老害VSニートVSダークガイ
「先にゴールしなきゃ人生のゴールだ!準備はいいか!?レディ!?」
パーンとスタートのピストルが鳴らされた。
76歳の細身の老人と31歳の小太りのニートの100メートル走。
スタジアムに集まった18000人全員がニートの勝利を予想していた。
20☓☓年。老人とニートは政治への不満を溜め込んだ国民の娯楽の道具となった。
この勝負に負けたら老人は『国指定有害金食い老虫』として。
ニートは『国指定税金未納無料飯食い虫』として『駆除』される。
観客はみな駆除の瞬間が見たくて仕方がない。
ハンデとして老人はドーピングや道具を使わない反則が許されているが、走り出したらそんなルールは意味がないと観客もニートも思っていた。
「おっ!?」
老人は走り出そうとしたニートの短パンを長く細い腕で掴んだ。
ニートは尻を半分出しながら転び、顔面から落ちた。
東日本大震災もコロナ禍も生き抜いた老人ならではの狡猾な頭脳プレー。
運動経験も労働経験もないニートは鼻血を出しながら泣いていた。
それを老人が走り出さずじっと見ている。
「ドーピングが効いてきたぞ」
老人はパンツごと短パンをぬいだ。
「いやいやいやいや!あんた何脱いでんだよ!ってかなんでそんなに……」
老人がドーピングに選んだのは超強力なED治療薬だった。
「若者よ。お前は生きろ。お前は美しい」
…
老人は目を閉じて座禅を組んでいる。
若者は顔面と肛門の痛みと屈辱に耐えながら内股でゴールテープを切った。
「やったあぁぁぁ!」
ピストルを持った男がニートを撃ち殺した。
「観客は大満足だ。ネットのPPVもバカ売れらしい。虫どもにしては上出来だ」
精を出し尽くした老人は座禅を組んだ状態でゴールしていたのだ。