青い爪を
夜中の電話はろくな事じゃない。
「飲ませ過ぎたみたいなの」
極上の笑顔でまだ酒を喉に流し込むのは小枝さんだ。
少しアンティークなアバズレは赤いルージュを申し訳なさそうに歪ませた。
「姉がご迷惑おかけしました」
うーうー言いながら蓉は唸っている。
もしあと一滴アルコールを彼女にいれたら、間違いない吐く。
それまで飲んでいた。
「蓉、帰るよ?」
「かえ、る」
弱弱しく答えるが、立つ気はないようだ。
正確には立てれないのだろう。
「一体何杯飲ませたんですか」
「……さぁ?」
軽く睨むと笑いながら肩をすくめた。
「でね、少年よ。
私は君の大切なお姉さまの振られ噺を熱弁され、暴れられて、お気に入りの男に意味不明な電話をされるわ、変な男に声をかけらているこの子を連絡のつかない弟を待っていてほって置くにおけない状態になって終電を逃して待っていた友人を泊めてはくれないかしら?」
軽く肩をすくめて笑うと彼女はグラスを傾けて笑った。
「ねぇ、大恋愛って何回すると思う?」
「…運が良ければ一回かな」
「でもこの子は毎回大恋愛だわ」
くたっと彼女はテーブルに凭れて彼女は言った。
「羨ましくなるわ、愛を信じてる彼女が」
「小枝さんは信じてない?」
ソファーに座り、スヤスヤ寝だした蓉の上に上着をかける。
そしてダーティマティーニを注文した。
「あたしには訪れないかもね」
そう言って笑う彼女は少し寂しそうで、幼くみえた。
「ねぇ、貴方には愛ってやつが来た?」
「僕は要らない。蓉が幸せになればいいから。」
「…そう。このシスコンが」
そっと綺麗に整えられた爪を頬に当てた。
暗がりできらりと光るターコイズ。
それは誰かを傷つけてきた、そして自分を傷つけてきた色のような気がした。