荒れた川と汚れたスニーカー
日本のどこかにある川、その上に架かる橋で、ルイは柵に足をかけていた。
背後には同い年位の親戚。確か、祖父のはとこの母の妹の……まあ、そんな感じだった気がする。
そいつがルイをじっと見つめる。
その日はつい先日まで大雨が降っていて、川の流れが荒かった。そのごうごうという唸りと、親戚と自身の息遣いだけが聞こえる。
その冷たい視線を思い出しながら、溜息を一つ吐く。
前だけを見ながら、一歩踏み出す。不思議な事に、この足の行く末に異論は無かった。
ざぶん、という音と共に、身体が深く深く、沈んでいく。意識が深く深く、落ちていく。
——ルイは古い家系の末端に産まれた人間だった。
といっても母は直系の人間で、じゃあなんで末端なのかといえば、母はルイが幼い時に亡くなったことと、父と半ば駆け落ちで結婚したからだ。
だが、父は権力を欲した。ルイを当主に育て上げ、自身が実権を握ることを夢見てしまった。
小さい頃はそこまででもなかったような気がするが、正直あまり覚えていない。
とにかく、気が付いた時にはすでに、ルイの前には当主になるための道が敷かれていた。
古い家系となればその分、ライバルとでも呼ぶべき、同じ座を争う人々が多くいる。下は七歳、上は三十歳にも上る人々を蹴落とす必要があった。
そんな風だから人の恨みを買う事が多かった。ルイの死因も、積もりに積もったそれが成したものだろう。
改めて道の先を見ると、おじいさんの説明通り、確かに、ずっと遠くに建物の集まる場所があるのが見えた。運良く正解の道だったらしい。
いつの間にか黄土に塗れたスニーカーを見て、街に着いたら服装も変えなければ、と思う。




