第3話 刃
鬼の咆哮と討伐隊の叫びが戦場に響き渡る。討伐隊の仲間たちは傷つき、立ち上がれない者も多い。そんな中、炎を纏った烈丸だけが次々と鬼を倒していく。
烈丸「ハァ……ハァ……」
烈丸は自分の身体を見つめる。身体を覆う炎とそれよりも濃く右腕に纏わりつく紅蓮の炎は、まるで意志を持っているかのように揺らめいていた。
『力の使い方は教えてやるよ』
鬼の声が頭の中に響く。烈丸は眉をひそめた。
烈丸「勝手に喋るな……!」
『フン、じゃあ死ぬか? いいか、お前が体に纏ってるのは火の鬼の“力”だ。人間が使うただの火じゃねぇ、火の鬼特有の魂を燃やして強くなる鬼の力だ』
烈丸「魂を燃やす……?」
『お前の闘志が炎の強さを決めるってことだ。ヘタに迷えば炎は弱まり、戦う覚悟があればどこまでも燃え上がる。鬼と対等に戦えるのは鬼だけだ。』
烈丸は拳を握りしめる。
烈丸「なら、迷うことはねぇ」
彼は前に踏み出し、鬼へと突進した。
ゴォォォッ!!
炎を纏った烈丸の拳が、鬼の体へと突き刺さる。爆発したかのような衝撃が起こり、鬼の身体が飛ぶ。
黒鬼「グアァァァッ!!」
鬼は地面を転がりながら、苦しそうに呻く。炎はまだ消えない――鬼の身体にまとわりつき、じわじわと焼き尽くしていく。
烈丸「これが……俺の力か?……」
烈丸は燃え盛る拳を見つめながら、思わず息を呑んだ。
だが――
黒鬼「火の鬼……!」
鬼はなおも立ち上がろうとしていた。致命傷ではなかったのだ。
『トドメを刺せ! さもなきゃ、お前がやられるぞ!』
朱鬼が叫ぶ。しかし、烈丸は一瞬ためらった。
烈丸「……どうすれば……どうすれば倒せる?」
『バカが! ためらってる暇はねぇ!』
その刹那、鬼が雄叫びを上げながら突進してきた。
黒鬼「死ねえええええッ!!」
鋭い爪が烈丸の腰元を狙う。回避が間に合わない――!
烈丸「クソッ……!!」
ガキィィン!!
烈丸の目の前で火花が散った。
黒鬼「……っ!?」
烈丸は咄嗟に腰の刀を抜いて鬼の爪を防いでいた。
更に炎が刀を包んでいる。
『迷うならお前の刀で戦え、俺の炎を貸してやる』
不敵な声が響く。烈丸は手にした焔の刀をしっかりと握った。
烈丸「――終わらせる」
炎の刃が、鬼を断つ。
ズバァッ!!
鮮血が飛び散り、鬼は絶叫を上げながら崩れ落ちた。
戦場に静寂が訪れる。
息のある討伐隊の仲間たちは、息を呑みながら烈丸の姿を見つめていた。
炎を纏った鬼の戦士が、戦いの幕を下ろしたのだった。