第2話 炎
ズォォォォォ……!
烈丸の身体を炎が包んだ。だが、その熱さは苦しみではなかった。むしろ、血の奥底から湧き上がる力のように感じた。
「おいおい、意識を手放すなよ」
頭の中に再び響く声――烈丸は歯を食いしばりながら、立ち上がった。
「ククク……どうやら、俺の力をうまく受け入れたようだな」
炎の中から、烈丸の姿が変わっていく。肌には赤黒い紋様が浮かび上がり、瞳は妖しく輝いた。右腕にはより燃え盛る炎が纏わりつき、その熱気で周囲の空気が歪む。
目の前の鬼が、不快そうに顔を歪めた。
黒鬼「……貴様、火の鬼……?」
烈丸は自らの腕を見つめ、拳を軽く握った。力が湧き上がる――今までの自分では到底持ち得なかった圧倒的な力が。
烈丸「試してみるか」
地を蹴る。
ドンッ!!
炎を纏った拳が、鬼の顔面を撃ち抜いた。
黒鬼「グアァァァ!!?」
鬼が悲鳴を上げ、後方へ吹き飛ばされる。烈丸自身もその威力に驚いた。だが、違和感はなかった――むしろ、これが自分にとって当たり前の力であるかのように、自然に馴染んでいた。
討伐隊の戦士「烈丸……!? お前、その姿は…鬼…?」
倒れていた仲間の一人が、驚愕の表情で烈丸を見つめていた。
人間が素手で鬼を戦うという概念はない
〜生身で鬼と対等に戦える〜
すなわち人間ではない、と見なされた気づく烈丸
だが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
鬼が再び立ち上がり、憤怒の表情でこちらを睨みつける。
黒鬼「なぜ火の鬼が人間を助ける……許さんぞ、それに……」
烈丸「うるせぇ」
烈丸は不敵に笑うと、黒鬼が何かを話している中、再び炎を纏いながら前に踏み込んだ。
烈丸「なら、力を示してやる」
炎を纏った鬼の戦士が、反撃を開始する――。