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「はぁっ、はぁっ、、、!」
ひたすら走る、走る。
栄養の足りていない体はもうとっくに悲鳴をあげていて、肺や心臓は息をする度にちぎれそうなくらい痛むし、喉からは血の味がした。
3月上旬になってもまだ雪がチラつくようなこの地域で、徐々に体温が奪われて手足の感覚もなくなってきた。
人生でここまで必死に走ったことはない。
でも走らないとあいつに追いつかれるかもしれない。
その思いだけが体を動かしていた。
着乱れた高校のセーラー服に、靴はなく擦り切れた白の靴下、殴られた顔は腫れ上がって、血の滲んだ顔で夜道を全力疾走する私は異様な姿だっただろう。
後ろから男の怒声が聞こえる気がする。
振り向くヒマも、勇気もなくそのまま走る。
角を何度も曲がって、めちゃくちゃに走って、ここがどこなのかももう分からない。
だんだん人気のない道に入り込んで、周りに木々が増えてきた。
もう少し走ったら撒けるだろうか。
そしたら、そしたら、、、
近くの人を探して交番の場所を聞いて保護してもらおう。流石にこの見た目なら訳ありだと判断してくれるだろう。
あともう少し、
そう考えていた。
でも、
「おい!!!!!待てっ!!!」
聞き慣れたその声はすぐ近くから聞こえたような気がした。
やばい!!、追いつかれる!!
もしかしたら、本当は後ろに男なんていなくて、私の恐怖心から来る幻聴だったのかもしれないけれど。
もうほとんど恐慌状態だった。
逃げなきゃ!!
その一心で、道の先に見えたガードレールを飛び越えた。
その先にあったのは、
──崖だった。
「あ、」
ガクンッ
だめだ。
体が重力に従って下へと落ちていく。
死んだな。と思った。
もう力の入らない全身を宙に投げ出してそのまま落下を受け入れる。
まぁ、生きていてもロクなことなかったし。
ここで終わり。それで良かったのかもしれない。
男に辱められることもなく、あとは地面に叩きつけられる一瞬の痛い思いだけで済むのなら。
正直、どこかほっとしている自分もいた。
来世とやらがあるんだったら、次はもう少し幸せに生きたいな。
──ああ、疲れた。
体が地面に付くのを待たずに、
私は意識を手放した。




