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死に戻り令嬢は皇太子と婚約破棄して辺境王の許嫁になり国を救いましたが愛しているのは一緒に処刑された男です  作者: 赤林檎


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14.尋問の流儀(後編)

 コリーナは女主人としてなんでも命令できるなら、『余計なことをしていないで、ディートマーがどこでどうしているのか、さっさと吐け!』と命じたかった。『尋問の流儀を知る―雑談から拷問まで―』を読んだばかりのコリーナは、拷問官の言葉遣いも習得しつつあった。


 コリーナはだんだん、ウルバンよりフォルカーに家族について訊ねる方が早いのではないかと思い始めていた。

 フォルカーはフォルカーで、コリーナは個人的に話したことなどない。そんな状態から、家族のことを問うところまで話を持っていくのも、それはそれで難しそうだが……。


「辺境王殿下は男爵の位を買ったと聞いたわ。お金持ちなら、家に半獣半人の奴隷が大勢いるのではなくて?」

 家族でなくても、大切に思っている相手がいることくらいあるだろう。少なくともコリーナが前世で出会ったウルバンは、そのような相手がいるとは言っていなかったが。

「だいたい、わたくし、辺境王殿下のご家族のことも知らないのよ。辺境王殿下のご家族はどうされているの?」

「まずはお金ですか……。お金はそんなにお持ちではないかと……」

 ウルバンはどこか怯んだように、手を引っ込めた。


「裕福な暮らしはされていないのね」

「はい……。ザーランド伯爵のお屋敷のような、立派なところにお住まいではありません」

「意外だわ。男爵の位を買うような方は、裕福なことだけが取り柄だと聞いていたのだけれど……」

 コリーナの両親がそう言っていたのだ。

「お住まいはどんなところなの? 平民のお屋敷なのかしら?」

 平民は『お屋敷』などという立派なものに住まないということを、コリーナは知らなかった。

「兵営の軍幹部宿舎で兵士たちと暮らしておられましたが、妃殿下が嫁いで来られましたら、住む場所をご用意されるでしょう」

 コリーナは軽く眉根を寄せた。

「辺境王殿下はその軍幹部宿舎というところを私物化していたということ?」

 コリーナが『軍の施設で暮らす男爵の位を買った男』から想像できるのは、兵士である半獣半人を奴隷としてこき使う横暴な姿だけだった。

「そのような方ではないので、ご安心ください」

「あなたの立場では、そのように答えるしかないわね」

 以前、ウルバン自身が言っていた言葉を返した。

「いえ、本当に、私物化などはしていないかと……。ただ、まあ、普通の人間の軍幹部の方は、街の方にお屋敷を構えておられて、前線にある兵営でお見かけすることはほぼないですね」

「辺境王殿下のご家族は?」

「ご家族……」

「そうよ、ご家族」

「辺境軍の兵士たちが、家族のようなものですね」


 コリーナは納得した。兵営という軍の施設で家族のように共に暮らしてきたからこそ、ウルバンと辺境軍の兵士たちは、アロイスが処刑され、死後に晒し者にされたことに怒って、この国を滅ぼすところまでいったのだ。


「辺境王殿下は親兄弟はおられないということ? ご親戚は?」

「どなたもおられません」

「いない? なぜなの?」

「いずれ辺境王殿下ご自身からお聞きください。俺には申し上げられません」

 ウルバンがひざまずいた。

「ええ、そうね……。そうするわ」

 コリーナはウルバンを下がらせるタイミングだと思った。これ以上問い詰めることは、今後の関係を考えると避けておいた方が良いだろう。


 まだ肝心なところはなにも聞けていない。

 コリーナが問うたのに、ウルバンは答えなかったことがある。

 フォルカーとディートマーの二人が、ウルバンの血の繋がらない兄たちであること。

 ウルバンたちがホーラン家の奴隷なのか否か。

 辺境王アロイスとは、結局どのような人物なのか。

(なにかあるのだわ)

 答えないということもまた、一つの答えだ。


「もう下がっていいわ。火も消えたのだし、もう大丈夫よ」

 コリーナは寝台の上で身を起こした。

「それでは、これで失礼いたします」

 ウルバンは寝台にほど近いところに置かれた鉄製の衣装箱に近づき、上に置かれたランプの灯を消した。

 幕舎の内に、薄い闇が落ちた。

 ウルバンは迷いのない足取りで、幕舎の出入り口へと向かう。

 あと数歩も行けば、ウルバンは幕舎を出るだろうというタイミングで、コリーナは声をかけた。


「あなたは辺境王殿下の愛人なの?」


 ウルバンは足を止め、ゆっくりとコリーナに向き直った。

「味方を相手に、あまり卑怯な真似をしてくださいますな」

 闇に響く声は、低く冷たかった。

「淑女としての矜持をお忘れなきよう」

 ウルバンはコリーナの返事を待たず、幕舎を出て行った。


『相手が会談は終わったと油断したタイミング、例えば退室する間際などに、本当に知りたいことを質問してみる』

 コリーナが使ったのは、そんな古典的ともいえる尋問方法だった。


 コリーナが淑女であることを捨てていなかったら、辺境王アロイスはホーラン男爵のまま処刑されていた。

 それはウルバンも知っているはずだ。

(あのウルバン将軍が……動揺したわ……)

 コリーナは『ウルバンは辺境王アロイスと男色の関係にある可能性が高い』と判断した。

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