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目玉が溶けるまで

貴方だけが好きで

貴方に好きになって欲しかった

叶えば、何も怖くなかった

友達の彼氏を奪った事も

ママのお小言も


貴方が本当に好きだった


「全部捨てて」


泣かないのはあたしの主義だった。


「全部いらない」


惨めなのは嫌い。


でも今のあたしは惨めで醜くくて、憐れだわ。

ウォータープルーフじゃないマスカラは繊維で瞼にボロボロ落ちて、ケイトのアイシャドウは溶けてる。


「全部は捨てれないよ」

「いらない、みたくないの」


ダダッコのように泣くあたしを困った顔で見つめるのはあたしの双子の弟。


「携帯は捨てちゃだめだよ。

あいつのメモリは消したしメールも着信履歴も消しただろ?」


「嫌なの、思い出したくないの。」


「じゃあ、明日新しいの買い替えよ?」


優しい手の平にあたしはまた泣けてくる。


優しくされればされるほど喉の奥に角砂糖を詰まらしたような閉塞感に満たされる。


白い携帯。何千通と貴方とメールした。

何時間も下らない事話した。


そんな記憶は捨ててしまいたいの。


「捨ててよ。」


こんなに嫌なのに。

思い出すのは貴方の手の熱さ。

何を話していたかなんか覚えてないけど、貴方の温度は覚えてる。


「ねぇ、なんであたしじゃダメなの。

あの子ならいいの?」


「バカな男だから。

蓉の方がいい女だよ。」


泣くなとは言わない弟、尋にあたしは甘えてまた涙をボロボロ溢す。


「窒息しちゃいそう。

今頃あの人はあたしに触れた手であの子と寝たりキスしたりしてるんだよ?」


あたしが愛したあの指先で、あの温度で。


酷い裏切りだわ。


解ってる、解ってた。

あの人はあたしのものじゃない。

だから心は自由だっていつも言ってた。


ねぇ、それを言う度にあの子とあたしを比べてたの?

いつから、比べてたの?

いつ、あたしを裏切ったの?


二人で優越感に満ちた罪悪感をわけあってたの?


「あたし惨めだわ、尋。」


「んなことない」


「嘘、を何時からつかれてたの。

あたしを、どうして裏切ったの。

どうして裏切れるの?

嘘はつかないって、約束したのよ?

なんで、簡単にあたしを捨てたの?」



言えば言うほど泣けてくる。


あたしは、ただ愛しただけなのに。


何でこんなに惨めで,辛くて、哀れなの。


なんで、なんで、こんなに辛いの。


「わからないけど、俺は今あいつを殺したいよ。

蓉をこんなに泣かせて、苦しませてるあいつを殺してやりたい。」

「ねぇ、尋、あたし幸せになりたいよ。」


尋は微かに笑った。


「男を見る目がないんだよ、蓉は。」

「…かもしれない。でも好きだったの。」


好き、凄く、好き。

どうして、この思いを過去にしたの。

何回も好きって言い合ったのに。


あの子に優しくする、貴方なんてみたくない。


あたしは今醜い顔をしてる。


きっとメデューサも逃げ出すぐらい醜い。

ヘラの嫉妬ぐらいあたしはあの子を憎んでる。


あたしがいたのよ。

彼の隣には。


彼のベッドの壁側はあたしのもので


埃っぽい部屋で陽射しにふわふわ舞う埃をみるのはあたしの楽しみだったのに


彼の部屋のプーさんはあたしの為に彼がとってくれた


全部あたしのものだったのに。


あのベットにはあの子が寝るの?


あたしのための場所にあの子がいるの?


なんで?なんでなの?

あんなに一緒にいようっていったじゃない


好きだって


嘘つき


嘘つき


なんで貴方は上手に嘘をつけるの?


何が貴方の本当か嘘か判らない


幸せになりたいだけだったのに


「目玉が溶けるまで泣いていいよ」


涙が止まらない。

苦しくて、

息が継げない気がする


「恋、だったんだよ。

苦しくて、辛い。

…でもいつか思い出になる。」


先なんて考えられない。

考えたくない。

貴方が存在しない毎日なんて。


でも、あたしはいつか彼を忘れてあの子を許すのだろう


だって、今あたしを抱きしめる温度がそういうのだから。


私の半身はあたし以上にあたしを知っているから。


だから今は唯泣かせて。

目玉が溶けるまで。




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