4話
どうしよう。また、食料が少なくなってきた。
——困ったなあ。
「そ、その……ぉ、優くん……!」
「どうしたの? 春さん」
春は息を整えながら、少し目を逸らして言った。
「えっとね、さっき……4人が隠してた部屋があって……そこで、たくさんの食料を見つけたの」
「本当に!? そんな場所があったなんて……!」
「うん。たぶん、かなり前から溜め込んでたんだと思う」
⸻
「って……ここは、たしか……」
優が部屋の扉の前で立ち止まる。
そう、確かここは——“引きこもりの粉さん”がいたはずの部屋だ。
いつもドアは閉まっていて、中に入れてもらったことは一度もなかった。
「実はね、粉さんって……最初からいなかったんだ」
「えっ……?」
「うん、たぶん名前だけ。みんなを油断させて、備蓄するために嘘をついてたんだと思う」
「……そうだったのか」
そのとき、甲高い“ピーッ”という音が鳴り響いた。
警報だ。
「あ、警報だね。ちょっと見てくるね」
「ありがとう。でも、無茶はしないでよ」
「……うん」
⸻
数分後。
「……うん、大丈夫。問題はないね」
春が、廊下の先にある物置部屋の扉をゆっくりと開ける。
「……っ!!」「……っ!!」
その声なき悲鳴を上げるのは、吊るされたまま縛られている冬と秋だった。
痩せ細り、目の焦点が合わないまま、彼女たちは天井からぶら下がっている。
彼女たちは「警報装置」だった。
ゾンビが近づくと、センサーが反応し、吊るされた体が僅かに揺れ、
皮膚に埋め込まれたチップが警報を鳴らす。
完全な“人間カメラ”として、春によって作られた“装置”。
「……うん。今日も平和だね」
春は微笑み、優のもとへと静かに戻っていった。
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