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明るい光が差し込む。
朝の気配がする。
「ん〜?、、、、ひっ!!!」
目を開けると、目の前には金の男がいてこちらを見ていた。
朝日を浴びてキラキラと光っている。
びっくりして寝起きの心臓がバクバクとうるさいが、ちらりと見ると男も私も服は着ていた。
恐れていた事態にはならなかったらしく、私は安堵のため息を吐いた。
「──。」
男が何か呟くとスイッと指を振った。
─チリンッ
同時に鈴の音のような音が聞こえ、しばらくするとノックの音が響いた。
メイドさんのような格好をした人がワゴンを押しながら中に入ってくる。
とたんにいい匂いが部屋に広がる。
ワゴンの中身は食事をみたいだ。
─ぐぅぅ
静かな部屋に私のお腹の音が響いた。
男やメイドさんの視線がこちらに向くのがわかる。
恥ずかしさに俯いたが、顔に熱が集まってあつい。
でも、色々あったせいでもうきっと丸一日以上ご飯を食べていないのだから仕方ない。
開き直って顔を上げると、男に席に着くよう促された。
メイドさんによって、ミルク粥のようなものと新鮮そうなサラダ、湯気が立ち上る美味しそうなスープが用意された。
ごくりと喉がなる。
食べてもいいのだろうか。
男の前には何も用意されていない。
じっと男を見ると、目の前の料理を顎で指された。
食べろ、と言っているようだ。
メイドさんも控えている中、こんな衆人環視の元で毒を盛ったりする意味はない。
第一、私に危害を加えるなら既に寝込みを襲っているはずだ。
そう結論づけて、もう一度料理を見る。
目の前の人物が何者か、そもそも人かも分からない。
ここは元いた世界じゃないのかもしれないし、ここまで連れてきた人達やこの男の目的も分からない。
そもそも言葉が通じないのだから無理だ。
それならば、今お腹が空いているんだから目の前のご飯をいただいてしまうのがいいだろう。
カチャ。
カトラリーを手に取り、ミルク粥を掬う。
無意識に震える手で、1口食べた。
美味しい。
まろやかでじんわり沁みるような味だ。
スープも掬って飲んでみる。
くたくたに煮込まれた野菜が蕩けて本当に美味しい。
久しぶりの食事に、夢中になってパクパクと食べ進める。
「口にあったようだな。」
不意に聞こえてきた声に、バッ!!っと顔を上げる。
今、喋った????
急に日本語が聞こえたんだけど。
「どうした?
冷める前に食べてしまえ。」
また、目の前の男が喋った。
口を動かすと同時に言葉が紡がれているのだから間違いなさそうだ。
あれか。
やっぱり私は死んで、ここは死後の世界なのか?
よくある話で、黄泉戸喫。
つまり黄泉の食べ物を食べた人間は、もう現世へは戻れなくなるという話だ。
昔何かで読んだ気がする。
それと似たようなことなのか?
一人であれこれ考えながらも口内にある分を咀嚼して飲み込む。
食事の味に違和感はない。
まぁ、私に至っては現世になんて絶対に戻りたくないから別に構わないことか。
それこそ死んでも戻りたくない。
とりあえず、言葉が通じるようになったのは良いことだと考えるようにして、残りの食事を胃に収めた。
やっぱり図太めの主人公。




