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序
わたくしはこの国の皇后となるべく育てられた。
皇后とはこの国の聖女。
ならば、わたくしはこの国が道を誤らぬよう導きましょう。
わたくしのすべてを賭けて。
なにかが奇跡を起こしてくれたのよ。
神か、妖精か精霊のご加護か、祈りの力か、わからないけれど……。
あの日、あの時をやり直すチャンスを授けていただいたの。
前世……、わたくしは一度死んだのだから、あれは前世の出来事よね……。
前世でのわたくしは、この国のために命をかけて戦ってきた方が、理不尽な理由で処刑されたということすら、まったくわかっていなかった。
あの男の死、それこそが、破滅への道だったというのに……。
わたくしは前世とは別の道を歩むわ。
たとえその道が、愛する方とは結ばれぬ道であっても――。