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──ガシャーン!!!
「お前!!ふざけんなよ!!!」
今日も些細なことで激昂した父に腕を掴まれる。
「、、、っ!、、」
─ジュウッ。腕にタバコを押し付けられる。
熱い、痛い、痛い、、
所謂根性焼きは私の体の至る所にあった。
腕、足、背中、お腹。
もう何年も繰り返されてきた行為だが、それでも腕は熱と痛みを主張してくる。
「は、ぁ、、、、」
ジクジクと腕が痛む。
声を押し殺すことにはもう慣れた。私が痛みに悶える表情を見て、この男は満足するのだ。
いつもだったらここで終わるはずだった。
でも、今日は違った。
「お前、今日で18だろ」
ふいに、父が話しかけてきた。
3月9日。
私の誕生日をこの男がまだ覚えていたことに驚いたが、それ以上に気味の悪さを感じた。
こいつは私の誕生日を祝うような人間では決してない。
頭の中で警鐘がなる。
この先を聞きたくない。
「これでやっと法的にも大人ってわけだ。
あ〜〜、長かった。
ガキのお守りも今日で終わりだ。
お前には明日から風俗で働いてもらうから。もう業者とも話がついてんだ。」
ヒュッと喉がなり目の前が暗くなる。
今、なんて言った?
風俗??、私、売られるの?
「何のためにここまで育てたと思ってる?
貧相な体はともかく、顔は悪くねぇんだ。
お前はこれから体を売って、俺の為に金を稼いで来い。そのための道具だよ。」
愕然と目を見開く私を見て、男はせせら笑うように言った。
「ただ、、、」
─ガシッ
いきなり腕を掴まれる。
「どのみち客を取る前に、初物は店の男に食われちまうんだ、先にどんな具合か確かめておかねぇとな」
ニタニタしながら男が迫ってくる。
売られる、??
でもその前にこの男に汚される、、?
混乱する頭で理解が追いつかない中、これだけは確かに思った。
─無理。この男になんて絶対に嫌!
手を振りほどこうと必死に抵抗をする。
全身で暴れ、その勢いのまま思いっきり脛を蹴りあげる。
初めてと言ってもいいほどの反撃だった。
「ってぇ!!、あ"??、
お前ふざけんな、よっ!!!」
──ガンッ
拳で頬を殴られる。
頭がグワンとして視界が歪む。
目の前がチカチカして、立っていられず床に崩れ落ちる。
「道具が抵抗してんじゃねえよ!!」
──ガンッ!ガンッ!
「、、っう!、う、、」
頭に血が登った男は馬乗りになって何度も私を殴打した。
声にならない呻き声が漏れる。
「やっと大人しくなったか」
力の抜けた私を見て、男は荒い息をしながら言う。
「また暴れたら分かってんだろうな」
そう言いながら、男は私の体をまさぐり始めた。
制服の上から胸を揉み、尻や太ももを撫でられる。
全身を這っていく手の感触が気持ち悪い。
次第にエスカレートしていって、制服の裾やスカートの裾から手を入れて大胆に触り始めた。
「ガリガリすぎて色気もクソもねぇな」
男が鼻で笑う。
だが興奮しているのか、目が欲にまみれてギラギラ光り息も荒い。
ああ、私はここで汚されてしまうのか。
こんな奴に。最低な男に。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
絶望した視界の端に、ローテーブルが見えた。
その上にはガラスの灰皿。
手を伸ばせば届きそうな距離。
霞む視界で男に気付かれないよう、ゆっくりと手をのばす。
指先が灰皿に触れた。
微かな力でもしっかりと灰皿の端を握る。
やるしかない。
もうこのチャンスを逃したら、私は一生このままこいつの言いなりだ。
心臓がバクバクと音を立てる。
男は私の太ももに顔を寄せている。
気付かれていない。
今だ!!!
大きく振りかぶり、渾身の力で男の後頭部目掛けて灰皿を叩きつけた。
──ガッッッ!!
「っっっが!ぁっ!!、、、」
男が怯み、拘束が緩む。
すぐに男の体の下から這い出て、玄関目掛けて一目散に走る。
「おいっ!!、待て!テメェッ!!!」
背後から、これまで聞いたことがないほどの男の怒声が聞こえた。
捕まったら今度はもう殺されるかもしれない。
そう感じて、靴も履かずに玄関を飛び出してがむしゃらに走る。
どうしようどうしよう。
やってしまった。
でももう後戻りはできない。
逃げなくちゃ。逃げ切らなくちゃ。
でも
どこへ?




