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原罪  作者: 消しゴム
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6.終わりの始まり

 彼女は館のバルコニーに立ち、館から遠ざかっていく青年の後姿をじっと見詰めていた。青年の姿は秒を重ねるごとに小さくなり、周囲の風景の中へと溶け込んでいく。

 彼女は深呼吸するように深くて長いため息をひとつ吐いた。

 髪を留めている紐をシュルリと解き、髪の合間に指を差し入れると結った髪を手櫛で一気に解き放つ。首を軽く左右に振れば、からまった髪ははらりと解け、彼女の背後で綺麗に垂れた。

 彼女は再び青年が消えゆこうとしている風景へと視線を戻した。

 そして、重い口調で、嘆くように、呻くように、呆れたように、言葉を零す。

「尽きることの無い欲望よ、それこそが人の原罪なのでしょうか」

 彼女は天を仰ぐ。

「これより先、数多の大罪が犯され、数多の神罰がその身に下されることでしょう。それでも、」

 彼女は目を細める。

 悲しそうな顔をして、彼方を見詰める。

「願わくば、その生き行く先に、幸が多くあらんことを……」

 そして彼女は、瞼さえも閉じた。



 彼女の背後でバサリッと大きな大きな翼が広げられた。

 一対の純白の翼。一切の穢れも無く、その白さたるや色というよりも光そのものだった。翼より放たれる眩い光を受けて周囲は明るく照らし出される。翼の外縁は七色に瞬き、めくるめくその色彩を変えていく。翼の至る所からは無数の光の粒子が零れ落ち、彼女と戯れるように宙を舞う。

 彼女はそんな翼を一度だけ大きく上から下へと羽ばたかせた。

 彼女の体がふわりと宙に浮き上がる。

 館のバルコニーを離れ、夜明けの青空へと浮き上がっていく。

 止まることなく、ただ一直線に、天の高みへと向かって昇り続ける。

 雲の合間を通り抜け、

 その姿は遠ざかり、小さくなり、

 空の青に覆われて霞み、青の中へと溶けて沈み、

 そして遂には、見えなくなる。



 どこからともなく霧が立ち込め、館は覆い隠されていく。

 すべてが白い霧の中へと呑み込まれていく。

 やがて風が吹き、木々がざわざわと音を立て、風によって立ち込めた霧が掻き消された時には、もう館は跡形も無く消え去っていた。

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