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第2話 王国軍グレイス支部へ

 僕たちはグレイスシティに向かって歩いていた。本当は馬車で移動してたけど、僕たちがアルビアを助けに行ってる間にどこかに行ってしまったらしい。何も言わずに飛び出したから無理もないけどね。


「アルビア。体は大丈夫? しんどかったらすぐに言ってね」

「大丈夫よ。悠馬は優しいわね。私のことを気にかけながら歩いてくれて。他の奴らはそんなことしたことなかったのに」

「人として当たり前のことをしてるだけだよ。僕は優しくなんかない」

「いいえ。そういう当たり前のことを出来る人ってのは素晴らしいものよ。当たり前のことをきちんとこなす。これができてる人間はそういないからね。悠馬は本当に素晴らしい人間だと思うわ!」

「あはは……そこまで褒められたのは初めてだな」


 今まで褒められることなんて1度もなかったから、ここまで手放しで褒められるとなんだか照れくさいものがある。


「さぁ! グレイスシティまでもう少しだから頑張りましょう!」


「そうだね。早く行こう」


 そして僕らは再び歩き出した。






「ふぅ……やっと着いたね」


 あれから2時間ほど歩くと大きな壁に囲まれた街が見えてきた。ここが目的の街であるグレイスシティだろう。入り口には門番らしき人が二人立っていた。


「身分証をお願いします」


 門に近づくと門番の一人に声をかけられた。どうやら入るときに必要らしい。身分証なんて持ってないしどうしよう。そう思っていると。


「これで大丈夫かしら?」


 アルビアは何やら豪華な彩りのカードを取り出した。そこにはなんらかの紋様が金色で描かれており、小さい宝石もついている。


「アルビア王女でしたか!? これは申し訳ありません。ですが、隣の男は?」

「彼は私の従者です。通してくれますね?」

「もちろんでございます!」


 門番たちはさっきとは態度を変え、へりくだるようにして門を開けてくれた。


「凄いねアルビア。門番たちがあんなに下手に出るとは」

「第3王女の身分って便利に使えるのよ。色んなことが素通りできちゃうし、カードを見せるだけで大体は解決するから」


 凄い。まるで僕の世界にいるお金持ちとか政治家みたいだ。とんでもない人と一緒にいるんだなあと、改めて思い知らされる。


「さて。ここがグレイスシティね。私達が向かうのは、あそこにある王国軍グレイス支部よ」


 彼女が指さしたのは、お城のような見た目の要塞だった。まるでアニメに出てくる軍事要塞のようで、怖い雰囲気が漂ってる。町中の方は至って普通で、特におかしい人がいたり、治安が悪いといったことはない。

 来て数分も経ってはいないが、僕にはここがそこまで悪い町には見えなかった。


「アルビアさん。ここって危ない場所なんですか? 王国の人たちが毛嫌いしてたけど、そこまで危ない町に思えないです」

「グレイスシティは問題ないわ。シティは、ね。問題はここにある王国軍の支部。まあ口で説明するよりも、実際に見た方が速いと思うわ。ついてきなさい」


 彼女に言われてついていき、僕たちは支部を目指した。



 しばらく歩き、目の前に支部の建物が見えてくると、近くから声が聞こえた。


「止めて下さい! 離れてくださいよ!」

「良いじゃねえか。俺たちと遊ぼうぜ」

「そうそう。王国軍の精鋭様と遊べる機会なんてレアだぜ~?」


 嫌な予感がして声のした方を見ると、裏路地の方で1人の女性が2人の男に囲まれていた。男の方は軍服のような格好に身を包んでおり、女性の方は水色の髪に宝石のように綺麗な金色の目、小さくて可愛らしい鼻、つやのある唇と綺麗な人だった。白のポロシャツにジーンズのようなパンツとラフな格好で、スタイルが凄く良い。周りの人たちは彼女が迷惑してるのに気づいてるはずなのに、見て見ぬ振りだ。


「なんですかあれ。こんなところでナンパするなんて。王国軍の人が来たらしょっぴかれそうですけど」

「残念だけど、ナンパしてる奴がその王国軍様よ」

「は!? どういうことですかそれ!」

「ここの支部の人間は大半の奴が人間性に問題抱えてる奴らでね。万引きとか食い逃げとかああいうナンパとかの9割は奴らがやってることよ。市民が声をあげようとしても、奴らはそれを握りつぶしてなかったことにする。最低の奴らよ」


 なんて奴らだ。国を守るべき王国軍の人間がそんなことするなんて。こんなのを見て見ぬ振りなんて出来ない。


「悠馬さん。どこへ?」

「あいつらを止めてきます」

「え……ちょっと!」


 僕は止めようとする彼女を振り払って彼らの元へ行く。


「そこの男たち。そういうのやめた方が良いですよ」


 そう言うと、男たちは機嫌が悪そうにこっちを見て来た。


「あ? ずいぶん舐めたこと言ってくれるじゃねえか」

「は! ひょろっちいう奴だな。お前みたいなだせえ正義感持ちは、病院がお似合いだぜ!」


 そう言うと、奴は剣を抜き、こっちに斬りかかってきた。まずい、この状況だとカルラを呼んでる暇がない。やられる。そう思ったが。


 ガキンッ!


「……は?」


 斬りかかってきた剣は僕に当たった瞬間、鉄同士がぶつかったような音が響いて剣が折れてしまった。


「な!? 悠馬って、こんなにも頑丈だったの!?」

「え……これって」

『あ、言い忘れてたけど、今の主殿は私の加護で身体能力が10倍以上に上がってるよ』


 とんでもないことをカルラから聞いてしまったけど、多分10倍以上に上がってると思う。だって剣が人間の体を斬れずに折れるなんて聞いたことないし。


「な……ど、どどどどどういうことなんだよおお!? なんでこの剣が折れたんだあ!」

「嘘だろ。この剣を折るなんて。この化け物がああ!」


 もう1人の男が殴りかかってきたが、その速度はあまりにも遅く、スローモーションでも見ているようだった。これも身体能力が上がってる影響か。だとしても凄いな。僕はその拳を避けて腕を掴み、足を引っ掛けた。奴は1回転して首から受け身も取らずに落ちてしまった。少し観察したけど、男が起き上がる気配は無い。


「ひ、ひいいいいいい!? すいませんでしたああああ!」


 残った男は情けない声を出しながら気絶した男を抱えて僕たちが向かう支部へすっ飛んでいった。


「凄いわね。あいつら、支部でもそれなりの実力者のはずなのに、赤子の手をひねるみたいに」

「ふう。なんとかなって良かったです。大丈夫ですか?」

「はい! 本当にありがとうございます! あの人たちほんとしつこくて、あなたがいて助かりました」


 彼女はそう言って僕の手を握ってきた。よほど怖かったんだろう。


「もう大丈夫だから。気を付けて帰ってね。またあんな奴らに絡まれたら、僕が必ず助けます!」

「ありがとうございます。そう言ってくれるととても嬉しいです。すいません、お礼をしたいんですが、時間が無くて」

「大丈夫だよ。そんなこと気にしなくて。僕はやるべきことをやっただけですから」

「ほんとに素晴らしい人ですね。ありがとうございます。それでは」


 そう言うと、彼女はそのままどこかに行く……のかと思いきや、支部の方に向かっていった。


「え? なんで支部の方に?」

「ああ。私、王国軍の兵士になるための試験を受けようと思ってまして」

「ええええ!? な、なんで……王国軍の兵士に」

「人々を守りたいというのもありますけど、それ以上にこの支部の兵士から、罪のない人を守りたいと思いまして。そのためにも、私は兵士になりたいんです!」


 素晴らしい心掛けだ。こんなにも優しい人が兵士になるとは。


「それでは、私はこれで」

「ま、待って! 僕もここの兵士になるつもりなんだ!」

「え、そうなんですか!? すっごく嬉しいです!」


 彼女は少しだけ顔を赤くしながら、嬉しそうに僕の手を握る。


「これからよろしくお願いします。えっと」

「僕は雨宮悠馬と言います」

「雨宮悠馬。異世界の人ですね。私はラミル・スノーウェイといいます。これからよろしくお願いします。悠馬さん」

「うん。よろしく!」


 そう言って、僕たちは握手した。そんな中。


「むう……悠馬って本当に女キラーね。恐ろしい人だわ」


 アルビアさんが妙なことを言ってきた。というか、僕に女を口説けるようなかっこよさは無いけど、なんで女キラーと呼ばれるんだろうか。それがよく分からない。

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