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第3話 ギルドにて

ラミルと一緒にギルドのドアを開けると、ガラの悪そうな人が何人も僕たちを睨みつけてきた。


「ひいい。悠馬さん」

「大丈夫ですよ。なにがあっても僕が守りますから」


そう言って進むと、アルビアさんがとんでもないことを言い出した。


「ずいぶんと気持ち悪い場所ね。匂いもきついし」


その言葉に空気が凍ったような感覚を味わったのは僕だけではないだろう。明らかに周りの見る目も変わっており、ラミルはガクガクと震えている。


「ちょっと。アルビアさん! なんてこと言うんですか!」

「事実じゃない。酒の匂いも酷いしモワモワと漂う体臭らしき匂いも酷い。まるでゴミ箱に突っ込まれた気分だわ」


たしかにそんな匂いがするのは否定しない。けどこんなバカ正直に言ったら。


「おうおう! 言ってくれんじゃねえか姉ちゃん!」


ヤクザみたいな格好の大男がこっちに近づいてきた。まずい。僕が守らないと。


「あんた、王国の第3王女だよな? 王女だからって調子に乗ってるみたいだが、殴られないと思ったら大間違いだぞ!」

「危ない!」


彼が殴りかかってくるのを止めようとすると、アルビアはその攻撃を飛んで躱し、顔を蹴り飛ばした。


「ごふっ!?」


蹴られた男は大きく吹っ飛び、壁に叩きつけられて気絶した。


「生憎だけど、幼い頃から私はいろんな訓練を叩き込まれてるの。王女たるもの、それなりに強くないと務まらないからね」


凄い。何の武器も持ってないはずなのに、あの身体能力。神器がない僕だったら、簡単にボコボコにされていただろう。彼女がここまで強いとは思わなかった。

王族だからって驕ることをせず、心身ともに徹底的に鍛え上げる。そんな大変なことをやり遂げた故に、彼女はあの強さを手に入れたんだ。


「凄いです! まさか第3王女様がここまで強いなんて」

「ふふ。王族たるもの、常に何があっても対処できるようにと言われてるからね。これぐらいのことはどうとでもなるのよ」


僕たちが彼女に見惚れていると、どこからか、パチパチと拍手の音が聞こえたきた。


「なんとも逞しい王女もいたものですねえ。びっくりしちゃいましたよお」


なんだか間延びする話し方をする女性が僕たちの前に現れた。僕の世界のテレビで見た魔女のような服装ととんがり帽子。スタイルは抜群で体が引き締まっており、出るところは出ている美しい体だ。猫のようにつぶらな瞳は海のように青く、髪の毛は綺麗な銀髪でサラリとしたロングヘアーである。

「あなたは?」

「私ですか? 私はこのギルドマスターのリリアと申しますう。よろしくお願いしますねえ」

「な!? リリアってまさか……未来視のリリアですか!?」

「あらあ。私のこと知ってるんですねえ」

「ラミル。彼女のこと知ってるんですか?」

「知ってるも何も、彼女は王国軍グレイス支部のリーダーにして、王国の危機を何度も救った英雄ですよ! その目は未来を見通し、あらゆる困難を観測し、最高の未来に導く力があると言われています」


そんなに凄い人なのか。見た目はのんびり系の美女という感じなのに。人は見かけによらないんだな。

「あなたたちですねえ。新しく入る人たちというのはあ。ふむふむ」


彼女は興味深そうに僕たちをジロジロと見てくる。なんだかむず痒くなってくるな。


「なあるほどお。大体分かりました」

「え!? 見ただけで分かるんですか?」

「ええ。あなた達が十分な戦力になるということがあ。特に異世界の人……雨宮さんでしたっけえ? あなたはこの支部……いえ、王国軍の中でもトップクラスの実力者ですねえ。あなたほどの実力者は数回しか見たことありませんよお」


おそらく、精霊タイプの神器を宿してるからだろう。にしても、僕ってそんなに強いのか。ちょっと嬉しいな。


「あなたたちは文句なしの合格で〜す。アルビアさんはどうしますう? 私達の支部にいますかあ?」

「もちろん! 私は悠馬と一緒にいるって決めたからね」

「分かりましたあ。それでは、至急部屋を用意しますねえ」


こうしてなんの苦難もなく、僕たちは簡単に王国軍グレイス支部に入ることが出来てしまった。こんなにイージーモードで良いんだろうか。少し不安になってくる。




支部での色々な手続きを終え、ラミルとアルビアさんの3人でご飯を食べた後、僕は用意された部屋でくつろいでいた。

ラミルたちも僕の部屋で寝ようとしたけど、流石に僕の精神が色んな意味で持たなくなるので却下した。


「ふう。色々あったけど、なんとかなりそうだな」

「お疲れ様。主殿」


そう言いながら、カルラが現れて僕の隣に座る。


「カルラ。色々とありがとう。君のおかげで、何とかやっていけそうだよ」

「主殿のために尽くすのは当たり前のこと。礼なんて必要ないよ。それより、主殿はこれからどうしたいの?」

「僕は、元の世界に帰りたい。親が心配してるだろうし、元の世界で平和に過ごしたい。この世界も嫌ってわけじゃないけど、あっちには沢山の大切な物を置いてきてるから。それに、アルビアさんのこともある」

「アルビアさんの? 彼女がどうかしたの?」

「彼女って多分だけど、王様とかに黙って家出してるでしょ」

「だろうねえ。あ、それを咎めて家に帰そうとか?」

「そんな酷いことしないよ。彼女には彼女の事情があるだろうし、すべての家族が仲良くやっていけないということはわかってる。彼女は家出してるし、居場所が無いんじゃないかと思って」

「まあないだろうね。帰ったら監禁はほぼ確定。下手したら死刑になるかも」

「そんなことは絶対にさせない。だから、僕と一緒に元の世界に行って、居場所を作ってあげたいと思うんだ。それが今の僕の目標」

「ははははは。ずいぶん欲張りだね。けど良いよ。気に入った! 主殿のため、粉骨砕身で働くよー!」

「そこまでしなくていいけど、よろしくね。カルラ」

「うん。よろしく。主殿」


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