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すごく短い銀丈

雪女

作者: 銀丈

 好きな相手ができた。

 けれど、自分は相手と違う。絶望的な壁がある。

 だから、すがるように、約束を託す。

 違う存在としての私を、誰にも教えないで。せめてあなたは、私を遠いものだと言わないで。

 好きな相手と共にありたいという、ささやかで、だからこそ渇いてやまない願い。

 それを叶え過ごす、満たされ、溺れる、かけがえのない時間。

 相手との間にそびえているはずの壁は、かつて相手に託した約束と共に心の底に押し込めた。抱えた不安は見ないふり。一緒にいたかったから。

 しかしあるとき、約束は破られてしまった。

 再び、自分は相手と違うものとしてしか居られなくなってしまった。

 約束を違えたからと、殺めることなどできはしない。そうであればそもそも相手の元へなど来なかった。

 ただ悲しかった。

 相手を案じて。

 相手との間の子を案じて。

 自分を融かす温かな夢を惜しんで。

 ずっと。好きだ。好き「だった」などと忘れ去ることはできない。

 呼んでほしい。

 触れてほしい。

 それでも、自分は違うのだ。


 こぼれたものは、吹雪に消えた。


雪女が来るのは、きっと監視なんかではなくて――ただ好きだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雪女の昔話は今まであまり思い入れというものはなかったのですが、このお話を読み、作者さまの美文と筆力のおかげというのもあるのでしょうが、色々と考えさせられました。古代中東・ギリシャあたりの神…
[一言] 最初に『雪女』とある以上、人間ではないことは分かっているのに 終始好きになってしまった人間を『彼』や『あの人』ではなく、 『相手』と呼び続けるところが、長い年月、何度も同じことを繰り返しなが…
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