意識は今僕達が倒そうとしている魔王なのだ。
まだこのことはリリアに伝えてない。
その後も黒の勇者、カイヤは魔王に向かって剣を振り、魔王はそれを受け流す。
しばらく戦い、二人とも息が切れてきた。
「今回は我も剣を持っていないこともあり、ちと分が悪いの。今夜はこれぐらいにしておいてやろう」
「!!待てっ!いつまでそうしているつもりだ!!」
「そうだな…我の封印も大分解けてきたからのう。もうしばらくしたらこの不便な器からも出られるかもしれん。じゃあの」
すると僕の中の闇の意識が薄れていく…。
髪や眼の色も、僕の色に戻っていく。
剣を収めたカイヤがこちらに向かってくる。
「大丈夫か」
「…うん。まだちょっと朦朧としてるけど…」
「そうか。最近おまえに着いて来ている女は何者なんだ」
「あの子はリリア。彼女も勇者だ」
「…そうか。遂に三人揃ってしまったか…」
そう言うとカイヤは僕に背を向け、夜の闇に向かっていく。
「カイヤ!あの子には僕が『魔王の器』だということは言わないでくれ!」
「…怖いのか?」
カイヤは僕に背を向けたまま、話す。
「そうじゃ…」
「…とにかく、ちゃんと自分の意識を保っておくんだ。今はそれぐらいしか魔王の対策は出来ないからな」
「…うん」
昼間に寝るのは、夜に出てくる魔王の意識に少しでも対抗するため、夜でも起きていなくてはいけないから。
これが、ディアが昼間によく寝る理由。
今回は超展開でしたが、如何だったでしょうか。次回もよろしくお願いします。