第1話 契約
「力がほしいか?なら俺と契約しろ」
燃え盛る炎の中、赤黒い影が揺らめいていた。赤く炎を纏う鬼。烈丸の前に立ちはだかり、嘲るような笑みを浮かべていた。
烈丸の身体は地面に倒れ込んでいた。全身が痛みに軋み、血が土を濡らしている。彼の周囲には討伐隊の仲間たちが倒れ、動かなくなっていた。目の前には、漆黒の鬼がそびえ立つ。その怪物と戦った討伐隊は、全滅寸前だった。
「このまま死ぬか、それとも――力を得るか」
鬼の目が妖しく光る。烈丸は唇を噛みしめた。生き残るためには、この鬼の力を借りるしかないのか。
烈丸「……どんな力をくれる?」
「簡単なことだ、お前に俺の炎をくれてやる。その代わり――俺を鬼の王にしろ」
烈丸は鼻で笑った。
烈丸「王になりたい?……だが、どんな鬼が王になろうと、その鬼も倒してやる。俺は鬼を許さない。家族の…」
朱鬼は驚いたように目を見開いた後、不敵に笑った。
「面白い……いいだろう。その生意気さ、気に入ったぜ!」
そして、紅蓮の炎が烈丸を包み込んだ。
遠い昔
「鬼」と呼ばれる異形の存在が人間を襲い、国を滅ぼした。その鬼たちはそれぞれ黒、赤、青、黄、緑の見た目をしており、各色の鬼達は国を作り圧倒的な力で人間を支配し、人間はただ蹂躙されるのみだった。
しかし、人間はただ滅ぼされることを受け入れていない。武器を持ち、技を磨き、鬼と戦っている。
そして今なお人間たちは各地で鬼と戦い続けている。
烈丸は「白蓮国」の討伐隊の一員。
討伐隊になるための長い鍛錬を終え、初めての戦場に立った。
「――敵襲だ!!」
鋭い声が戦場に響き渡る。烈丸は刀を抜き、前を見据えた。そこには、鬼が黒い牙をむき出しにして襲いかかってきている。
烈丸「初めての戦いがあの1番タチの悪い黒鬼かよ…ついてない…」
討伐隊の戦士「散開しろ!囲んで叩く!」
烈丸の号令と共に討伐隊の戦士たちが動く。十数名の隊士たちが鬼の周囲を囲み、一斉に斬撃を浴びせる。しかし――
黒鬼「無駄だ、人間ども!」
鬼が咆哮し、強烈な腕を振るう。烈丸の仲間が数人、一瞬で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
烈丸「クソッ!」
烈丸はすかさず飛び込み、鬼の隙を突いて刀を振るう。しかし、鬼の硬い皮膚に刃は浅くしか入らない。
烈丸「ちっ……やはり、このままじゃ……!」
その時だった。
烈丸の背後で、別の鬼が討伐隊の仲間に襲いかかった。悲鳴が響く。仲間がやられる――烈丸は咄嗟に振り向いた。
だが、鬼の鋭い爪が烈丸の視界を覆った。
ズバァッ!
烈丸の身体が鬼の爪で斬られ、地面に倒れる。視界が揺れる。刀よりも鋭い斬撃により激しい痛みが全身を襲う。
烈丸(……クソ、やっぱり人間じゃ……こいつらに勝てないのか……?)
ふと、頭の中に声が響く。
『力がほしいか?』
その声は、まるで自分の魂の奥深くから語りかけてくるようだった。
烈丸は、血を吐きながらも笑った。
烈丸「――ああ、ほしいさ……!」
その瞬間、烈丸の身体を炎が包み込んだ。
鬼の戦士が、誕生する瞬間だった。